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嵐山の着物屋さんで、おばあちゃんから言われて嬉しくなった話

ついこの間、静岡の友人が1泊2日で京都に遊びにきてくれた。
数ヶ月ぶりに会った私たちが朝一番に向かったのは、嵐山にある着物屋さん。

今流行りの「#嵐山食べ歩き」「#着物」を実践するためだ。

京都に住んでいる人間は、観光客に人気のスポットにあまり行かない。故に、そのスポットに詳しくない。民家の人に道を聞き、地図アプリを駆使しながら、予約時間より5分遅れで着物屋さんに到着した。(これが京都暮らし10年の結果である。なんとも情けない・・・。)


どの着物が良いか、所狭しと並べられた着物をかき分けながら選んでいると、店員さんが2着の着物を掛け直していた。それらの着物が、私と友人の目に留まり、思わず即決してしまった。

着付けと持ち運び用の巾着もしくはバッグは、基本料金に含まれている。髪飾りのみなら300円、ヘアセットも込みなら1000円。私は髪が短いし、ヘアセットはやめて髪飾りのみを選んだ。


2人同時に着付けをしてもらっていたが、入り口に戻ってきたのは私だけだった。
『お連れさんは、ヘアセットしてもらってはるみたい。』
若い店員さんが教えてくれた。そうなんですね、と返し、私だけ入り口の近くで待たせてもらうことにした。

すると、さっきとは別の、おそらく店長?であろうおばあちゃんが、
『あれ、彼氏さんは?』と声をかけてきた。

私たちの後から来たお客さんで、カップルの方がちらほらいたため、間違えているんだろうな、と思った。まあいいか。

今ヘアセットしてもらっているみたいで。
私が言う前に、おばあちゃんはこう言った。


『ああ、彼女さん?』


一瞬、びっくりして言葉が出てこなかった。
おばあちゃんが、彼氏さんと言われて微妙な反応をしていた私を見て、私と友人をカップルだと捉えていた。

「いや、友だちです。今髪をセットしてもらっているみたいで。」と返すと、おばあちゃんは特に動じることなく『ああ、そうなん。待ってはるんやね。』と言い、他のお客さんの荷物を預かりに去っていった。


おばあちゃんの何気ない一言に、私はとても嬉しくなった。

最近、同性愛や多様な性の在り方を受け入れる考えが、広まりつつある。私も大学時代から、性の多様性を尊重したいと考えるようになった。
だが、「尊重したい」という考えは持てていたとしても、それを「当たり前」として行動することは、まだまだ広まっていないと思う。

おばあちゃんは、何も気にすることなく、『ああ、彼女さん?』と聞いてきた。
おばあちゃんにとっては、外見が女性の私に「彼女」がいることは「当たり前」なのだ。

変わっていくのは、一部の人だけじゃない。今を生きるすべての人が、変わっていく。

そう感じて何だか嬉しくなった、嵐山での出来事だった。

(ちなみに、久しぶりの着物はなかなかキツく、次の日筋肉痛で苦しんだ・・・。)


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