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かくしごと。


ノック1回、
キミは今トビラの向こうに居るかな。
ノック2回
キミはまだトビラの音に気付いていないのかな。
ノック3回、
キミは今誰かと電話でもしているのかな。 
ノック5回、
キミはどうしてこのトビラを開けてくれないの。
街灯がちらつく夜に、口から漏れ出す白い息が
心の寂しさを映し出す。無愛想なトビラ一枚に、
不確かなキミの存在に、
何を求め期待しているのか、、、。  
ちがうな。

真冬の空にひと筋の涙。伝わる指先の温度。
星のない空暗闇の中に今引き込まれそう。
叩いたトビラのキミの返事は、
甘くこぼれた吐息とともに。
重なり合うひとつの影が月明かりに照らされる前に
今、目を閉じた。

ノック1回、
ボクは今トビラの前に息を潜めてた。
ノック2回、
ボクはまたキミの声に嘘をついた。
ノック3回、
ボクの手はキミの知らない誰かの肩に。
ノック5回、
ボクはもうこの指先を止められないままに。

照明が揺れるこの部屋で、
甘く広がる香水の匂いが、
境界線を白く濁していく。
トビラノ向こう
キミを抱きしめる事がエンディングなら、
きっとボクも主人公になれたんだろうな、、、
ちがうな。

真冬の海にひと筋の影が、
波にゆられ混ざり合うように。
星のない空暗闇の中で
自分の影さえも見えなくなった。
キミが叩いたトビラの返事は
欲に駆られた獣のボクさ。
舞い上がって燃え盛る火花も今雨のなか。

舞い上がって地に落ちて。
渇き疲れてキスをして。
腐りきったこの体は毒入りの果実さ。

真冬の夜にひとりきり僕等。
夜風に冷やかされる様に。
星の見えない暗闇の中で息苦しさを感じて居る。 

僕らを挟んだ一枚のトビラ、
言葉をなくし色をなくした。

鍵穴から見えたキミの指先で、
今トドメを刺しておくれよ。


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