詩「麦酒月夜」
ぼろ雑巾を月光でねじり切るようなあなたの視線を感じて、そうでありながらこの白いダイニングに帰ってこよう。
ビールを飲むのだ
精神の弓を小指で引けばささやくように幕が上がる。幕の色は。
私は彼女とビールを飲むのだ
泡は一心に天動説を唱える。
間接照明の支柱を確かめる。
歓喜は白い布に包まれてやってくる。
下腹部の白い布はくしゃり となる。
私のものも 彼女のものも綿ではない。
二杯目の赤いビールを飲むのだ
黒猫と白猫が雨になる屋根の下で。
生ハムが舌を覆う口の中の空に。
薄紅の百合を確かめ合おう。
私達は互いを産み落としあえるから。
さあ 三杯目
白い布を剥ぐ。
白い布が出る。
白い布を剥ぐ。
白い布が出る。
白い布を剥ぐ。
白い布が出る。
ビールの泡は群波になって
気分に背骨を注ぎだす
白い布を剥げば白い布が出る。
白い布が出れば白い布を剥ぐ。
またとない夜は月並み
白い布 卵黄はつまみ
ビールを飲もう
ビールを飲みに帰ってこよう
また始まっていくよ。
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