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【恋愛小説】㉟最初の恋人 最後の恋人 〜信頼関係~

このまま今まで通り・・・って訳にはいかない。
もう、レッスンに行かなきゃいけないから、終わったらまた、戻って来て話す。

そう言って、美々は部屋を後にした。

昌人はまたもやパニックっていた。
「たっちゃん、オレ、一人で待ってられないから、美々が戻るまで、一緒にいてくれ」
「わかった・・・。オレにも責任があるし。美々ちゃんが帰ってくるまで、一緒に対策を考えよう。
それにしても、こんな時にレッスンに行くかね・・・。自分のレッスンやろ?」
「それが美々の仕事やねん。・・・。bestな状態で舞台に立つには毎日のレッスンが欠かせないって。1日でも休むと感覚が鈍って、元に戻すのが大変らしい。付き合う時にもレッスンを優先するって言われたし。それを承知で付き合ったんだ。ああ見えて芯が強いねん」

数時間して、美々が戻ってきた。
達也は帰ると言ったが、昌人が一緒にいてくれと頼み込み、別れ話しを3人でするという、奇妙な話し合いが始まった。

「美々ちゃん、誤解は解けたし、オレが謝って済む話しなら、いくらでも謝る。この通り、昌人と別れないでくれ」
達也はまた土下座をした。
達也の横で昌人も土下座をしていた。

美々がレッスンに行っている間、2人で話し合った結果、ひたすら謝ろうという結論に達したらしい。

「ちょ、ちょっと!やめてよっ!!。土下座とかの問題じゃないし、謝ってどうこうとかじゃないから」
「じゃあ、どうすれば考え直してくれるん?」
昌人は恐る恐る聞いた。

「考え直すも何も、今回のことで、昌くんが私のことを全く信じてないってことがわかったから。信頼関係がないのに、付き合うなんて、無理でしょ?」
達也は自分を責めた。
再び土下座をしようとしたが、美々が止めた。
「達也くん、これは達也くんは関係ないから。今回のことがきっかけで、私たち2人に信頼関係がなかったってことが明るみになっただけのこと。それに気づいたってだけのこと。だから、達也くんには関係ない。達也くんの土下座は意味ないから、やめて」

それを聞いた昌人は
ひたすらに土下座をしていた。
「ホントにごめん。美々が何度も信じてって言ってたのに・・・。ホントに謝ることしか出来ないけど、ホントにごめん!!。だから、もう一度、チャンスが欲しい!!」

美々はとりあえず、土下座をやめてくれと何度も言ったが、昌人はチャンスがもらえるまで土下座をやめないと言い張り、ふと見ると、達也も一緒に「頼む」と土下座をしていた。

「もぉ〜、じゃぁ、ひとまず別れるってのは保留で。頼むから2人とも顔上げて」

昌人と達也は顔を見合わせて、同時に顔を上げた。

昌人の目を見て、美々は話し続けた。
「別れないにしても、今まで通りにはいかないんよ。
はっきり言うけど、私、今、昌くんのこと、前ほど好きじゃないからね。お陰で涙も出やしない」

「ホンマや!!泣いてないっ!!」
昌人と達也の声が揃った。
どこまでも仲が良い昌人と達也だ。

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