見出し画像

エッセイ : リモートワーク超絶快適ライフを目指して

研修の開始時間が9:30になった。しかし始業時間は変わらず9:00だ。

だから私は9:00より前にPCの電源を入れ、しっかり働いていることを会社側に証明しなくてはならない。

だが、困った。
この30分間することがないのだ。
会社からはこれまでの復習をしろと命ぜられているが、とくに復習することは無い。
というか復習する気力が無い。

そこで私はいつもよりも遅く起き、この30分を食事や着替えといった準備の時間にすることで有効活用したいと思ったわけだが、ここで新たな問題が発生する。

PCがスリープしてしまうのだ。

「そうか、お前も眠たかったのか。」

という同情は一切湧いてこず、スリープするのは私だけでいいのにという怒りだけが湧いてくる。

電源のオンオフで就業しているかどうかを管理されている以上、PCのスリープモードはこちらからサボっていることを知らせるのと同じことなのだ。

だから私は何としてもPCがスリープモードに入らないよう対策を練る必要がある。

試行錯誤を重ねた結果、YouTubeを再生し続けるという方法を思いついた。この方法を思いついた時、「これで私は自由の身だ!」と声を上げ喜んだものだ。

しかし甘かった。
更なる問題が頭によぎったのだ。

それはYouTubeを再生しているという最も根本的な問題だった。

PC電源のオンオフで就業時間を管理できる技術があるなら、私がどんなアプリを立ち上げて何をしているかが監視されていてもおかしくは無い。

杞憂かもしれないが、相手はIT会社だ。侮ってはいけない。

また、そもそもTiktokを始めとするショート動画が流行っている現代に、30分を超える動画を見つけることすら難しい。

私が思いつく限りではコムドットくらいだ。
監視されているということを前提とするならば、YouTubeを立ち上げてコムドットを再生した時点でゲームオーバーだ。

「コムドットです!」という挨拶が社内に響き渡ることを想像しただけで寒気がする。

そんな中YouTubeを眺めていると、一つの動画が私の目にとまった。それが「Coffee Jazz Music」という動画だ。

これはカフェで流れているようなオシャレな音楽が再生されるというタイプの動画だ。

YouTubeという点だけを考慮すると、コムドットの動画を再生することと何ら変わりは無い様な気もするが、この動画の最大の魅力は内容がジャズであること、そしてライブ配信という点にある。

仮に、会社側にYouTubeを再生している事を知られてしまったとしても、「この人はBGMをかけながら作業するタイプの人なんだな」と思われるだけだ。

それだけではない。監視されているという状況をむしろ逆手に取り、BGMを流しているという事実をこちら側から会社に教えてあげることで、「この人はしっかり作業に取り組んくでいるんだな」という好印象を与えることすらできる。

加えて、家の3階からジャズが聞こえてくる限り、PCがスリープモードに入っていないことが耳だけで確認できるようになり、安心して2階でご飯を食べられるようにもなった。
そのおかげか、最近妙にお腹の調子が良い。

私はこの動画を見つけた時、まさにコロンブスの気分だった。
他の同期が到達していないであろう境地に私だけがたどり着くことができた。

実際にアメリカ大陸を発見したのは、アメリゴヴェスプッチという「絶対こいつがアメリカの由来だろ」と思われる確信犯的な名前の人らしいが、そんなことはどうでもいい。

コロンブスが新大陸を発見した時の喜び、そして私が「Cofee Jazz Music」を発見した時の喜びに偽りはない。

私はこの動画を発見して以来、毎日ジャズを聴くことになるのだが、お陰様でジャズそれ自体の魅力に気づいてきたような気もする。

ジャズにしんがり的な役割を担わせてしまい、いかにも腕っぷしが強そうな名前のジャズ界のレジェンド、ルイ・アームストロングに殴られてしまっても仕方ないのだが、今後もジャズと共に快適なリモートワークライフを送っていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?