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『きこえる』道尾秀介 書評#13

「先生、寄生って何なんですかね。…それでも生物っていえるのかな、みたいな。自分だけで生きていけないとか、哀しくないですか?」

今回は道尾秀介さんの短編集『きこえる』を紹介します。

あらすじ

短編小説を読むとともに音声を聞くことで物語が完成する、新しい形式の小説でした。ページに印刷された二次元コードを読み込むとYoutubeの動画が開かれて、その音声を聞くと物語にどんでん返しが起こります。
「聞こえる」
「にんげん玉」
「セミ」
「ハリガネムシ」
「死者の耳」
の5編が収録されていました。

この中で好きだった「ハリガネムシ」のあらすじを紹介します。
主人公は30歳の塾講師。講師といってもアルバイトで、実家から通勤しています。彼はお気に入りの生徒・高垣沙耶の部屋に盗聴器を仕込むことに成功します。沙耶は母親とその再婚相手の男とともに暮らしています。私生活はなかなかうまくいかず、塾ではいつも歪な笑みを浮かべているのです。沙耶の母親の最悪な再婚相手に下った結末とは…?

見どころ

5編ともに、読者には”小説と音声の内容を組み合わせて考察する”という作業が求められます。そこをうまく味わえるかどうかが、この作品を楽しむカギになりそうです。
特に1編に2つの二次元コードが含まれていると、小説と2つの音声の組み合わせが絶妙でした。
ただ、作品によっては難解で、私も1つだけはネットでネタバレを調べてしまいました…負けた感があります。

感じたこと

内容よりもまず気になってしまったのが「変わるかもしれない動画の二次元コードをよく印刷できたな、どうやってリンクを保持するんだろう、すごい」ということでした。
リンクを知っている人のみが動画を再生できる設定になっているようで、二次元コードをネットなどで公開しないようにとの注意書きがありました。
短編集はそれぞれ関わりがないため、興味のある順番で読み進めるのもよさそうです。
音声によってどんでん返しがあるため、結末を理解した後に再読したくなることうけおいです!

まとめ

今の時代だからこそできる斬新な挑戦をしているなと感じた作品でした。皆さんもぜひ新しい読書体験を楽しんでください!

※ヘッダーはkiraku(きらく)さんからお借りしました


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