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【恋愛小説】㊶最初の恋人 最後の恋人 〜おたま攻撃~

妹は、昌人に何も知らせず彼女に別れ話しをさせようとしたことが気に入らない。
自分が彼女の立場なら、耐えられない。
と訴えた。
「そうね、でも、何が気に食わなくても、ご飯はちゃんと食べなさい。誰の為に作ってると思ってるの。」
妹は素直に母に謝った。
「で、達也は誤解だったってわかったのよね。ちゃんと彼女さんに謝ったの?」
「おばちゃん、それはちゃんと謝ってくれたよ。彼女も許してくれたし。」
昌人が答えた。
「じゃあ、とりあえず、全て丸く収まったわけね。昌人くんも別れず済んだってことで。ウチの兄妹喧嘩も終息ね」
達也の母は安心したように話したが、昌人は俯き加減に、
「いや〜、別れずに済んだかどうかはまだ・・・」
母と妹が身を乗り出してきた
「なんで!?」
母はこれ以上は2人の問題だから大人が口出ししたらダメね、と言ったが、妹は
「私、大人じゃないし。なんで!?教えて」
興味津々だった。
母も妹の言葉に乗っかった。
昌人は達也の嘘が絡んでることが原因だと言えず、歯切れの悪い話し方をしていた。
「昌人、オレから話すよ」
達也が話そうとすると、
「アンタ、まだ、何かやったんか!?」
母は持ってたおたまを振り上げた。
昌人が慌てて止めに入る。
「おばちゃん、暴力はダメだよ。おたまも少し変形してるし。」
泣きそうな声で止めに入った。

達也は別れさせる為に美々に会いに行ったこと、嘘をついたこと、昌人が美々ではなく、自分を信じてくれたこと、それが原因で、美々が「泣くことにも悩むことにも疲れた、別れる」と言ったこと、全て話した。

話終わった後、妹は
「やっぱりヘドが出る。一緒にご飯は食べれん。お父さんとリビングで食べるわ」
食事を持ってリビングへ行ってしまった。

母は再びおたまを振り上げていた、いや、すでにおたまは達也の頭を何度も直撃していた。
昌人は止めに入ったが、母のおたま攻撃は収まらず、リビングにいた父が止めに入るほどだった。
おたまは使い物にならないほど、変形していた。
達也はおたま攻撃を阻止すべく、必死に抵抗していた。
「アンタ!!自分が何したかわかってんのっ!!いい年した男が束になってよってたかって年下の女の子に別れろだのって電話して。それ、いじめだからねっ!!更に保身で嘘ついて!。ことごとく追い詰めたんだよ!アンタは!!」
達也の母はうっすら涙ぐんでいた。
変形したおたまを振り上げて、その手を父が制止していた。
「だから!、だから土下座してきた!!ホントに悪いと思って土下座してきたからっ!!」
母は鼻息荒く、振り上げた手を下ろした。

「お兄ちゃん、土下座したの?何があっても謝らないお兄ちゃんが!?。ふ〜ん・・・。それなら一緒にご飯、食べてあげるわ」
妹の言葉に達也は、なんで上から目線やねん、と涙目でつぶやいた。

「で、昌人くん、別れるの?」
母は昌人に尋ねた。
「僕は別れたくないんですけど、彼女に前ほど好きじゃないって言われてしまって・・・」
「それははっきり言われちゃったね。」
昌人は達也の母の言葉にさらに落ち込んだ。
達也がすかさず、
「そうやねん。そこまで言うことないよな!。なんか、ちゃんと言わないと別れた後、昌人が引きずるからそっちの方が可哀想とか言ってさぁ」
妹は何か考えてる様子。
「・・・それってさー、彼女さん、昌人さんのこと、好きなんじゃない?」
昌人は顔をあげた。
「なんで?」

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