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MIMU
2024年5月29日 18:31
黄色のラナンキュラスと言霊花屋の2階で少し心が落ち着いた頃、丸テーブルの向かいに座るタンゴが横の小窓越しに空を見た。「ヒナ、ここに長居してはいけないみたいだね」言いながら向き直る彼は、楽しい時間がお開きになる寂しさからなのか、眉尻を下げて笑った。「今日は夕立が降りそうだよ」天気予報では1日晴れと言っていたし、朝も、昼過ぎに店を出てここに来るときも太陽は元気だった。タンゴの真似をして
2024年5月19日 20:57
ジュネと昼間の花屋いつも朝晩通る緩やかな坂道を、自転車をゆっくり引いて歩く。今日はこの道は2回目で、朝出勤するときにちら、と脇道を見た。CLOSEの看板が立っていた。そして今は昼過ぎ。街中と少し違う爽やかな風を受けながら、それでも午後の日差しはじわっと肌に触れる。登り坂の途中でうっすらこめかみに汗をかきはじめたところで、ふわっと一瞬強い風が吹いた。「あっ」かぶっていたリネンのバケットハ
2024年5月13日 14:35
トキワナズナの耳飾り花屋「Katarina」の看板横のランタンは、いつの間にか灯りを消していた。コツコツと階段を降りる音がしたのは、ちょうどヒナがハーブティーとサブレを空にした頃だった。「わあ、」ヒナはそばに来た青年、パルムの手の中にある自分の帽子を見て感嘆をこぼす。敷物代わりにして怪我をした猫を乗せてくしゃっと歪んでいたリネンのバケットハットは、元のハリ感を戻していた、どころか、ま