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イラク ”文明のゆりかご” | ミュージック・ジャーニーvol.71

皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。

今回は、悠久の歴史を持つ中東の国イラク共和国へ、駐日イラク共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。

イラクは最古の文明として知られるメソポタミア文明の舞台であり、“文明のゆりかご”とも呼ばれています。チグリス川とユーフラテス川という2つの大河の恵みを受け、古くから世界有数の肥沃な農業地帯として栄えてきました。

イラクの旅のしおり
・首都バグダッドの歴史を学ぼう
・1万年の歴史を持つメソポタミア料理を食べてみよう
・独自の発展を遂げたイラクの音楽文化に触れてみよう

長い歴史が刻まれたイラクの地には、世界遺産に指定されている遺跡をはじめ、歴史的遺構が数多く存在しています。今回はそんなイラクの見どころを音楽とともに巡りましょう。

『アラビアン・ナイト』の舞台となった首都バグダッド

バグダッドは国内でもっとも人口の多い都市でもあり、約730万人の人々が暮らしています。その歴史は古く、8世紀にアッバース朝の都として建設されると、イスラム文明の中心地として栄えていきました。

当時のバグダッドは「平安の都」と呼ばれ、人口100万人が暮らす一大都市として繁栄を極めます。イスラムの教えのもとに多民族が共存し、最先端の科学や医学をはじめとする優れた文明が築かれていきました。

なかでも貨幣経済のレベルは非常に高く、度量衡の統一、貸付行為の容認、市場秩序の維持など、現在の資本主義のもととなるような仕組みが1100年前から存在していました。高度な文化水準は、当時のバグダッドが舞台となった『千夜一夜物語』(アラビアン・ナイト)のストーリーや背景からもうかがえます。

バグダッドの中心部には周囲7キロにも及ぶ円形の城壁がそびえ、4つの方角に設けられた門からは、それぞれユーラシアの各地へ幹線道路が延びていました。各道路は交易の大動脈としてイスラム帝国の繁栄を支え、そのうちの1つはヨーロッパを縦断し、遠く北欧のスウェーデンまで延びていたことが明らかになっています。

6つの世界遺産

さまざまな歴史が刻まれたイラクには、各時代を象徴するような世界遺産が6つあります。いずれも貴重な歴史的価値を持ち、未だ多くの謎に包まれた遺跡もあるなど、未知の可能性を秘めた魅力的な遺産ばかりです。

都市遺跡サーマッラー

・アッバース朝時代の都市遺跡
・世界に3つしかないとされる螺旋状のミナレット(モスクに付随する塔)が特徴

バビロン

・4000年以上前に栄えた古代バビロニア帝国の中心地
・10平方kmの広大な遺跡群のうち、発掘されているのはわずか18%のみ

エルビル城塞

・有史以前から人が定住する世界最古の集落
・建てられた経緯などは未だに謎でありミステリー性のある世界遺産

ハトラ

・「神の家」とも呼ばれるパルティア帝国の要塞都市

アッシュール(カラット・シェルカット)

・アッシリア帝国最初の都

南イラクのアフワール:生物の避難所と古代メソポタミア都市景観の残影

・古代都市遺跡と多様な生物が住む湿地帯の複合遺産

1万年の歴史を持つ食文化

イラクの地で生まれたメソポタミア文明は、農業と牧畜によって人類が初めて食べ物を管理した文明と表現することもできます。“メソポタミア料理”とも呼ばれるイラクの食文化は、その頃から1万年もの長い年月にわたって人々の暮らしを支えてきました。

今回は、そんなイラク料理を代表する2品をご紹介します。

マスグーフ

チグリス川とユーフラテス川でとれた巨大な魚を背開きにしてスパイスを効かせ、釜などで丸焼きにする豪快な料理です。イラクの国民的料理であり、街中のあちこちで魚を売る露店や調理のための釜を見かけることができます。

クーズィー

お米を使ったイラクの郷土料理です。子羊を骨が柔らかくなるまでじっくりと煮込み、揚げたレーズンやアーモンドなどをトッピングして大皿に盛るのが代表的なスタイルです。

多様なルーツを持つ音楽文化

イラクはアラブ諸国でももっとも東に位置していることから、アラブ音楽を基調としながらも、ペルシャ音楽や中央アジア音楽の要素を含んだ豊かな音楽文化を持っています。アラブ音楽の特徴といえば、「マカーム」と呼ばれる独特の音階・旋律が挙げられますが、バグダッドでは都会的に洗練された「イラキ・マカーム」へと発展しました。

また、イラクではアラブ音楽で用いられる民族楽器とともに、ペルシャの伝統楽器「サントゥール」が使われるのも特徴です。このように、イラク音楽が持つ多様性は伝統楽器にも表れています。

ウード
リュートや琵琶と近縁の弦楽器。胴にバラ、黒檀、シデ、ウォルナットなどの素材を交互に張って豊かな響きを作る。

カーヌーン
台形の箱に多数の弦が張り巡らされたアラブの伝統的な撥弦楽器。

サントゥール
台形の木箱に弦を張った打弦楽器。ピアノの前身となる楽器の1つ。

民音では1979年から11回にわたって開催された「シルクロード音楽の旅」で、イラクから音楽家を招聘し文化交流を行っています。歌と楽器のそれぞれで最高峰の音楽家が出演し、聴衆のみならず各国の出演者とも麗しい交流を結びました。

大使館推薦の音楽家

最後に、駐日イラク共和国大使館が推薦するイラクの音楽家の演奏をお楽しみください。

Cities of Daffodils - Naseer Shamma

Arabian string instrument (Qanoon)-Iraqi LAMI music (LAMI Maqam)

Maqam Lami OUD NAY-Saif Alkhayyat (Oud), Rageed William (Nay)

チグリス川

皆さん、イラクへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力、写真提供:駐日イラク共和国大使館

Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-

ご案内

この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/14941/min-on-music-journey-no-71-republic-of-iraq/

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