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妄想レビュー返答

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こちらは、企画「妄想レビューから記事」の返答をまとめたマガジンになります。 企画概要はこちら。 https://note.com/mimuco/n/n94c8c354c9c4
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2022年2月の記事一覧

小説|埋められた芸術

 荒れ地を見て年老いた芸術家は嘆きます。この町で描いた花畑の絵により芸術家の名は世に知れ渡りました。だからこそ再び訪れた町の花々が枯れていたことを芸術家は悲しみます。進む町の開発に花は散ったのでした。  力なく歩いていると芸術家は少女と出会います。少女はかつて花畑だった荒野へ向かい絵を描いていました。空想上の花畑の絵。芸術家に憧れ少女は画家を志していました。芸術家は心に決めます。余生はこの町で過ごそう。  芸術家は命果てるまで少女に絵を教えます。芸術家が亡くなると世界中の

芸術家の卵 【名探偵コスティーナ x ミムコさん妄想レビュー】

 立札には威厳があった。 「この下に私の最高傑作が埋まっている」 「事件の匂いがする。掘り出してはならない、だと」  ポアロに憧れる警部は、風に歪むつけ髭を気にしている。 「あの方の遺言でありますから」  町長は気が気でない。芸術家が亡くなって一週間。世界中から愛好家が訪れ悼んでいるというのに。 「一帯の土地を買い占めとは。埋まっているのは、利権がらみで死体、あるいは脱税の証拠」 「そんな」 「かばいだてするなんて、あんたもグルかね」  怒りで真っ赤になる町長。  はえとり

ミムコさんの妄想レビューのお返事

今日のミムコさんの妄想レビュー。 とても素敵なレビューでした。 妄想レビューを書くことはまだもう少し、想像が追いつかないので 妄想レビューのお返事にチャレンジしてみました。 ⬛︎ミムコの妄想レビュー 「私......目を閉じて、深海にいる想像をすると落ち着くんだ」そっと打ち明けた少女。 「わかるよ。図書館のYとZの間でしょ。あのシンとした感じ、僕も落ち着く」そう答えた少年。 本の海のその奥底で、静かにはじまる小さな恋。 優しく撫でたくなるような、そんなお話でした。 ■

小説『天の川を探して』【note創作大賞応募作品】

   【プロローグ】 私が小学五年生の夏、父と母と私の家族三人でY県の山奥にある村に引越しした。  家はとても古い小さな木造の日本家屋で、玄関の土壁の端っこが剥がれて竹小舞がむき出しになっており、居間まで風が吹き込んできた。時々、そこからムカデやトカゲが家の中に入ってくると、母は悲鳴を上げて「早く街に帰りたい」と文句を言っていたけれど、私はこの家のピカピカの青い瓦屋根と、広い広い庭を見渡せる長い縁側が気に入っていた。  街にいる頃は、マンションに住んでいたから小さなベランダに

月の缶詰 〜図書館帰りの女の子〜

「かわいい子やったなあ。」 心の声が漏れたのかと思ってちょっと恥じらっていたら、手元から石、自称「月」の声がする。 「そう思わんかった?」 慌てて周囲を見回して誰もいないことを確かめ、肩を落とす。 自分の心の声が漏れ出ていたら恥ずかしいけれども、こちらの声の方がまずい。 他の誰かに聞かれたら困ってしまう。 「お隣さん、昨日はカレーだったみたい。」が話題となるような田舎だ。 喋る石の存在はもちろん、石と話す女もどちらも噂にするに