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先週の今ごろは生きていたんだ-3

あたしが愛す猫
おじさんが急な病にかかり3日目


朝はまたいつも通りにやってくる


カーテンから差し込む光がやけに明るくて
嫌気がする


寝てるのか寝ていないのか
ただとても重たい身体を起こし


おじさんを見ると
変わらずジッとして
ただ呼吸をしていた


今日は違う病院に行こうとしていた


実家でも猫や犬がいて
その子達がみんなお世話になっている病院に行く

何度か付き添いで行ったことがあるのだが
気難しい性格の実家の猫たちは
何故か先生に触られると大人しくなる

とても丁寧で親切な先生を
母親はとても信頼していたので
少し遠いけど
何かいい方法があるかもしれない。と
その病院へ行くことを決めた


リビングがある1階に降りて
母親と電話をしていたら

ドスンドスンと階段を降りる音がする

もう1匹の猫かな?
おじさんがこの状況で降りれるはずがない

ジッと階段の方を見ていると

なんとおじさんが階段を降りて
リビングへ歩いてきた

いつもは一言
ニャァと鳴くのに

おじさんは何も言わず

あたしの側で丸くなる


驚きとともに
愛おしさがこみ上げる


やっぱりおじさんは
あたしのことが好きだ


あなたがあたしの隣にいることで
安心するように
あたしもおじさんが隣いれば
落ち着く


いつもなら当たり前の日常が
こんなにも嬉しく尊いものに思え
こういう時にしか感じられないなんて
残酷な生き物


車を走らせて病院へ行く
車内でいつも鳴きわめくおじさんはもう言葉を発しない

何も言わずに
ジッとしている


車内の中でも
色んな感情が込み上げてきて
あたしは1人
運転をしながら泣いてしまう

せめて病院にたどり着くまでには
この涙腺の蓋をギュッとしめて
淡々と診察に応じないといけないと
必死だった


なのにあたしのその蓋は
もう潜在意識に侵食されていて
涙腺は破壊されていた


病院について
「予約をしているものです」とやっとの事で伝え
震える手を押し殺しながら問診票を記入する

しばらくして名前を呼ばれる

何回か実家の猫たちを連れてきてたせいか
いつもの先生の顔が見えた瞬間
また泣いてしまった

まるで小さい頃に
友達の家に泊まりに行って
なんだか心細い夜を過ごし
家に帰った時の
母親の顔を見た時のような

そんな安心感を何故かこの時感じたのだった


他の病院では見ることができなかった
エコーに同行させてもらって
エコーを見ながら今の状況を説明してくれた

おじさんは小さく鳴いたが
嫌がるそぶりはなく
ジッと仰向けになってくれていた

この病院は
先生もそうだし
助士の方も
みんな頑丈な手袋をしない
素手で猫や犬を見てくれる

先生の手を見ると
傷だらけだった


検査が終わっておじさんは待合室にやってくる
大きな巨漢のおじさんが
看護師さんに抱っこされてやってくる

待合室にいた人が
みんなおじさんに注目している


だってそらぁ
あんだけ大っきいもんな


尿が出るように
利尿剤を注射したので

おしっこが出るかもしれないからと
ゲージにペットシーツを敷いてくれて
予備のシーツをもらった

なんだかその対応だけでも
小さな光があるようで安心する


検査結果は色んな検査をしたけど
やっぱり状況はよくないらしい


血液の数値も高いままで
クレアチニンの数値はさらに上がっているとのこと


そしてまた選択肢を強いられる

・入院するか

・通院するか

今回もすごく悩んだ

でも入院することにした


その理由は先生が言ったこの一言

「本当はもっと色んな注射を試したいんです」

この先生にかけてみようかと思った


おじさんを動物病院に預け
ありがたいことに仕事は休んでいいと言ってもらったので
家で少し休息をとった

夜にヨガの仕事があって
ギリギリまで悩んだけど
やっぱりやることにした

外の風や
世界が
なんだか新鮮に感じられる


生徒さんと
また全然違う話をして
自分自身も助けられた


夜はぐっすりと眠れた日だった


明日愛おしい
おじさんに会いに行こう