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10キロのポタと手術の説明

 大動脈弁狭窄症兼逆流症という症状で83歳の叔母が大手術を受けることになった。

叔父は84歳、慣れない入院手続きで二人して半ばパニック状態、頼りの子供(私の従兄弟)は関東の大学で学生の卒論指導やらで帰省出来ず。代わりに声が私にかかる。まあ、これで日ごろの不義理が返せるならばと、手続き書類を捌いて、今日は手術の説明に立ち会うこととなった。

 受付してから病棟に上がるまでが3時間、昼食を挟んで、午後一で医師の説明が始まる。まずは心臓の基本構造から説明が始まって心臓のメカニズムに及ぶ。まるで中学校の理科の授業を受けているようだった。続いて、問題となっている大動脈弁の予想される症状から適正と考えられる手術方法と置換する人工弁のことなど、それはそれは詳細な説明をしてくれる。

 さらには、手術に伴う数々のリスクの説明となるが、まあ、出血、心不全、長期人工呼吸に腎障害、脳梗塞などから感染症まで、それぞれ1~5%くらいの割合で起きることがあると説明。もう聞いている叔母は手術せず帰りたいと言い出す始末、なだめすかして、今はこうして可能性のあるリスクは伝えないといけないから、ごめんなさいねと詫びながらも、術後の経過を麻酔が覚めてから身体拘束やせん妄、管を抜くタイミングからリハビリまで、生々しいルポでも聞いているような説明が続いて、最後に追い打ちをかけるように同意書の束に署名また署名、担当看護師も手術の日までに、やっぱり受けないと思えば申し出ていいからねと、本人の意思を尊重して声かけしてくれる。なんと、この説明が終わって時計を見ると2時間が経過しているではないか。

 叔母はもう待つ時間で疲れて聞くに堪えない辛そうな説明に疲れてヘトヘトの様子だ。面会時間内であれば1回15分を守れば一日に何回来てもいいそうだ。毎日来るからなと叔父、それを拠り所に頷く叔母。一日に何回も来ればいいわと私。看護師に連れられて病室に行く叔母を見送る叔父と私、あーこんなテレビドラマもあったかも知れんなと俯瞰する私。これから叔父は帰ってから、この歳にして初めての一人暮らしに戸惑うに違いない。短いため息がそう言っているようだ。

 受付でも説明でも並んだ私と叔父二人、66歳と84歳は共に白髪頭だから、説明する医師も、叔母との関係をどっちが配偶者でどっちが甥なのか分からない様子。83歳と見まがうのかと複雑な甥、いや私。この後、私は関東に居る従兄弟にメールに概略の説明と、写メで撮った説明資料を添付して送信、次は来週の手術当時に術後の説明を叔父と一緒に聞きに行くことになった。

 心臓のメカニズムの勉強にもなった。高齢の患者と家族が病院に行くと、まず病院内のシステムに戸惑う。コンシェルジュ的に係が立ってくれていても、一つ一つの説明指示、案内にまた戸惑う。病棟に着いても、新しい環境に戸惑い、迫る手術に戸惑う。昔と違って術後は長くは置いてくれない。病院生活に馴れる頃には退院なんだろうな。

 以上、病院の行き帰りは軽いポタリング10キロ、待ち時間に本も読めた。そんな一日だった。明日から三連休じゃないか。20240105

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