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【ことばの虫メガネ⑥】 「漢字の順序を変えると意味が違ってくる言葉」

 日本語の表現の幅が広い理由は、ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字で場面ごとに表現できる点にありますが、今回は「漢字」にスポットを当ててみたいと思います。

 日本語における漢字表現の面白いところは、漢字の順序を変えるとまるで意味が違ってくる点があげられます。いくつか具体例を見ていきます。

・「牛乳」は飲み物を指すが、「乳牛」は乳を出す牛を指す。
・「材木」は一定の長さや大きさに加工された木を指すが、「木材」は材質が木であることを指す。
・「平和」は戦争などがない穏やかな(落ち着いていて変わらない)状態を指しますが、「和平」は状態の変化を意味しており、悪い状況から平和な状態にすることを指します。

※「平和・和平」についてはややデリケートな部分でもあるので補足しておくと、「平和」は英語のPEACEの訳語として明治期から使われている言葉であり、それ以前の日本では「和平」を用いていました。意味としては、「和(やわらげ)平(たいら)にする」であり、言葉などで相手を説得・服従させ、相手が屈服しなければ武器を持って征服するというニュアンスがあります。昭和16年から42年にかけて編纂された『時代別 国語大辞典 上代篇』(三省堂)では奈良時代の言葉を調べられますが、和は「やはす」という項目に分類されています。意味として、「静め和らげる」の他に「討ち平らげる。平定する」とあります。つまり、武器を放棄するという意味は見当たりません。そのため、当初はPEACEの訳語として「和平」を用いる動きもあったようですが、明治期の日本は戦争状態にあったため、和平という訳では適していなかったようで、「平らで穏やかな状態」という意味で「平和」と訳されました。「戦争」の対義語は「平和」と一般的には言われていますが、ここまでたどってみるとちょっと片手落ちですね。本来は「戦争」(war)の対義語は「和平」(peace)と考えて問題なさそうです。少なくとも、憲法が求めるところの「平和主義」とは「和平」の意味であるものと私は解釈しています。

と、補足といっておきながら長くなりましたが笑、使っている漢字が一緒だからといって、意味まで一緒ではないという点をお伝えしたかったので、ちょっと細かく書いてみました。最後に、上下を逆転させると意味が違ってくることばをピックアップしておきますので、頭の体操がてら皆さんもぜひ考えてみてください。

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