決意の朝に。
ここのところ、あまり眠れないでいる。
頭も、身体も、しっかり疲れている筈なのに、アドレナリンが大量に分泌されているとは、正に今の様な状態を指すのであろうか。
うとうとしても 不意に目が覚め、スマホで時間を確認すると小一時間しか経っていない。
瞼の重いうちに、なんとか二度寝にありつこうと あれこれ試みてはみるものの…
どこかが はっきりと覚醒していて、私をぐわんぐわんと揺さぶってくる。
こうなるともうまるで駄目で、幾ら羊の数を数えようと、ホットミルクを流し込もうと、腹を括って その時が来るのを待つより他にない。
スマホの向こうでは、彼の気持ちよさそうな 寝息。
— はてさて、困ったな。
苦笑いと共に徐ろに寝返りをうつと、私はこれまでの事を思い起こしていた。
それらは しずしずと行列を成して、走馬灯の様に眼前を通り過ぎていく。
時折、その一つを摘んではひっくり返してみたりするものの、理解の範疇を優に超える形態をしている。
思わず、握り潰してしまいたくなる衝動が襲うけれど…
そのどれもに、心を寄せてくれた人達の顔も同時浮かんできて、ハッとする。
波瀾万丈というには烏滸がましいが、望んでもいない困難やトラブルに見舞われる事が 多くあった。
幾度となく 涙で目を腫らしたし、時には 心に爪を立てて引っ掻いたりもした。
それでも私を見棄てないで居てくれる人達の為に…
私は、私を、
幸せになることを、諦めたりはしない。
沢山辛い思いして
沢山泣いて
きっと強くなるし
もっといい人になれるよう…
空が白み始めた頃、漸く頭に薄い靄がかかり始める。
待ちかねたように身体はベッドに沈みを始め、鉛の重い扉が唸りをあげて開くと、私は櫂にそっと手を掛け船を漕ぐ。
鈍らせられた聴覚に 聞こえてきた。
今朝も変わらず…遠くで 彼の、私の名を呼ぶ声がする。
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