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往復書簡。

この頃、誰かに手紙を書きたくて仕方がない…

もともと手紙を書くのが好きで、小学生の頃はよく幼なじみのお姉ちゃんに手紙を書いていた。

中学生に上がっても、毎年 友達への年賀状は全て手書きで書いていたし、なにより誰かに手紙を出すということ自体が好きだった。

でも高校生になると周りも私も忙しすぎて手紙すら書く余裕がなく、SNSの発達や個人情報の問題でそもそも住所を知らないことが増えた。

今は仲の良い友達でも、連絡先は知っていても住所はほぼわからない。
文通したいと何度か思ったものの、相手の負担になるかなと思うとなかなか住所も聞けずそのままだ。

昔から手紙を書くのが好きなのもあって、よく便箋を集めていた。手紙を両親や友達の誕生日くらいにしか書かなくなった今も相変わらず気に入った便箋を見つけては買ってきてしまうので、どんどん溜まっていく。

先日、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で15分間の放送まるまる往復書簡の物語という回が放送された。

現時点で、私のいちばん好きな回である。
手紙をやり取りするふたりの間に流れている空気が凄く好きで、何度も何度も見返している。

その放送を見て、誰かに手紙を書きたくなった。


そして、その放送の後に 一冊の本と出会えた。

『いつか、僕らの途中で』
文/ 柴崎友香
イラスト・文/ 田雜芳一

書いた手紙がまだ届いていない、空白の、でも幸せな時間に、手紙が届くはずの相手が普通に暮らしている 一 京都と山梨、遠く離れて暮らすふたりの「往復書簡」ストーリー。


ふたりの生活をそっと覗かせてもらっているような気持ちになる。

手紙と二人の日常それぞれにおける少しの会話が綴られている本。

簡単に連絡を取れなかった時代とは違い、電話も普通にできる時代の話だからこそ、文通でやりとりをしているふたりの間に流れる穏やかな空気感にとても憧れる。

「もしもし。うん、手紙。着いた?」

「あはは、おかしいよね。電話で確認するのも」


(『いつか、僕らの途中で』p.21 より)


ふたりのやり取りする手紙の間に描かれた日常の風景のイラストに載っていた言葉だ。
些細だけど、すごく好きなやりとり。


この本を読んで、やっぱり手紙だからこそ伝えたくなる言葉ってあるよねと思う。

手紙だとどうして季節の移ろいを綴りたくなるんだろう…

この本でも、先述したドラマでも 手紙を通して感じる景色や季節を言葉にしている。

特にこの本においては
「春/spring」「夏/summer」
「秋/autumn」「冬/winter」
の4つに分けられた構成となっている。

ふと思えば今から1000年以上前に生きていた人たちも季節を送りあっていた。

短いわずか31文字に想いを詰め込んで。

ー 空を見て、木々や花々を見て何を感じるのか。

きっとこれこそ「その人そのもの」を表すんだろうなと。そして、その言葉に「その人となり」が現れてくるんだろうなと。

相手のことを想いながら、自分の心を動かしたものについて綴る。
これってきっと心に余裕が無いとなかなか難しいこと。

いろいろなものに追われ、知らぬ間に膨大な情報を受け取り疲れ切ってしまうこの時代だからこそより憧れる。

文通って素敵だなと改めて思う。


さいごに。

既に絶版になっているこの本。
(私は中古で購入しました。)

中の挿絵がとても素敵。

日常を切り取った絵。

疲れたときにはふたりの間に流れている穏やかな空気感をおすそ分けさせてもらう気持ちでこれからもこの本を開くのだろうなと思う。

手紙書きたいな…

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