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マーク・ストランド『犬の人生』村上春樹訳、中央公論新社

前回のカーヴァーを読んだあと、つづけて村上春樹の翻訳を読みたくなった。ずっと前から『犬の人生』という題名が気になっていたが、最近この人(ストランドは詩人)の詩が好きになってきたので、この短編集も読んでみたのだ。読んでみたら、ふふっと困った微笑を浮かべるしかない感じ。この本も短編小説とうたってはいるけれど、たぶんそれぞれが長い詩なんだな。

一番好きなのは巻頭の「更なる人生を」だけれど、これは内容を紹介するとネタばれになるのでやめよう。「犬の人生」は恋人に突然「自分は以前は犬だったんだ」と告白する話。恋人は驚きながらもそれなりの反応をしてくれる。「小さな赤ん坊」は妖精のような小さな赤ん坊が生まれた話。「大統領の辞任」は業績があまりぱっとしなかった大統領が辞任するときのスピーチで、いかに彼が気象を大事にしているかを滔々と述べる。

まぁこういう風に書けばその風変り具合がわかるでしょう。ふつうの小説に慣れた人が困った顔をするのが目に浮かぶ。でも、もしこれらの短編が気に入ったら、きっと彼の詩はもっと気に入ると思います。


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