【小説】どこにでもある恋の終わり#3
「今日のお昼はカレーだった」
「今日の月、綺麗だよ」
「駅の階段で転んで恥ずかしかったわ」
「残業ダルい」
読まれることのないメッセージを送り続ける。
本当はこういう時、「あの時はごめん」だとか「やっぱりやり直そう」だとか言うべきなのだろうけど、送ってしまうのは他愛のないことばかり。
誰かを好きになると言うことは、何かを共有したいことなのだと思う。
共有する時間が減り、内容が減り、私たちは終わってしまった。
共有できずにいる事象は虚空を漂い、部屋を澱んだ空気で満たす。
彼女に新しく恋人ができたらしいと知ったのは、大して更新もしない癖に、他人の状況を知っていたいという理由のみでアカウントを作っていたSNSに、彼女がアップした写真のせいだった。
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