短編小説【○れ】
人気のない暗い夜道に酔った男が、道に落ちている黒くブヨっとした何かを見つけた。
「これはなんだ~?」
男は酔が深いせいかなんの躊躇なしに好奇心だけでそれをつまみ上げた。
おおよそ20センチほどだろうか、そのブヨブヨしたそれはあまりに柔らかく、少しの振動で大きく上下に揺れていた。
スライムとも違う。スライムよりかはもっと硬い。耳たぶよりも柔らかい。餅とも違う。引っ張っても弾力があってちぎれそうにない。
なんだろうゴム製品でもないし、匂いもなさそうだ。しかしよく見ると薄らと産毛のようなものがあるのが見えた。
なんだか予想をはるかに超えて得体の知れないものを拾い上げてしまった男は、この時からだんだん酔いが覚めてきた。
本当になんだこれは…。
何かの動物の皮なのだろうか。皮だとするとなんの皮で、なんで道端になんかに落ちていたのだろう。
人気のない車も通らない暗い道で一人、それをつまんでいるのが恐ろしくなり男はそれをなるべく遠くの車道に放った。
するとそれはビシャっと生々しい嫌な音を立てて落ちた。そしてプルプルとその場で動いた。
男はその様子を伺っていたが次の瞬間、男は目を疑った。確かにそれはズリズリと動いていたのだ。
さらにそれはぴょんぴょんと飛び跳ねるように動き、道路の向こうにあるマンホールの穴に吸い込まれていった。
男は唖然とそれを見送っていたが、ブルルっと震え上がり慌てて近くのコンビニに駆けて行き、血相を変えてトイレに入り手を洗った。
男は手を洗いながら思った。
「これは話しても誰も信じてくれないだろう。きっとちまたのUMAというものは一般的にこういうものなのだろう。」
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