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お粥やの物語番外編 第2章2-3 謙太の呟きと神さんたちの内緒話

【賢者の言葉】
「飲と食とは度を過ごすべからず」

杉田玄白「養生七不可」

【謙太の呟き】
僕は大食いです。早食いでもあります。
食べ物が目の前にあると、早く食べなきゃ、とスイッチが入ってしまう。
でも、ドカ食いしても、太りません。それなら問題ないと思うのですが。
問題があるとしたら、それは僕の胃袋ではなく、財布の中身。
食べれば、食べるほど、財布の中のお金は減っていきます。
明日のことを考えると憂鬱です。

【神さんたちの内緒話】
「食べ過ぎは、体に良くありません」
「あいつは、自分で大食いだと自覚しているだけ可愛いじゃないか」
「自覚していようといないと、食べ過ぎれば同じことですよ」

「まあ、そう硬いことを言わずに」
「随分と、彼の肩を持ちますね」
「食べることは、俺の楽しみの一つだからな」
「河さんが食いしん坊なのは知っていますが……そう言えば、よく間食していますよね」
「お腹が空いていないのに、何となく、お菓子に手が伸びてしまうんだ」
「いい歳をした男の台詞とは思えませんね」
「しかたがないだろう。食べたくなるんだから」

「それは過食です。食べ過ぎはストレスが原因の場合が多いんですよ」
「ストレスね……」
「食べ過ぎや、早食いは、血糖値を下げるインスリンが急激に分泌され、場合によっては高血糖になります、河さんも気を付けないと」
「ストレスがあるとしたら、吞気すぎる山さんのせいだな。亀のような動きに、いつもイライラさせられるからな」
「ウサギのようにピョンピョンと跳ねていればよいというものではありません。それに、何でもかんでも他人のせいにするのは、河さんの悪い癖です」
「山さんのせいにすると、なぜかすっきりするんだ」
「私をストレス発散のはけ口にするのは止めてくださいよ」

「誰かの役に立てるのは、幸せなことだぞ」
「河さんのためになっても、ちっとも嬉しくありません」
「そう言わずに、これでも食べろよ」

そう言って、河さんは食べかけの大福饅頭を、山さんの前に置いた。
歯型の付いた饅頭は、歪んだ笑みを浮かべている河さんの顔に、とてもよく似ていた。


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