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拝啓、太宰 治様。#気になる口癖

私のつづる文章は、
そして 私自身は、
『 だって 』
という 口癖に集約しゅうやくされ…
最早もはや、代名詞になりつつあるように思う。

この、『 だって 』を含むネガティブな意味合いを持つ接続詞や副詞を、D ワードというらしい。
D ワードとは『 でも 』『 だけど 』『 どうせ 』『 だって 』といった、頭文字が『 D 』で始まる言葉だ。
創作物には、クリエイターの持つ思いや考え方・価値観等が投影とうえいされるというが…
なるほど。私の書く小説の主人公も、日常的に この D ワードを多用しているようで、苦笑いしかない。

以前 私は、好きな本に 太宰だざい おさむの『 人間失格 』をげたが…
『 恥の多い生涯しょうがいを送ってきました 』
の書き出しが余りにも有名な、主人公・大庭おおば 葉蔵ようぞうも、この D ワードを口癖にしているような人物だと思う。
大庭は、酒と煙草と淫売婦いんばいふおぼれ、非合法の活動に学生のうちから手を出し、薬物中毒をて、恋人と心中をこころみる。
他人への不信感、世間への恐怖心から、人前では面白おかしくおどけてみせるばかりで、本当の自分を誰にもさらけ出すことをできず 道化どうけを演じる男。
それは、人間に対する 最後の求愛きゅうあいだといえよう。
人間失格は、太宰の最後の完結作品となった。
自己破滅はめつ型の、太宰らしいものだ。

主人公 大庭と太宰には、局所きょくしょにシンクロが見受けられ…
太宰の作品は、太宰が自分のことを読者に語りかけているような印象を与え、読者は、自分が太宰のただ一人の理解者であるような錯覚さっかくを覚えるということがよく言われている。
ポジティブで明日への希望に満ち、活力になるような作品は 勿論もちろん素晴らしい。
それと同様に、自分の中の負の感情に呼応こおうして、悩みや迷い、苦しみや孤独こどくに寄り添ってくれる作品も また、私達の かてになってくれるのではないか。


前述ぜんしゅつで、私の口癖が『 だって 』であるとべた。
相手のいう事柄などについて、不承知ふしょうちで反論する場合や、先行する事柄について、その理由や言い訳を補足する場合にもちいており…
自分の立場や心情を弁明し、正当であると理由づけする。
つまり『 自己正当化 』をし…
主観的根拠こんきょしかないとわかっていながらも、対立相手に自分を認めてもらいたいのだ。
それは、私にとっての 求愛に当たるように思う。


たでう虫もき 』
とは言えど…
こんな私の作品に、スキをしていただいたり、フォローをくださったり、マガジンに追加していただいて、恐縮きょうしゅくすると共に、非常に感謝の気持ちで一杯だ。


しくも…
数日で 『 桜桃忌おうとうき 』がくる。

【 桜桃忌 】
昭和 23 年( 1948 )6 月、39 歳で愛人と入水自殺した小説家、太宰 治の忌日。
遺体が発見された 6 月 19 日を命日とし、墓のある東京都三鷹市の禅林寺で法要が行われる。
作品『 桜桃 』による命名。

[ 補説 ]6 月 19 日は太宰の誕生日でもある。

#青ブラ文学部
#気になる口癖


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