柚木菜ユキナ

はじめまして。柚木菜といいます。スピリチュアルや好きなアーティストの米津玄師について書…

柚木菜ユキナ

はじめまして。柚木菜といいます。スピリチュアルや好きなアーティストの米津玄師について書いています。

マガジン

  • 小説「フローライト」

    米津玄師さんについて書いてます。これは小説ですが、彼のビジュアルや雰囲気を元に出来た小説です。ですので、彼の体験とか事実について書いたものではありません。これは架空のものです。妄想や空想とも違う伝えたい真理を描きました。 芸能界がいかなるものか、私は知りません。ただこの庶民とは違うある意味「異世界」の中で右往左往する彼を描いてみたいと思い、この小説は生まれました。 楽しんでいただければ幸いです。

  • 米津玄師さんと私

    米津玄師さんについて書いてきた私ですが、ほんの少しだけ私ごとについて書いてます。人生についての参考にしてくれたら幸いです。

最近の記事

フローライト第四十一話

奏空の全国ライブツアーが始まってまたしばらく会えない日々が続いた。咲良の怪我は徐々に良くなっていき、やっと自分のマンションに帰って来れた頃、ちょうど奏空もツアーを終えて一旦東京に戻って来た。一旦と言うのは、まだ後半戦が残っていたからだ。 天城家にお世話になっている間、すっかり利成にべったりだった美園は、ピアノも教えてもらい腕も上がっていた。おまけに利成から絵も教わったらしく、油絵も描き始めていた。 マンションの部屋では絵の具が使いづらいといい、しょっちゅう美園は利成のとこ

    • 名前のトラウマ

      「名前を大きく書いてきてね」と先生は言った。 そのまんま受け取った私は、家に勝手からピアニカのケースの表面に大きく自分の名前をマジックで書いた。 それは文字通り「大きく」、つまりピアニカのケースの表面の全てを使って書いた。母はそれを見ていたはずなのだが、その後すぐに幼馴染の親が家に遊びに来た時に、「すごいね、これ」と言われて初めて気づいた。 「大きく」にも限度がある。先生はきっと「見やすく、わかるように」と言う意味で言ったのだ。幼馴染の親に言われた時、初めて心底「恥ずかし

      • フローライト第四十話

        ゴールデンウィークが開けて美園の学校も始まり、奏空のドラマは絶好調に視聴率を保っていた。主題歌も奏空のグループが歌っていてヒットチャートに乗っていた。奏空の忙しさと共に、咲良との間がどんどん冷めていっているような気がする。 「ねえ、奏空と喧嘩してるの?」と何日もすれ違いのように生活している二人を不審に思ったのか、美園が夕飯時に聞いてきた。 「喧嘩なんてしてないよ」と咲良は答えた。 「でも奏空がすごく元気がないんだよね」 「そう?」 「咲良もだしね」と美園は言うと「ご

        • フローライト三十九話

          ゴールデンウィークに入る前に美園の学校の先生から呼び出された。美園がクラスの子を脅したというのだ。 「どういうことでしょうか?」と咲良は美園の担任の若い男性教師に言った。 「詳しいことは本人も相手の子も言わないのですが、美園ちゃんがカッターナイフで脅したと・・・脅された生徒が親御さんに話して、それで私のところに話にこられてわかったのですが・・・」 「カッターナイフで?ほんとに?」 咲良は驚いた。美園がだなんて信じられなかった。 「本当です。美園ちゃんも認めてます。で

        フローライト第四十一話

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        • 小説「フローライト」
          41本
        • 米津玄師さんと私
          3本

        記事

          生まれてから幼稚園まで

          何かに長けた子供と言うのは、大人たちの笑い話の中で期待される。 最初に生まれた子供というのは、非常にちやほやされるものだが、恐らく私の場合もそうだったのではないだろうか? 大寒の頃、私は生まれた。予定日を2週間以上過ぎていてからの出産は、当時でも珍しい自宅での出産だったと母から聞いている。 同じ敷地内に母方の祖父、祖母の家があり、父は自衛隊、母は事務員という家の長女として生まれた。 一番最初の記憶は二歳半頃、妹が生まれた時、母にミルクの入った哺乳瓶を渡され「あげてきて」と

          生まれてから幼稚園まで

          フローライト第三十八話

          「奏空~」と美園が玄関まで駆けだして行った。 「ただいま~美園~」と奏空が大袈裟に両手を広げている。美園が奏空の腕の中に飛び込んでいった。 奏空は全国ツアーを終えてしばらくぶりに家に帰ってきたところだった。美園は三歳になっていた。 「おかえり」と咲良も言うと「ただいま~咲良もきて」と奏空が言う。 「いいよ、私は」と言うと奏空と美園がじーっと咲良を見てくる。 「あーはいはい」と咲良は諦めて奏空の腕の中に入った。 「うん、二人共ただいま」と奏空が抱きしめてきた。 「

          フローライト第三十八話

          フローライト第三十七話

          明希が家出してから一週間経ったが、明希はまだ帰ってこなかった。奏空が明希の実家に連絡してみたが、実家にはいないと言う。 (どこに行っちゃったんだろう・・・) 咲良は不安になったが、どうしようもできない。とりあえずはマンションに美園を連れて帰宅した。 ある日咲良が洗濯物を洗濯機から出して干そうとベランダに行こうとしてギョッとして立ち止まった。美園がベランダの柵のあたりに立っていたのだ。 「美園」と驚かさないように咲良は小声で呼んでから近づいた。ベランダの柵は子供が通れる

          フローライト第三十七話

          フローライト第三十六話

          利成の言う通り、奏空はまだライブツアーの最中だというのに咲良の病院までやってきた。 「え?奏空、ツアーは?まだあるでしょ?」と咲良が言うと「うん、でも顔だけ見に来た」と奏空は屈託のない顔で言った。 「大丈夫なの?」 「ん、すぐ戻るから大丈夫」 「そう?終わるのもう少しでしょ?」 「うん、あと二か所だけど大丈夫。赤ちゃんは?」 「うん、連れてこようか?」と咲良が言うと「うん」と奏空が嬉しそうに言った。 看護師さんに頼んで赤ちゃんを連れてきてもらった。奏空が受け取っ

          フローライト第三十六話

          私について

          「命」というものがあるのなら それは「表現する」ことに他ならないのではないでしょうか? または、「経験」と言ってもいいかもしれません。 どんな人にもその人だけの経験や表現があり そのために生まれてきたと言っても過言ではないのでしょうか? 有名無名、健康病気、どんな状態も過ぎ去るものであり ある意味では自分自身ではありません。 起きている状態もそれは「表現」の一つかもしれませんが 「表現」とはもっとその人の本質に近いものではないかと思うのです。 なので「命」=

          フローライト第三十五話

          もう行くことはないと本気で思っていたのに、何故か明希からまた連絡が来た。「もうほとんどいいんだけど・・・」とは言うがやっぱり来てほしそうだ。 (やっぱり明希さん、ちょっと様子が変・・・)と咲良は思う。 しかも夜に出かけると言う。それでも「いいですよ」と咲良は出かけて行った。着くとちょうど出ようとしていた明希と玄関で会う。 「あ、ごめんね。ご飯作ってあるの。咲良さんも利成と一緒に食べて」と明希が言う。やはり今日も思いっきりおしゃれをしている。 「はい、ありがとうございま

          フローライト第三十五話

          フローライト第三十四話

          ライブのリハーサル中に利成が怪我をした。台座が急に崩れて足から落下し、骨折はしなかったが酷くひねってしまい、当分は安静になってしまった。 咲良はその連絡を明希からの電話で聞いた。 「じゃあ、入院してるんですか?」と咲良が聞くと「ううん、検査で一日入院したけど、後は家で大丈夫だっていうから」と明希が答えた。 「そうなんですか・・・大丈夫なんですか?」 「うん・・・まあね。でも、何せ歩けないものだからトイレに行くのもやっとで・・・」 「そうなんですか・・・じゃあ、明希さ

          フローライト第三十四話

          フローライト第三十三話

          事務所と奏空、○○のグループと奏空との話し合いがずっと平行線だった。やはり今は結婚はおろか、恋人がいるなどという事実も伏せた方がいいということだった。 (そりゃあ、そうだろうね)と咲良は思う。やはり奏空が甘かったのだ。 連日の話し合いで奏空の帰りが遅かった。咲良はやはり自分が出て行くのが一番いいだろうとだんだん決心を固めていった。 部屋で何となく荷物を片付けていたらドアがノックされた。「はい?」とドアを開けると利成が立っていた。 「咲良、ちょっと来て」と言われて咲良は

          フローライト第三十三話

          脊髄がオパールになる頃の「Undercover」の真相

          思春期とは、喜びに進む痛みという快感。 不安というよりは、誰よりも勝っているという優越感は、承認欲求を遥かに超える。「ささくれる」とは、何かしら「快感」である。 米津のライブ映像がユーチューブで公開されたのは、2022年5月7日。それまでライブのダイジェスト版こそ公開されてはいたが、そのライブ映像の一部を全公開したのは初めてである。 そもそも「ライブ」とは、観客の前で直に歌うことであり、その時だけにしか味わえない米津と共有する高揚感としてのリアルである。 それに対して昨

          脊髄がオパールになる頃の「Undercover」の真相

          フローライト三十二話

          全国のライブツアーに成功した奏空のグループ○○は、テレビのレギュラーなど人気はまだどんどん上昇していた。そして八月になり、例年にないほどの猛暑日がつづいたある日、やはり怖れていたことが起きた。 <アイドルグループ○○の天城奏空、かつての父の愛人とツーショット> それは夜中に奏空と一緒にコンビニに行った時のものだった。 (誰が撮ったんだろう・・・) まったく気づかなかった。いつも警戒はしていたのに・・・。 でもどうしようと思う。これを奏空の母の明希が見たら・・・。

          フローライト三十二話

          フローライト第三十一話

          正月も過ぎて奏空はまた忙しくなった。最近はもっぱらテレビの中で奏空を見ている。 咲良はウイスキーを飲みながらテレビの中で歌う奏空を見つめた。高校を卒業した春からは本格的に全国でライブツアーをやるらしい。 夜中に寝ようとするとスマホが鳴った。いきなり電話だ。 「もしもし?」 「あ、咲良?起きてた?」 「寝るとこ」 「そう。もう少し起きてて」 「いいけど、奏空の方が寝たら?」 「俺は大丈夫だよ。連絡できなくてごめんね」 「いいよ、そんなのは。それに高校ももうすぐ

          フローライト第三十一話

          フローライト第三十話

          季節は冬に移行し、奏空の仕事が忙しくなった。新人賞候補だった奏空のグループはテレビの仕事が増えていた。 けれど奏空はほとんど毎日のようにラインをくれたし、話せる時は電話もくれた。オフの日は必ず会いに来てくれた。 「大丈夫なの?」とその日の夕飯を一緒にしながら咲良は聞いた。 「全然大丈夫・・・って何が?」 「忙しいんでしょ?学校もあるし・・・疲れてない?」 「全然疲れてないよ」 「そう?ならいいけど」 「あー今日はここに泊まりたい」 「また、ダメだよ。朝帰りなん

          フローライト第三十話