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【恋愛小説】㉚最初の恋人 最後の恋人 〜崩壊~

美々の中で、何かが崩れるような、壊れるような、そんな感覚だった。
美々の言葉を信じてくれない昌人にショックだった。

しばらく、泣きもせず、話もせず、ただ、座り込んでいた。
昌人が何か言っていたが、その言葉も、もう、美々には届かなかった。

もう、疲れた。
好きだと信じてもらうことも、悩むことにも、泣くことにも、もう、疲れてしまった。
終わりにしよう・・・、何もかも・・。

美々は静かに立ち上がった。

「ほら、一緒に謝ろう」
昌人は美々の手をにぎり、達也の元へと美々の手を引いた。
美々は昌人に引かれた手をゆっくり離した。
「昌くん、ごめん。謝らない。だから別れよう。もう、終わりにしよう、何もかも・・・」
「えっ!なんでそうなんの?さっきまで、別れたくないって泣いてたやん!?」
今度は昌人がパニックだった。
「さっきまでは本当にそう思ってた。でも、昌くんは私のことを信じていない。この状態で付き合うのは、無理だと思う。何より、もう、疲れた。悩むのも、泣くのも、もう、疲れた。」
「嘘を言ったら謝るのは当然だろ?何で謝らないんだよ!何でそんなに頑固なんだよ!」
「そうね、私は頑固かも・・、だから、昌くん、ごめん。謝れない。私は達也くんに謝るようなことは言ってない。何もしてない。だから、謝らない」
「オレ、わかんないよ!。何で謝るだけなのに、それが出来ないんだよ!」
「昌くん、ホントごめん。謝れない。ごめん、これ以上、ここに居るのは辛いから、もうレッスンに行くね」

玄関に向かって歩き出した美々。
途中で美々は達也を睨み返した。
これで文句はないだろ、と言わんばかりに。
靴を履こうとした時、
「こんな別れ方って、そんな・・・」
昌人がつぶやいた。
美々は振り返り、
「そだね、最後くらい、笑顔がいいね」
「最後って、本気かよ。・・・謝るだけだろ・・・。別れるより簡単だろ・・・」
ずっとうつむいたままの昌人。
泣いているように見えた。

美々も泣いていた
「あれ、笑顔ってこんなに難しかったっけ?涙が止まんないね。」
昌人はうつむいたまま、何も言わなくなった。
「昌くん、顔、上げて。最後くらい、笑顔見せて」
昌人は首を横に振った。
「・・昌くんの優しい笑顔、最後に見たかったな・・・。私ね、昌くんの彼女で幸せだったよ。ありがとう。昌くんは幸せだったかな?」
何も言わず、昌人はうなずいた。
「そっか、良かった。それだけでもう、じゅうぶん・・・」
美々も涙で話せなくなってしまった。

「昌人っ!」
突然、部屋の奥から達也が叫んだ。
なかなか別れない2人にしびれを切らしたのだろう。
最後くらい、ちゃんと話しをさせてくれてもいいのに、なんて意地悪なんだろう。
美々はそう思ってた
「もう、行くから、もう少しだけ待って!」
美々も叫び返した。

「達也くんが早く行って欲しそうだから、もう、行くね。幸せになってね。約束よ」
昌人は何も言わず、うつむいたまま、首を横に振っていた。

「昌人っ!こっちに来てくれっ!」
また、達也が叫んだ。

「わかった!もう、行くからっ!」
美々が玄関のドアを開けたその時、

「待ってくれ!美々ちゃんも昌人も!オレの話しを聞いてくれっ!」

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