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【恋愛小説】㊱最初の恋人 最後の恋人 〜気持ちの度合い~

「美々ちゃん、好きじゃないって、それちょっとひどくないか?」
捨てられた子犬のように落ち込んでいる昌人を気にしながら達也が言った。

「あのね、達也くん。今淡々と話してるけど、私たち、別れ話をしてるんよ。」
「だからって、そんなこと言わなくても・・・」
達也が強い口調で言おうとすると、美々は冷静に反論した。

「私の気持ちが少し離れてるのは事実。それを言わずに別れたら、昌くんはなぜ振られたのか、なぜ別れたのか分からず、引きずると思う。それって、余計に辛くない?。別れないにしても、やっぱりこの私の気持ちは無視出来ない。今、言わなきゃいけないことだと思う。」

昌人が顔を上げた。
「たっちゃん。いいよ、ありがとう。オレも本音で話したいから。」

「でもさ、前は何も言わずに別れようとしたんやろ?」
達也の言う通りだ。そうだった。
「それは・・・。ごめんとしか言いようがない。」
悪びれる様子もなく、淡々と答えた。
開き直りってやつだ。
おいおいっと関西のノリで突っ込みが入る。
「みんなそれぞれ間違った選択をするときがある。」
ウソをついてしまった達也、信じなかった昌人、さよならを言わなかった美々。

昌人が少し立ち直った様子で美々に聞いた。
「前の好きはどれぐらいで、今はどれぐらい?」

気持ちの度合いを大きさで表すのは難しい。
考えた末、
「前はこれぐらい」
両手をめい一杯広げた。
「で、信じてくれなくて、半分になって、謝れって言わてる度に、さらに半分、半分・・・って、今はこれぐらい」
人差し指一本分の長さだった。

昌人は首をうなだれていた。
「そんなに・・・。でも、もう一度チャンスをくれるなら、その倍、倍って増やすから」
両手を合わせ、お願いスタイルだった。

「それにさ、」
美々は昌人のお願いには触れず、さらに話した。
「友達はどうするの?。めちゃくちゃ反対してるやん。達也くんに別れさせろっ指示して・・・。別れなかったら達也くんも辛い立場に追い込まれるよ。友達みんなにそこまで反対されて、付き合い続けること出来る?」

「確かに・・・」
達也が考え込んだ。。
「確かにアイツらのあの様子だと、別れてないって知ったら・・・」
達也の様子をみた昌人は
「えっ、そんなに?」
昌人は自分の知らない所で何があったのか、不安になっていた。

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