繰り返す〈駄文〉

ほんの二か月前のこと。
もうすぐパリに引っ越してしまう夫の友人カップルを家に招待してご飯を食べた。

彼らはカーボベルデにルーツを持つ人達だ。
カーボベルデはアフリカの北西沖合いに浮かぶ群島、だいたいセネガルの横くらいに位置する国だ。
ポルトガルの植民地だったことからポルトガル語の文法を簡易化したようなクレオール語を話し、浅黒い肌をした彼ら。宗教はカトリック。
今回初めて知ったのだが、彼女の母方祖母はポーランド系ユダヤ人だそうだ。

ユダヤ人は基本的に異教徒との結婚に抵抗のある人が多いのだが、なぜか夫の知り合いにはそういう異教徒を配偶者にした先祖がいる人が数人。
もちろん異教徒は認めないといって、相手に改宗要求する人もいるけれど。
一人知り合いにそんな人がいて、結婚するためにそれはそれは大変そうな手続きを経て5年くらいかかって改宗してた。
凄い愛の力、私なら無理。

話を戻して、彼らと4人でそれぞれのルーツの話をしていてその話に行き着いたのだが、その彼女の祖母はユダヤ人迫害はもちろん恐ろしい記憶として事あるごとに彼女にどんな事が行われて来たかを話した。
そして必ずこういった迫害は繰り返されると言っていたらしい。
だから決して誰にも自分はユダヤ人ルーツを持っていることを話すなと言っていたそうだ。
祖母は彼女に、もしそうなった際には、あなたのその浅黒い肌と父親の苗字(カーボベルデ人とすぐわかる、日本でいう鈴木みたいな苗字)があなたを守ってくれると言っていたらしい。

あの時は不安定な時代とはいえ民族迫害なんてもうあるわけないよねーと4人で笑っていたのに。
2か月でこんな事態になるなんて本当に信じられない。

こないだは空港でユダヤ人特有の黒い帽子を被った男性を見かけた。
この時勢に勇気あるななどとぼんやり見ていた。
彼は充電スポットを探していたようで、デスクに腰を落ち着けPCを触りはじめた。
その後白いパーカーを帽子の上から被り始めた。
なるべく目立たないように、狙われないように気を付けているんだなとわかった。

昔から素朴な疑問なのだけど、フランスではユダヤ人と聞くと拒絶反応を示す人が一定数いる。
理由はよく知らないが、ユダヤ人をよく知っているわけでも無さそうなのに、というか知らないから先入観で拒絶してるだけなのかな。
知り合いでそんな反応を示す人がいて、驚いた。
話を聞くと、身近なユダヤ人の知り合いはいないそう。
彼女は在日韓国人で、私の勝手な想像だけど、一度ならず日本で嫌な目に遭った事もあるだろう立場なのに。

確かに厳しい戒律がある宗教だし、馴染みのない習慣は部外者には奇妙に感じるだろう。
でもそれを言ったらすべての宗教はそんなものだと思う。

宗教問題は昔からずっと争いのタネになってきていていい加減なんとかならんかと思うけれども、ならなそうな気がする。
憎しみ、悲しみの連鎖は断ち切るのが難しい。
相互理解とか理想論に過ぎず、それぞれが離れて干渉せずに済むようにそれぞれに暮らすのが平和なのかなと今更ながら考えたりする。
移民問題も同じこと。
それが叶わないから争ってるんだろうけれど。

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