新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(1)
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(1)

アメリカ留学研究ノート - kayo mimizuka

アメリカでは、新型コロナウイルスのパンデミックがまだ続く中、米ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが警官に押さえつけられ死亡した事件を受け、各地で大規模なデモが起きています。それに伴い、オンラインのデマや偽情報も問題になっています。

「ネット上の一見馬鹿げたデマを真剣に取り上げる必要があるのか」「信じるのはごく一部の人で、実際の生活にはそこまで影響はないのではないか」という声もよく耳にしますが、アメリカに住み、パンデミックとデモを巡る議論をウォッチしていて改めて「共通しているな」と感じることは、誤情報・偽情報はオンラインにとどまらず、オフラインでも大きな影響を与えているということです。

パンデミックとデモに関し、アメリカで実際にどんな誤情報・偽情報が拡散しているのか、そしてそれが私たちの実生活にどのような影響を与えているのか、関連する事例や研究を紹介したいと思います。

新型コロナウイルスをめぐる偽情報

新型コロナウイルスの感染がアメリカでも拡大しはじめた当初から、さまざまな偽情報がオンラインで拡散されています。下のコンテンツは「市民がパンデミックの最中に外出しないよう、ロシア政府がライオン500匹を道路に放つ」というニュース速報のキャプションが付いた写真とともに拡散されました。この画像は、2016年の熊本地震の際に拡散した「ライオンが放たれた」という偽コンテンツに使われた画像とよく似ています。

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より深刻な、健康や感染予防に直接関わるような偽情報も多く目にしました。「バクテリアの99.9%が死ぬ抗菌性の石鹸は、コロナウイルスには効かない」といったものや、「コロナウイルスの治療には、熱湯を桶に入れ、頭を布で覆い、20分間蒸気を吸うのが一番効果的」といった根拠のない情報、「健康保険に加入していなくても、献血をすれば必ずコロナウイルス の検査をしてもらえる」といった偽情報もツイッター上で拡散されました。


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また、人種に関連した偽情報もありました。下の画像は「有色人種はコロナウイルスに感染しない可能性がある」というもので、信じてしまえば、予防対策を損なう可能性もあります。

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組織的な偽情報拡散

また、新型コロナウイルスを巡っては、反ワクチン派による組織的な偽情報の拡散も問題になりました。なぜ、反ワクチン派がコロナウイルスに関する偽情報を広げているのか?下のコンテンツには「イタリア、カリフォルニア、ニューヨーク、ワシントンではワクチン摂取が義務。そうした地域はコロナウイルスの影響を最も受けている。ワクチンは免疫を損なう」というキャプションが付いています。

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つまり、コロナウイルスに感染するのはワクチンを摂取しているからだ、という誤った主張です。パンデミックに乗じて、反ワクチンという自分たちの主張を広げようとするものです。今後ワクチンが開発されたとしても、こうした主張が摂取を妨げるのではないかという懸念もあります。

また、多くのフォロワーや支持者を利用し、金銭目的で偽情報やミスリーディングな情報を拡散する動きもあります。アメリカには、アレックス・ジョーンズ氏が運営する「インフォウォーズ」という有名な陰謀論・偽情報サイトがあります。ジョーンズ氏は関連グッズを販売するサイトも持っており、「コロナウイルスの感染予防に役立つ」と謳った歯磨き粉などを販売、アメリカ食品医薬品局(FDA)から販売停止命令を受けています(ちなみにジョーンズ氏とインフォウォーズのツイッターアカウントは、ルール違反で2018年に永久凍結となっています)。

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FOXニュースの視聴者と健康被害の関連性

どのようなメディア情報に触れるかが、実際にコロナウイルスの感染率・死亡率と関連していることを示唆する学術的研究もあります。シカゴ大、ハーバード大などの研究者が行った「Misinformation During a Pandemic」という研究は、米FOXニュースで最も人気がある番組「ハニティー (Hannity)」と「タッカー・カールソン・ショー(Tucker Curlson Show)」を視聴している人々と、その健康状態について比較しました。番組のトランスクリプトを分析したところ、カールソンは、2月初旬からコロナウイルスの脅威について警告していた一方、ハニティーは当初、ウイルスの危険性を軽視するような内容を放送しており、視聴者に警告を発するのが遅れていました。

さらに、視聴者のウイルス感染率などについても分析したところ、ハニティーの視聴者は、カールソン視聴者に比べて、初期段階からCOVID-19による死者・感染者数と強い関連があることがわかりました(さまざまな要因を考慮した「ロバスト性解析」を行っても同様の結果)。つまり、アメリカ全体で、ハニティーを観ていた人の方がコロナウイルスによって亡くなる・感染する率が高くなっていました。さらに興味深いのは、3月中旬ごろからハニティーが番組のトーンを変えたところ、それに伴って視聴者の死亡率・感染率も変化したという点です。

この研究は、結果がアップデートされる予定ということです。興味がある方はこちらのリンクから読むことができます(英語)。

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普段視聴するメディア、摂取する情報は、実際に私たちの行動に大きな影響を与える可能性があることが、パンデミックを通じてより明らかになっています。また、コロナウイルスに対する不安も収まらない中、アメリカで大きな動きとなっているジョージ・フロイドさん殺害事件とそれを巡るデモに関しても、同じような状況があると感じています。次回の記事では、デモに関する偽情報に焦点を当てたいと思います。




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偽情報・誤情報、メディアリテラシーの研究に関する海外情報&留学情報を発信します。 テキサス大学オースティン校博士課程。