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お粥やの物語番外編 第1章3-4 謙太の呟きと、神さんたちの内緒話

【賢者の言葉】
「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」

アラン「幸福論」より


【謙太の呟き】
笑うから幸福になり、そして、また笑い、さらに幸福になれるのなら、坂道を転がり落ちる雪ダルマのように、幸福は大きくなって……。
考えただけでワクワクします。

でも、笑うのは簡単そうだけど、いざ、やってみると難しい。
頬は石のように硬く、口角の端は糊付けされたように動きません。
笑えない僕は、幸せを手にできないのでしょうか。

【神さんたちの内緒話】
「笑うのは簡単だろう。口の端をニッと持ち上げればいいんだ。こんなふうにな」
「河さんの顔は、悪事を企む、悪代官みたいですね」
「失礼なことを言う、姥捨て山だな。どう見ても、癒し系の笑顔だろう」
「何をおっしゃる、ドブ河さん。子供が見たら泣き出します。母親なら、人攫いだと思って警察に通報しますよ」

「偉そうなことを言うなら、ゴミ山さんが手本を見せてくれよ」
「承知しました。汚染河さん。こんな感じですかね」
「いつもと同じスケベ面じゃないか」
「失礼な。それじゃ、私がいつもいかがわしいことを考えているみたいじゃないですか」
「そうじゃないのかい」
「ヘドロ河さんとは違います」
「何だと、糞山のくせに生意気な」

「二人とも、酷い顔をしていすよ。山も河も環境破壊はダメですから」
お粥やの主人が、二人の前に新しいお茶を静かに置いた。
「これでも飲んで心を落ち着かせてください」

二人はきまりが悪そうに仲良く頭を下げてから、湯呑を手に取り、ズルズルと音を出してお茶を啜った。


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