自転車で北海道縦断(1/7) 本州脱出編
注:この記事の内容は2016年の夏の出来事です。
2016年の夏。
見知らぬ土地を自転車で数週間旅してゴールにたどり着いたとき、自分は何を思うのだろう?
当時、学生だった俺はその答えを得る為、自転車で北海道を旅することにした。
ルートは苫小牧→宗谷岬(本州最北端)
1日目 灼熱の国道6号(東京→土浦)
最初の目的地は茨城県の大洗という港町だ。
そこから北海道の苫小牧までフェリーが出ている。
東京からの距離でいえば100kmと少しだが
念のため乗船予定の2日前に出発した。
旅の目的はあくまで北海道を自転車で旅する、というところにある。
しかし燦燦と照り付ける太陽と、登っては下ってを繰り返す国道6号に早くも心が折れかけていた。
こんな暑いのにわざわざ自転車で旅に出るなんてアホか?
途中、コンビニで休憩しつつ何とかペダルをこぐ。
1日目なのにもう家に帰りたい。
人がやってるのを見るのと自分がやるのとじゃ大違いだ・・・。
帰りたい
なんとか土浦までたどり着く。
1日目は土浦のビジネスホテルで宿泊。
受付で住所を書いたらスタッフのお姉さんに驚かれる。
「自転車で!?東京から!?」
記念すべき旅1日目はベッドにそのまま倒れこんで終了。
あまりにも過酷すぎて帰るかどうか本気で悩んだ。
2日目 助走でつまずく(土浦→水戸)
帰るかどうか迷った。
しかし前日にfacebookで「北海道行きます!!」と派手に宣言してしまっていたので後には引けぬとホテルのベッドを飛び起きる。
今日こそ大洗まで行く。
そして北海道行きのフェリーに乗船するのだ。
昨日と同じように国道6号をひた走る。
道中、目の前がクラクラしはじめた。
あれ?これって熱中症?と思ったが
休もうにも周りには畑しかない。
これもう駄目じゃねえか?と思った時、
突然目の前にコンビニが。
急いで駆け込んでアイスとジュースを補給する。
え?フェリー動かないんですか?
昼頃、水戸市内に入り偕楽園で一息ついていた。
本当なら大洗に向かうべきなのだが事情が変わってしまったのだ。
数時間前、いきなりフェリー会社から電話が入り
今日、自分が乗船するはずだったフェリーがエンジントラブルで欠航すると告げられた。
渋々、次の日の船に振替えてもらう。
曇り空の水戸を歩きながらいろいろと考える。
まだ2日目なのにすでに身体が疲弊してしまっている。
北海道を自転車で走るのがこの旅の目的なのに
その前段階で大いに躓いてしまっているわけで。
こんなことで北の大地を旅できるのか?
この時はとにかく先行きが不安でしかなかった。
3日目 ようやく船出(水戸→大洗)
希望の兆し
次の日、ホテルで朝食をとり走り出す。
水戸から大洗までは10kmほど。大した距離じゃない。
なにより道中の景色が新鮮だ。
いままでずっと国道沿いを走ってきたからなぁ。
ようやく旅っぽくなってきた、とテンションが上がる。
相変わらず暑いことには変わりはない。
だが何かが変わりだしている。
そんな予感がして胸を躍らせながらペダルをこぐ。
大洗町の標識が見えたときはここ3日間で一番、テンションが上がった。
まあ、ようやく旅のスタート地点にたどり着いた、というだけなんだけど・・・。
スタート地点に到着
大洗に到着してまず最初にフェリーターミナルに向かう。
受付は夕方ごろだから後でもよかったんだけど
自分が乗る船がどんなものか見ておきたかった。
フェリーターミナルの中にも入る。
まだ昼前なのもあり全く人がいない。
自分が乗るフェリー、さんふらわあ号は18:30発だ。
北海道の文字を見てテンションが上がる。
行くしかねえぜ。
"聖地"大洗
見上げるとアニメのポスターが!
そう、ここ大洗はアニメ「ガールズ&パンツァー」の聖地なのだ。
フェリーターミナルを後にして町を散策。
とにかくガルパン関係の展示が多い。
そして町に良くなじんでいる。
昼ご飯を食べる前に大洗磯前神社にお参りする。
ちなみに神社にもこんなにでっかい絵馬が。
町ぐるみで応援してるんだなあ。
自撮り棒と簡易的な三脚を持ってきていたので
邪魔にならなさそうなところで練習。
自分が走ってる姿にテンション上がる。
旅らしい食事
神社から少し走るとカキ小屋みたいなのがあったので入る。
店内はすでに人で賑わっていた。
親切そうなおっちゃんがいろいろ説明してくれながらカキを焼いてくれた。
旅に出てから食事と言えばコンビニかファミレスしか行ってなかった。
ようやく旅先で地の物を食すという旅人っぽい行いができたとほっとする。
(ちなみに食べたカキは三陸産だったらしい。でもおいしかったです。)
ここはアキバなのか?
大洗のランドマーク、マリンタワーにはガルパンカフェなるものが存在する。
まだフェリーの受付時間まで余裕があったので行ってみた。
さっそく店内に入ると東南アジアのあたりからきていると思われる
外国人のお姉さんが迎えてくれた。ちなみに迷彩服を着ていた。
店内にはアニメ好きと思わしき男性グループと地元のおばあちゃんたち。
男はともかく、おばあちゃんたちにとっても憩いの場なのか・・・?
その後も大洗アウトレットのガルパンギャラリーに行ったりして過ごす。
町を歩いているとアニメ好きと思わしき男性たちとよくすれ違う。
まるでアキバに来たみたいで心が落ち着く。アキバは茨城にもあったんだ。
決意のホワイトボード
おいしいご飯も食べたし、町も満喫したしもう終わりでいいか・・・?
と思いかけたが、受付の時間が近いのでフェリーターミナルに戻る。
フェリーターミナルに戻るとすでに大勢の人で賑わっていた。
最初に来た時とは大違いだ。
受付を済ませフェリーターミナルで座っていると
隣にいたおばさんが話しかけてきた。
おばさんは旦那さんと一緒にバイクで北海道を旅するらしい。
俺が持っていた自転車用の給水ボトルを見て
「あなた自転車で行くの!?」と驚いていた。
確かに乗船客の大半がバイク乗りのようだった。
自転車乗りもちらほら見るんだけど数は少ない。
受付にはバイク乗り以外にも(本物の)迷彩服を着た自衛隊員も来ていた。
人で賑わう館内を出て外に止めておいた自転車に向かう。
そしてホワイトボードに目的地を書き込み
アウトレットで買ったステッカーを張る。
自転車で日本一周をしている人たちが
こうして看板を背負って走っているのを動画で見てあこがれていたのだ。
都内で看板を出すのは恥ずかしかったから今まで伏せておいたけど
北海道でなら大丈夫な気がする。
宗谷岬(本州最北端)、と書いたところで気が引き締まる。
乗船
フェリーへの乗船列に並ぶ。
自宅を出発して3日間、いろいろあったけどようやくスタートだ。
この船に乗ったらあとは北海道に上陸するのみ。
もうしばらくは引き返せないぞ。
期待と不安でぐちゃぐちゃな気持ちになっていると列が動き出した。
慌てて自転車にまたがり、前の人に続いてフェリーに乗り込む。
船の中に入り、係の人に従って駐車。
北海道につくまで自転車とはしばらくお別れだ。
荷物を持って船内に入る。
旅に出て初めての出会い
駐車場から上がり客室に入る。
一番安い客室なので雑魚寝部屋だった。
部屋の中はすでに乗客で賑わっていた。
グループで来ているバイク乗りのおじさん、大学の自転車サークル。
皆、これからの旅について楽しそうに話している。
荷物を置くと、隣のスペースのおじさんが話しかけてきた。
俺の持っている給水ボトルが気になったらしい。
自転車乗りは数が少ないからよく声をかけられる。
隣のおじさんと談笑しつつ荷ほどきをしていると声をかけられる。
僕と同じくらいの年齢の男で、ここでは仮に"鈴木"としておく。
鈴木君も学生で自転車旅をするために乗船したという。
旅に出てから一人で自転車旅をしている人に初めて遭遇した瞬間だった。
もうね、泣くほどうれしかった。
鈴木君も同じだったらしく盛り上がっていると
「あの・・・僕も一人旅なんですけど・・・」と声をかけられる。
彼のことは"佐藤"としておく。
佐藤君もやはり自転車一人旅で学生だった。
一人旅で、自転車で、学生。
同じ境遇の旅人に出会えたことに興奮していると出航の時刻が来た。
鈴木君、佐藤君と3人で急いで甲板に上がる。
震えながらの船出
時刻は18:30
港から見送られながらフェリーが汽笛を上げて出航する。
「いよいよっすねぇ~!」
「これでしばらく本州には戻れないねぇ~」
出航し離れていく陸地を見ながら
鈴木君、佐藤君とお互いに励ましあう。
全員、北海道を自転車で旅できることを楽しみにしつつ
やはりどこか不安なのだった。