“あの日”が日常になった今。
およそ6年前の日曜日、私はある決意を胸に秘めながら美術館の中をうろついていた。考えを整理するために1人きりの静かな時間が欲しかった。
明日こそ、明日こそ退職願いを出そう。とっくに限界は超えていた。なんとか踏ん張り続けていたけれど、もうこれ以上耐えても意味が無いことは身に染みてわかっていた。新卒で入社した私に優しくしてくださった社長はすでに亡くなり、一から仕事を教えてくれた先輩や、心を許していた仲間たちも会社を去ってしまった。新社長に変わってから細部に目が行き届かなくなって、派