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初ミュージカル観劇


多幸感。

初めて劇場で見たミュージカルはその一言に尽きる。

『Knights Tale - 騎士物語 - 』

私にとって舞台観劇の扉を開いてくれた作品。
とっても大切で、大好きな作品になった。

舞台というとオペラは観たことがあったが、ミュージカルはこれが初めてだ。

これまでの私にとって正直オペラはクラシックコンサートの延長線上にあり、内容というよりは歌声、オケ、舞台美術、煌びやかな衣装を堪能する場だった。

また、オペラは基本歌詞が外国語なので、内容を理解するには字幕を見るか視覚から入ってくる情報を頼りにすることになる。(見慣れている人は違うのかもしれないが…)

今回 母国語で上演されるミュージカルを観て、客席から作品を観る感覚ではなく、そもそも客席で観ている感覚がどこか無くなっていくという感覚を初めて味わった。

そして、この没頭した感覚を味わえたからこそ 今後オペラの見方も変わるかもしれない…と思った。没頭する感覚はクセになるから。

-STORY-

テーベの騎士で従兄弟同士のアーサイト(堂本光一)とパラモン(井上芳雄)。2人は厚い友情を誓い合い、騎士としての誇りと名誉を何よりも大切に生きていた。戦争により敵国アテネの大公シーシアス(岸祐二)に捕虜として捕えられるも互いに励まし合いながら同じ牢獄で過ごしていた2人は、ある日シーシアスの美しき妹・エミーリア(音月桂)を牢獄の窓から見掛け、同時に恋に落ちてしまう。だが、アーサイトは追放され、テーベに戻るよう命じられる。アーサイトは、残ったパラモンがエミーリアに近づくのではないかと、一方パラモンは、祖国に戻ったアーサイトが兵を率いて攻め入りエミーリアを奪うのではないかと、互いに敵愾心を抱きながら、愛するエミーリアを必ず手に入れると決心し道を違えて行く。

テーベへ戻る道中で、アーサイトは森の楽団を率いるダンス指導者ジェロルド(大澄賢也)に出会う。エミーリアの誕生祝賀の稽古をしている一座に名を偽りダンサーとして加わった彼は、再びエミーリアに出会うチャンスを得る。その頃パラモンは、食事の世話をしてくれる牢番の娘(上白石萌音)の手引きにより牢獄を脱出する。牢番の娘は脱獄という危険を冒すほどパラモンを愛していたが、ふとした瞬間にパラモンが去ってしまい、ショックのあまり正気を失ってしまう。

エミーリアに再会したアーサイトは、シーシアスが愛するヒポリタ(島田歌穂)の計らいも有り周囲には正体を隠して彼女に仕えることになったが、シーシアスやエミーリア達と狩猟に出かけた森で、無二の友であり今や恋敵となったパラモンと出会う。
艱難辛苦を経て再会した2人は、どちらがエミーリアを得るにふさわしいか男か、愛と名誉そして生死を賭けて決闘を挑むのだった―。

― ナイツテイルHP(初演)より

私が観劇したのは、11/5 ソワレと11/6 マチネ。

ミュージカル観劇デビューと同時に帝劇デビューだ。やはり“帝国劇場”という名前の響きだけでも素敵だし、あのよく見るステンドグラスを実際に目にするだけで心踊った。

席に着き、流れる岸さんの開演アナウンス。
あのアナウンスを聞いて、物語に入る準備が整う。

そして聞こえてくるオケ合わせの音。

初日、不覚にもこのオケの音を聞いた途端涙が出てきて焦った。

最後にオケの音を聴いたのは、2019年末。
オペラ「スペードの女王」で音を浴びてから1年以上、ずっとずっと欲しながらも聴けていなかったあの音を聴くことができて、ぶわっと込み上げてきた。

生のエンタメは“生きていくのに絶対必要なものだ”と改めて実感した。

そして暗転し始まる『騎士物語』。

私はあのオープニングの♪騎士物語 で客席の我々に「ようこそ!!」と物語の扉を開いてくれる瞬間がたまらなく好きだ。

小説を読んでいるとまるで自分もその世界で生きているような心地になるが、あのオープニングで、そこに近いところに連れていってくれるんだ!!とワクワクした気持ちになる。


ナイツテイル、全てのシーンについて書いてもいいのだが、確実にまとまらない未来が見えているので、特にグッときた場面をpick upしたい。



まず私が今回物凄く衝撃を受けたのが、牢番の娘こと上白石萌音さんの“声”。

歌声を聴く前の、話している時の声ですぐやられた…。勿論TVや映画などを通して彼女の声がいかに良いかは分かっているつもりだった。

やはり生で聞かないと(見ないと)分からないことってたくさんある。

オープニングで物語の扉を開けてもらい、それでもどこかまだ“舞台作品を観ている私”として客席にいたところ、彼女の声を聞いて一気に物語の世界に引っ張りこまれた。

周りにたくさんの人が座っているはずなのに、自分ひとりと舞台だけになってしまうような感覚。

初めての経験だった。

あの声、なんと表現したらいいんだろう。
柔らかくて、澄んでいて、でも真っ直ぐ届く。

私のイメージしている所謂ミュージカル独特の発声とは少し違っていて、リアルさが増しているというか。だからこそ私の中で客席と舞台の間の隔たりが取り払われたのだと思う。

とても引力のある魅力的な声。

そして、特に惹き込まれたのが 2幕の序盤に牢番の娘が歌う ♪悲劇の姫 。

「竜に追われる悲劇の姫なら助けたの…」
あれからこの部分がずっと脳内でリフレインしている。

自分の持つ語彙力であの聴いたときの感覚をどう表現したらいいのか分からない。

ただ上手いだけの歌を聴いてるのとは違う、上手いうえに物語にとことん没入させてくれる、感情移入させてくれる歌声。

この先、役を生きる彼女の歌声をもっともっと聴きたいとあれからずっと願っている。

そして同様に特に歌声にやられたのが、最後のアテナの歌声。

アテナの神託こと折井理子さん。

あの高く伸びやかで優しく劇場いっぱいに広がり包み込む歌声は、まさに女神の歌声だった。

客席で聴いている私までもが解放されていく感覚。気づくと涙が流れていた。

日に日にあの歌声が記憶から薄れていくのが悲しくて仕方がない。


観劇するまで、ナイツテイルがこんなに笑いのある作品だとは知らなかった。
初演は観れていないので3年間でどう変化したのかは分からないが、笑いとその笑いがありながらも様々な意味が込められているバランスが凄く好きだ。

好きなのは、パラモンとアーサイトの牢屋のシーンと森で逃げるシーン。

芳雄さんと光一さんのテンポ感が素晴らしくて、ふたりの掛け合いをずっと観ていたかった。

まるで少年のようなふたり。

舞台の面白さを凄く感じた場面でもあった。テレビや映画など、映像における作品だとどうしても視覚から来る情報が多くなり、実年齢とかけ離れた役どころを見ると見ている側が違和感を覚えることも少なくない。

しかし、舞台はそれが可能なのだと思う。
勿論演じ手の力量があればこその話なのだろうが。

声の出し方、表情、仕草であっという間にその役どころが分かる。
(ナイツテイル後に円盤で観た「エリザベート」
舞台の中だけでシシィが少女からどんどん歳をとっていく様に圧倒された。)

なんなら、人以外にもなれる。
ナイツテイルに出てくる鹿や馬(に乗っている人)は物凄くリアルだ。

実際に鹿の角を生やしているわけではなく、手で持ちながら動いているにも関わらず、鹿にしか見えなかった。

ナイツテイルのキャスト陣は皆役を生きていて、だからこそ物語に没頭できた。

エミーリアとフラヴィーナの場面。
フラヴィーナが踊り狂い力尽きたあとに彼女を囲む皆々。

オペラグラスを忘れてしまい、座席が2階後方だったこともあり、アンサンブルの方々含め細かい部分を見られなかったことがとても悔やまれる。

そして何より、ナイツテイルは音楽が絶品。

劇中で使用される曲、全てが好きだ。

特に、♪騎士物語 の「さあ描いて〜」
キャスト陣のハモり具合が好きのど真ん中に刺さる刺さる。
♪宿敵はまたとない友 と♪妹よ も凄く好きな曲調だった。

また、♪悔やむ男 の芳雄さんの歌声。

芳雄さんの歌声と萌音さんの歌声はTVを通して聴くのと劇場で生の歌声を浴びるのでは、聴こえ方がかなり違った。

生の歌声を聴くと、より歌声の中に物凄くたくさんの情報が詰め込まれているのが伝わる。
心情だったり、景色だったり…

芳雄さんの歌声は一色じゃない。
まるで何重奏もしているかのように聴こえてくる。

先日のラジオで歌っていた「ロミオとジュリエット」が本当に本当に最高で、生で聴きたくて仕方がない今日この頃である。

島田歌穂さんのかっこよさ、音月桂さんの各方面でのバランスの良さ、光一さんのダンス…
他にも書きたいことが山ほどあるが、今はここまで。

ただ、、最後に…
これだけは載せたくて。
ナイツテイル冒頭に出てきたクリオン。
風貌が昨年の大河ドラマ「麒麟がくる」に出てきた晩年の齋藤道三そっくりだった。

似ていませんか…??
ナイツテイル、格好がどこか和っぽいのもあって
序盤は脳内からこの道三を排除するのが大変だった。笑



『Knights Tale - 騎士物語 -』

初ミュージカルとなった、舞台の面白さを教えてくれたこの作品。幸せが沢山詰まっていた。

大好きでとても大切な作品になりました。
カンパニーがまるっと愛おしい。

これを機に劇場へたくさん足を運ぶと思います。

ナイツテイルカンパニーの方々
本当に本当にありがとう!!

観劇という新しい世界が開けました。

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