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MNB連続詩集『どどめ色』

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毎日1〜2つずつ更新する詩集です。ジャンルあれこれです。よかったら読んでね。いや絶対読んでね。
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2023年3月の記事一覧

詩「麦酒月夜」

詩「麦酒月夜」

ぼろ雑巾を月光でねじり切るようなあなたの視線を感じて、そうでありながらこの白いダイニングに帰ってこよう。

ビールを飲むのだ

精神の弓を小指で引けばささやくように幕が上がる。幕の色は。

私は彼女とビールを飲むのだ

泡は一心に天動説を唱える。
間接照明の支柱を確かめる。
歓喜は白い布に包まれてやってくる。
下腹部の白い布はくしゃり となる。
私のものも 彼女のものも綿ではない。

二杯目の赤い

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詩「さく さくと手」

詩「さく さくと手」

耐え忍びました
かたく なりました
ふくらみました やわく
なりました
淡い てのひらが咲きました
握手握手握手握手握手
四月が終わります
寂しがる女の子をみています
たくさんのてのひらを携えます
(彼女も気づくかなあ)
五月になりひとびとが
勝手に休みだした頃
てのひらが 更に咲きます
むしろ つよく
女の子はさみしそうです
ええ 離さなければいいというものではない
ですよね
てのひらが淡くも咲

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詩「海/記憶/過ち」

詩「海/記憶/過ち」

鎌倉に来た
ほんとうにあなた
美男子におわす
駅と人の見える
ビール 喫茶店
晴れる気がした これからと
鎌を持つおじいさん
道草を刈る数年
窯を持つおじいさん
土塊を繰る数年 いつかの
麦わら帽子のわたしを追
うわたしを負う母は
日本海側の出身だった
大仏は鉛色
飴玉は薄荷
感情は修羅
貴方は斜視
私は頓珍漢
(なぜ「私」は漢字一字なのだろう)
ぼけた海を愛好し合った
砂浜には海星無し
(だから

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