そうであることは
これはいたって当たり前の話ではあるが、人間は空気を吸わない事には生きていけないのだ。
それと同時に生きているということは何かを得て生きるという事なのだ。
そうとは知らずに生きている人間がたくさんいる事を知ってか知らぬか彼女はまた何も知らないご様子で味噌汁をすすって文句を言ってきた。
「味が濃い」
いつもながら我儘ではあるのだけれど、彼女も何かを得ない事には生きていけないわけでそれを提供するものが地球上に必要なのである。
「眠い」
ほら、彼女はこの地球に合わせて夜は寝るサイクルが出来ている。地球上に生きるモノはえてして地球に合わせて生きなくてはならない。
合わせなかったとしても必ず無意識の中では合わせていて、それを知ってか知らぬか彼女は眠くなっているのだ。
「布団しいて」
彼女の暗号のような言葉は、快適な睡眠を求める証である。健康体である事の証明のようなものであって、快と不快を心得ている印である。
「早くして」
彼女の野生的本能を止める事はストレスになり、交感神経を働かせてしまうばかりか副交感神経から遠のき睡眠を阻害する恐れのある緊急事態だ。
「もう、いつもぐずなんだから」
そう言葉を吐き捨てる彼女。それと同時に僕の自由というものはいつも支配された中にいる事を感じるが、囚われた世界で生きる事が不幸せとも限らない。
なぜなら彼女の安らかな睡眠を得た時間が自分にとっての最高の自由に他ならないからだ。
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