人間の意思決定に関わる脳の仕組み

背景

私は2019年9月からニューヨーク大学の心理学部の修士プログラムに進学を予定しています。また、6月下旬より、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のサマープログラム(https://groups.oist.jp/ocnc)に参加することもあり、脳科学、心理学、コンピューターサイエンス周りの論文を読んでいます。

その中で、近年、プログラミングやコンピューターサイエンス周りのブログや解説は多く存在するものの、それ以外の分野で、特に論文や理論寄りの内容を分かりやすくまとめてくれている情報がとても少ないことに気づきました。今まさにそこに苦しみながら論文と向き合っている訳ですが、今後同じような道を進まれる人たちにとって多少でも力になれるよう、これから読んだ論文や得た知識をこまめにまとめていこうと思います。今日はその第一回目として、人間の意思決定に関わる脳の仕組みについてまとめます。(学びながら書いていくため、何か間違いがありましたら、指摘頂けると助かります。)

脳は何でできているのか

まず、最も基本的な知識として、脳は基本的にはニューロンと呼ばれる神経細胞によって作られています。そのニューロンは、電気信号の送路にあたる軸索(axon)、ニューロンの入力である樹状突起(dendrite)、核が存在する細胞体(cell body)の大きく3つの部分から構成されています。また、ニューロン同士は直接は繋がっておらず、ニューロン間に存在する隙間はシナプスと呼ばれています。私たちの目では見えない世界なので、なかなかイメージが湧きにくいですよね。。

出典:http://www.gifu-nct.ac.jp/elec/deguchi/sotsuron/oguri/node4.html

脳が情報を処理する時に何が起きているのか

そんなニューロンが情報を他のニューロンに伝える時、出元のニューロンから神経伝達物質を分泌され、シナプスを埋めて信号を受ける側の樹状突起と結合してすることで、先のニューロンが情報を受け取ります。この情報伝達の仕組みはシナプス伝達と呼ばれますが、一方向のみに情報が伝わるという特徴を持っています。これがいくつものニューロンで同時に処理が流れていくことで、私たちは複雑な情報を処理することができています。

若干話が逸れますが、近年急速に技術発展が進んでいる強化学習は、脳と同じような仕組みで過去の経験から、現在とる行動の価値を予測し、意思決定を行います。そんな強化学習から得られるそれぞれの行動に対する重み(係数)は、シナプスの結合の強さを表現していると言われています。

脳のマクロ的な構造はどうなっているのか

ここまで脳を構成する最小単位であるニューロンをベースに脳について説明をしてきました。ここからは、少し視点を広げて脳の構造を見ていきたいと思います。

まず、脳は大きく大脳、小脳、脳幹の三つから構成されています。大脳は、人間の脳の中で最も発達している部分です。情報を識別してそれに応じた運動を命じたり、記憶や情動、認知という高度の精神作用とを担当しています。小脳は、運動調節機能を担当しており、大脳からの命令を受けて、運動の力の入れ具合やバランスを管理しています。最後に脳幹は、呼吸、循環など生命活動の基本的な営みを支配すると供に、知覚情報を大脳皮質に中継したり、末梢に向かう運動指令を中継する機能を担当しています。

出典:https://innercare-lab.com/blog/karada_13
参考:https://secure01.red.shared-server.net/www.toshi-office.com/jiko-13-01nounoshikumi.htm

意思決定の中枢を担う大脳基底核

さて、今回のブログのタイトルでもある人間の意思決定についてですが、人間の意思決定に最も深く関わっている部分はどこなのでしょうか。それは、上で人間の脳の中で最も発達をしていると書いた大脳の中にある大脳基底核と呼ばれる部分ではないかと現在は考えられています。
その考えは、人間の意思決定に神経伝達物質の一種であるドーパミンの分泌が深く関わっているという仮説に基づいており、ドーパミンが脳の中で最も分布している大脳基底核に意思決定機関があるのではないかと考えられています。ちなみに、ドーパミン自体は大脳基底核で作られている訳ではなく、腹側被蓋野(VTA)と呼ばれる部分で生成されます。そこで生成されたドーパミン細胞が大脳基底核の中の線条体と呼ばれる部分にケーブルを伸ばしており、この部分にドーパミンが最も多く存在する形になっています。

意思決定の重要因子ドーパミン

意思決定に深く関連していると言われているドーパミンですが、パーキンソン病やADHDの発症要因にも深く関わっていると言われています。パーキンソン病はドーパミン不足、ADHDはドーパミンをうまく脳が吸収できないことにより興奮状態が続くことから引き起こされているのではないかと考えられています。


まだまだ脳の機構は不確定な要素が多く、それぞれの分野で仮説検証が進んでいる段階ですが、私も早く全体感を理解し、最先端の研究に加わっていけるよう、しっかりと勉強をしていきたいと思います。

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