【読書感想】 儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
お金持ちと読書サークル「バベルの会」が絡むミステリー。
短編ですが、どの短編もどんでん返しがあり、心をヒヤリとさせてくれます。
いやー、面白かった!
あらすじ
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。
夏合宿の二日前、会員の丹沢吹子の屋敷で惨劇が起こる。
翌年も翌々年も同日に吹子の親近者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。
優雅なバベルの会をめぐる邪悪な5つの事件。
甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い談笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。
以下、ネタバレ感想です!
読んでいない人は、回れ右!
いやー!脳髄、痺れさせられちゃいました!
ヒヤリ!
え?こわっ!
こんな感じです。
5編からなる、短編ですが
身内に不幸がありましてでは、読書会の欠席をしたい吹子が、使用人の仕業にして「身内に不幸」を起こします。
北の館の罪人では、遺産の分前が欲しくて早太郎を毒殺するあまり。早太郎はいつか殺されると気付いていて、遺品の絵にメッセージを残していましたね。
山荘秘聞では、別荘の管理を任されたのに、来客がない寂しさから、遭難者を囲い込む屋島。「特別な渉外」で鍛えた、好しからざる人物の口を封じる手腕が怖すぎる。
玉野五十鈴の誉れでは、飼い殺しにされたお嬢様の純香を助けるために赤子を殺した五十鈴。二人の友情は素敵なんだけど、赤ちゃんを焼却炉に閉じ込めるなんて怖い。
儚い羊たちの晩餐では、バベルの会を除名された鞠絵が恨みから、雇われている料理人を誘導して、バベルの会を消滅させます。中に出てくる、アミルスタン羊=人肉。読書に浸るお嬢様達を、夢を見るひ弱な羊と形容するあたりも、読者はヒヤリとしたのではないでしょうか。
バベルの会とは、幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たちの聖域。
逃避のために物語を読んでいる。
物語的な膜を通じて、現実に向き合う。
このあたりの言葉が、私の心に響きました。
まぁ、私も儚い羊だわな。
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