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仕事ができないと泣く前にエミリーを見習うことにする

『Emily in Paris』を観たら、「メンタルが弱くても、仕事ができないと泣く前にできることがあった」と目から鱗だった、という話です。

仕事も恋も友情も全方位楽しんでいる最強エミリー

SATCを手がけたクリエイターとスタイリストのパトリシア・フィールドが再び結集し話題のNetflixドラマ『Emily in Paris(邦題:エミリー、パリへ行く)』。私も公開を楽しみにしていたひとりです。

満を持して観てみると、パリは最高にパリだし、パンオショコラから新進気鋭シェフのコースまでどれもおいしそうだし、流し見もできるライトな内容。私もSATCを観るような軽い気持ちでBGMがてらエピソードを進めました。

SATCを受け継いで恋愛あり友情ありのミレニアル世代版SATCを想定していたのですが、SATCのような友情や恋愛よりはエミリーの仕事とインフルエンサー業にスポットが当たっています。

その点でSATCよりも、出版社の編集部を舞台にした『プラダを着た悪魔」が重なりました。若い女性が年も経験も重ねた女性上司に振り回されながら仕事をしていくという設定が同じ。

『プラダを着た悪魔』ではアン・ハサウェイ演じるアンドレアはアシスタントですが、『エミリー、パリへ行く』ではエミリーはマーケティング修士を持ち、勤務するアメリカのマーケティング企業が買収したフランスマーケティングファームへ派遣されるキャリアウーマン。エミリーは入社3-5年の設定かと思っていたら、リリー・コリンズの実年齢が31歳とのことで、エミリーもアラサー想定かもしれません。

仕事でぶつかる2つの悩み

私自身『プラダを着た悪魔』も『エミリー、パリへ行く』もどちらも近しい仕事を経験してきました。そのため観ていて目がいくのは、ミンディとの軽妙なやりとりやカミーユの色っぽさやガブリエルの色男ぶりよりも、エミリーの仕事ぶり。

アラサー、特に社会人10年目にさしかかる30代前半は、ある程度の知識と経験を持ち、任される仕事の量や質も徐々に増えて行く頃。もっと早く遠くへ行きたい気持ちと、若手として上司のもとで学びたい気持ちと、両方を有する時期です。後輩だけでなく部下を持つこともある一方、上司がいて上司の上司がいて上司の上司の上司がいて、先輩もいて同僚もいる、そんな状況が多いのでは。若手と中堅の狭間で、おいしいとこどりもできるし板挟みにもなるしややこしいことに巻き込まれがちなのもこの時期。

エミリーを取り巻くあれこれに共感すると同時に、反射的に「自分はこうだったなあ」「自分だったらこうしちゃうなあ……」の視点になっていたら、仕事での悩みの根本は新卒時からほとんど変わっていないことに気づきました。

仕事で感じる課題、新卒でも中間管理職でも大手でもベンチャーでも日系でも外資でも、だいたい行き着くのはこの2つでした。

・メンタル弱すぎ(人の言葉尻や表情など些細な事に勝手に傷つくし逡巡するし主張できないし考えすぎるし人に働きかける時は躊躇と遠慮と謝罪ばかりだし発言も発信も完璧を目指してスピード落ちがちだし……と自分のできなさを常に感じ悩み落ち込んでいる状態)
・上司(組織)が無理ゲー

特にメンタルが最重要課題。とにかく豆腐メンタルならぬしゃぼん玉メンタルで、メールの語尾とか「え?」って聞き返されるトーンとか目線とか沈黙とかオブラートとか直球とか忖度とか、あらゆる人間の反応に過敏に反応し勝手に逡巡し勝手に萎縮。上司や同僚によく言われるワードTop 3が「考えすぎ」「優しすぎ」「何をこわがっているの?」だったことからも過敏すぎる怯え方だとわかります。ここまで来ると世界に怯えていると言っても過言ではない。

最強エミリーには到底なれるはずがない?

だからエミリーがひたすらに眩しく映りました。

上司の嫌味にめげず、同僚のからかいに屈せず、クライアントの圧力に意見を述べるーそんな風には到底なれないからです。

「エミリーが嫌味なく主張できるのはかわいくて自己肯定感があるしメンタル強いからだよなあ、自分には無理だなあ」と思いました。

もちろんドラマの話ではあるけれど、すくなくともあの脚本を書いた人はエミリーのようなメンタルを持っている、ないしは実在する様子を経験しているから書けるのだと思います。私自身もエミリーのように傷つくことを恐れずに(恐れているとしてもそれを見せずに)主張できる人も見てきました。

だからこそ、自分にはない“才能”なのだとあきらめてきたのです。もし20代でエミリーを見ていたら、「エミリーは住む世界がちがう人だから」で終わりにしていただろうと思います。

でも今回は、「何がエミリーとしゃぼん玉メンタルとを分けるのか?」を考えてみました。

そして、メンタルが弱くてもエミリーになれる方法があると思えました。なんとメンタルは関係なかった。そしてそれは、だれでもできる方法でした。

エミリーの行動を観察してみた

ここからはエミリーの言動を引用します。英語の方がよりエミリーっぽさがリアルに表せるので英語字幕にて。

メンタルが弱く自責思考が強い人(私)だったらどう対応したか、を想像して、「メンタル弱子の回路」として対比で挙げてみました。

第1話:パリでの出社初日、代表への自己紹介にて

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「きみはアメリカ人のトリックをフランス人に教えに来たんだろ?」という皮肉に対して「お互いにいろいろと学べると思います。」と返し、「でも君はファッションやラグジュアリーブランドの経験はないんだよねえ。」には「ないです。医薬品や医療施設のプロモーションをやってきました。」と事実を返します。

メンタル弱子の回路)「トリックだなんてそんな……明らかに歓迎してないじゃん……」と内心思いながら曖昧に笑って流す。「そうですね、ファッションもラグジュアリーブランドも経験ないですね……戦力になれなくてすみません……」と小さくなる。

第1話:初出勤終了後の彼への電話

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当初赴任する予定だったフランス語が堪能なマデリンの代わりに自分が赴任し冷たく扱われたことを彼に話す時、「これが私なんだってわかってもらうには少し時間がかかったけど、ここで戦力になれると思うのよね。」と。これまでやってきたことを自分で認めているから出る言葉です。

メンタル弱子の回路)「マデリンじゃないからがっかりされちゃって……初日からなんだか肩身が狭くてここでやっていく自信がなくなっちゃった……。」

第2話:自分から飛び込んで上司にアピール

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「歓迎されれていないようなのはわかっているけれど、デュレのマーケティングについてアイデアがあるんです。」と臆せず切り出し、「パリに来る前にマーケティングプランを見たのですが、弱いです。」と単刀直入に申し、「外側から見る意味を理解しています。あなたが決して持ち得ない視点が私にはあります。なぜなら私はイケてるわけでもないしフランス人でもない、あなたのように見せる術も知らない。だけど私はその商品を欲しがる消費者なんです。そしてあなたはちがう、あなたはすでに持っていてどうやって手に入れたかすら知らないから。」とまで語ります。

ここまで主張できます?赴任早々、いくら意気込んでいるとはいえ。

メンタル弱子の回路)このプランいまいちっぽいなあと思ってもまずは様子を伺う。時間が経ってから「このプランってどういう経緯でこうなったんですか……?」と遠回しに聞いてみる。

第2話:パーティーでの一幕

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「なぜパリへ?」の質問に「マーケティング的にアメリカの視点を活かせたらと思って。」と即答。役割の理解が素晴らしい。腹落ちしていないと答えられないし、そもそも初対面の人に上司の前で堂々と言えるのがすごい。

メンタル弱子の回路)「あ、そうですね……一応むこうでもマーケっぽいことはしていて、それで今回予定していた人が来られなくなったので急遽来ることになって……」としどろもどろになりながら答えにならない答えを言って激しく後悔する。

第2話:パーティーでの会話をたしなめられて

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パーティーで仕事について聞かれたから答えたのに、上司に「何考えてるの?パーティーでは仕事の話はしないの。テレカンじゃないんだから。」と言われる。一瞬顔をしかめるも、アメリカンカルチャーとの違いを知っただけで「私ったらなんてばかなの」とは責めない。

メンタル弱子の回路)「あーやってしまった……そうだよね、パーティーで長々と自分の話しちゃって……何やってるんだろうもう帰りたい……」

第2話:クライアントのきわどい発言に

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香水ブランドの調香師オーナーが「香水は人に自信を与えよりセクシーにより幸せにしてくれる。マッチすれば媚薬にもなる。」ときわどい発言をしても「マーケティングの材料として覚えておきます。ユーザー体験が鍵ですから。」と相手を立てつつ一線を引く。

メンタル弱子の回路)「え、なんか変な方向に進んでる……」と焦り、うまく返せない自分にへこむ。

第3話:上司へのアピールその2

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クライアントのCMについて意見を述べた時「私はそういう考え方はしないの。すごくアメリカ風だわ。」と上司にばっさり言われるも、「だから私がいるんです。アメリカの視点を取り入れるために。」と述べる。ブレない。

メンタル弱子の回路)「やっぱり向こうでのやり方は必要とされないのか……そうだよね……あーなんのために来たんだろう……」

第3話:上司へ歩み寄り

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剛でだめなら柔でと言わんばかりに上司をディナーへ誘うエミリー。日にちを言う前から断られてもめげずに「まだ関係ができていないってわかっています。でも私を知ってもらえれば変わると思うんです。」と伝え、「べつに知りたくないわ。」と返されても「あらそう、なぜです?」と聞く。この強さよ。

メンタル弱子の回路)日にちを言う前に断られた時点で「あーもうこうなるって予想できたのになんでまたトライしてみたりしたんだろう……結局こうなるんじゃん……」と自己嫌悪。

第4話:上司に食い下がる

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上司に話しかけたら「まずノックでしょ。」と言われノックからやり直したら「Busy.」と言われるもめげずに「コスメのクライアントっていないですよね。」と切り出し、「素晴らしい観察力だこと。」と嫌味を言われても「以前はいました?」と聞き、「別のクライアントのアイデアを期待しているわ。」と返されるも粘って「もちろん、ですがコスメの話に戻っても?」と食い下がる。さすがすぎる。

メンタル弱子の回路)百歩譲って「コスメのクライアントいないですよね?」までは切り出したとしても、話をはぐらかされた時点で「やっぱり聞いてもだめか……そうだよね私なんて(以下同)」のループへ。

?話:クライアントディナーを無事に終えて

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上司にめずらしく「今日ぐらいはよくやったと言わないとね。」と言われた時も「Thank you.」ではなく「一緒に勝ちたいんです。」と。

メンタル弱子の回路)認められたとしても「いえいえいえいえいえいえ私なんて何もできてませんから」か「まだまだバリュー出せておらずすみません……」となる。

第5話:エミリーがインスタで契約していないクライアントのPR投稿を無料で掲載したことをとがめられるシーン

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「あなたはインフルエンサーかもしれないけど私たちは企業の価値を下げたりしないわ。」と言われ「仲間じゃないですか。」と共通認識をつくろうと試み、エミリーの無償PRをクライアントが見たらどう思うかを問われた時は「ではどうしたら?」と素直に聞く。自分の役割の活かし方を誤った時に、それを認めて次のアクションを考えられている。

メンタル弱子の回路)「あーそこまで考えられてなかった……本当に頭がまわらないなあ……もう投稿するのはやめようリスク大きいし……」と、ひとつの事象を抽象化して肥大化させる。

第5話:クライアントがエミリーのアイデアを気に入ったという連絡が入ったことを上司がエミリーに伝えるシーン

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インスタアカウントを閉じなさいと言われるも最後の投稿がアイデアにつながったと聞いたエミリー、これでアカウントクローズは避けられるとわかったうえで「では私のアカウントはどうすれば?」と上司に聞くと「インフルエンサーだと認めざるをえないわね。あなたの勝ちよ。ただしクライアントに限るけど。」と言われ、すかさず「だから味方なんですって!」と返す。勝利を勝ち取った顔がかわいい。

メンタル弱子の回路)「あのう……それで私のアカウントは継続してもよろしいでしょうか……?」とおずおずと切り出し、嫌味っぽく返されても「継続OKにしていただいてありがとうございます」と下手に出る。

第6話:激怒させたクライアントを翻意できたと伝える上司に

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クライアントの怒りを無事おさめたとはいえ「どうしてこうなったかわからないし知りたくもない。ただし控えめに。」と頑なにエミリーを褒めない上司にもう慣れたのか、茶目っ気たっぷりに「ではお互いにそれぞれのやり方でいきましょう。」と返すエミリー。認めてもらったけどそこに勝敗をつけないスマートさ。

メンタル弱子の回路)とりあえずひと段落ついたと安堵し「はい、さようで」と最小限の受け答えだけしてすぐその場を離れる。それぞれのやり方があるということを理解し合い尊重し合いたいのに、それを主張することができない。

第7話:アクシデントにより気まずくなった上司との翌朝の会話

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「申し訳ないとは思いますが、昨夜のことは謝るつもりはありません。」と切り出し、「ご自分が今何をしているかご存知です?止めてるんです。あなたがフリーになってから考えてたんですけど、今週ガールズトリップしません?当初の予定だと予算オーバーですけど、ディズニーランドあたりなら。」と上司を誘う。上司に「出て行きなさい。」と一喝されても想定内だったようで「はーい、私も行くつもりなかったですし。」と華麗に返答。気まずくなりそうでも上司を避けず、あえて対峙してお互いに水に流す方法、見事すぎる。

メンタル弱子の回路)「あー気まずいな〜〜憂鬱だな〜〜顔会わせたくないしこれからどうしよう……どうせ嫌われてるし」

胆力がある、の一言で片付けられるのか?

エミリーの一連の言動を観て最初に浮かんだ感想は「エミリーは胆力がすごい」でした。

「エミリーの切り返しすごいなあ」と思うと同時に、「自分だったらここでひたすら謝ってその後勝手に萎縮して数日落ち込み続けるわあ」とか「自分が仕事できないから悪いんだ」とか「何もかも本当にだめだなあパリにいる資格ない」とか思うだろうなあと自分に置き換えては悲しくなり。似たような仕事の経験があるから余計に、過去の自分がよぎります。「正しいと信じてやっていても主張できなかったなあ」とか「できる限り上司と関わらないで済むようにしていつもびくびくしてたなあ」とか、当時の心境を追体験して苦く複雑な思いに。

でもこのエミリーの言動は、本当に胆力ゆえなのだろうか?

胆力を辞書で調べると「物事を恐れたり気おくれしたりしない気力。度胸。」とあります。エミリーのこの強さ、気力や度胸の一言で片付けてよいのだろうか? ここで胆力に注目してしまうと、「私にはそんな強い精神力はない、以上」で終わってしまいます。

仕事で泣いたあの日、それは本当に自分が無能だったからなのでしょうか?
あの時足りなかったのは、何を言われてもへこたれない強靭なメンタル?
メンタルさえ強ければ乗り越えられるのだろうか?

そして謎は解けた

ここで、あるnoteがとつぜん思い出されました。今年の夏にTwitterでスタートアップ界隈を中心に多くメンションされていたこちらのnoteです。

このnoteはDeNA南場さんの講演を文字起こししたものです。マネジメントの難しさはモチベーションの源泉が違うことだとしたうえで、ではどのようにチームをまとめていくかというと「チームで共通の目的を達成したときの高揚感」で牽引していくと決めたと述べられています。

この高揚感が多く彩り豊かな人生にするためにどうすればよいのかという問いに、「人や自分に向かわずに、コトに向かう」ことだとしています。

コトに向かうとはどういうことか、上記noteより引用すると……

自分がオーナーシップをもって取り組んだ仕事、そして掲げた目標、何かチームで共通の目的を達成したときの高揚感、これで牽引していこうと決めた。これがたくさんある人生にしたいし、会社にしたい。この喜びや高揚感で組織をまとめていくには、人や自分に向かわずに、コトに向かう。誰についていくとか、誰に評価されるとか、あるいは自分ができる、できない、もう少し成長していかないといけないのではないか。そういうことに意識を向けるんではなくて、純粋なチームの目標や自分の目標に向かって、それに本当に集中してみる。

夏にこのnoteを読んだ時は「うん、わかる。とてもわかる。でもコトに向かうのは大命題。でもコトに向かっても結局、その命題を理解している人同士じゃない限り、部署ごとの利害とか“何を言うかじゃなくて誰が言うか”とかなめられるとかそういう次元になってしまうじゃないか。」と思ったことを思い出しました。

今回エミリーを見て、「コトに向かう」をチームマネジメントにではなく自分の姿勢にあてはめられるな、と浮かんできました。

エミリーに感じていた“胆力”は、メンタルの強さという固有の資質に由来するものではなく、「コトに向かう」その姿勢の徹底なのではないだろうか。

エミリーは自分のミッション(使命)を定めていることが、節々のセリフからわかります。期待される役割を理解し、ミッションを自分なりに定めているのだと表れている象徴的なシーンがこちら。

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「フランスとアメリカのマーケティングはぜんぜん違うのよ。」と言われ、「That's very American.」と嫌味を言われても「That's literally why I'm here to bring an American point of view.(だから私がここにいるんです。アメリカの視点を活かすために。)」と返し、

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「You're more like the prude police.(礼儀知らずの警察みたいね。)」と嫌味を返されても「I'm just trying to imagine a social campaign that doesn't seem tone-deaf to the cultural moment.(私はただ、文化的な側面を見て見ぬふりをしないソーシャルキャンペーンを想像してみただけです。)」と答えます。

上司に強い口調で嫌味を言われたら、違うと思ってもまず勢いに圧倒されてたじたじしてしまい、思ったことの10分の1も言えなくなるのがしゃぼん玉メンタルあるある。

エミリーがこうして堂々と瞬時に自分の考えを表明できる言語化力をうらやましいなと思う反面、それができるのはミッションの理解が根底にあるからでは、と感じました。

使命を果たすことを目的と呼ぶとすると、目的をあらゆる行動の基準とすることが“コトに向かう”と形容されるのではないだろうか。

エミリーのセリフには、「each other」「together」「We're on the same side.」というワードが頻出します。これらのワードには、この”コトに向かう”を体現していることが表れています。南場さんが言うところの「喜びや高揚感が組織をまとめる」を本能的にわかっているともとれる。

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ここまで目的意識とチーム意識を持つエミリーを観て、改めて我が身を振り返ってみます。

自分がここでどんな役割を担っているか、その目的は何なのか、常にそこを意識してやってきたはず。でも、意思決定の重みが増すほど、責任が常にのしかかることを自覚するほど、目的は同じはずなのに「We're on the same side.」が通じないことに愕然とし、コトだけに向かえなくなっていました。

コトに向かうための事前の下準備(人はそれを根回しと言う)の労力ばかりが増えたり、ベストを目指すはずがヤるかヤられるのトレードオフになったり。

そんなことが続くとコトに向かえず、自分のどこが問題なのか、どこを改めれば前に進むのかと内省に向かっていきます。あるいは「このプロダクト(モノ)がイケてないから伸びないんだ」と、モノに原因を求めたり。

責任感が強いほど自分を見る目が厳しく、自責思考に陥りがち。でもすべての原因を自分に求めることも正しくありません。特にビジネスは複雑なので、全て自分が原因であるわけがないからです(自分が悪だと断定できるほど単純な構造ではない、という意味)。それなのに自分を責め続けることは、客観的に事実をとらえられていない表れ。

エミリーを見ていて、まずやるべきことは自分を責める前に目的やミッションに立ち返ることだとハッとしました。事実と感情を分け、現実を正しく認知することはすべての基本であり、それを推進するのが「コトに向かう」という軸なんだな、と腹落ち。

泣く前にコトを思い出す

全体最適だとか全方位調和だとか、ついついうまくやろういい人でいようという欲を出してしまうし、90%はそこそこ良いのに10%の失敗にくよくよするし、メンタルが弱いと些末な事にとらわれがち。鈍感力やスルースキルが身に着けばもっと楽になるだろうけど、長年持ち合わせていないものが明日身に着くかというとそうもいきません。

だから泣く前に、「自分は何を成すために今ここにいるのか」を思い出すことにしよう。ミッションを思い出し、ミッションを判断基準にしよう。

キュートでクレバーなエミリーに、そんな基本に立ち返らせてもらったのでした。

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