レストランレポート「DepTH Brianza デプス ブリアンツァ」
2024年8月25日、東京・麻布台にあるイタリアンレストラン「DepTH Brianza デプスブリアンツァ」に伺いました。
麻布台ヒルズのレジデンスA棟内に立地しているこちらのレストランは、入り口にたどり着くまでのサインなどが少なく、まるで隠れ家のようなレストランです。
1. 店舗情報
こちらのレストランを手掛けているのは、オーナーシェフである奥野義幸氏。
和歌山の割烹料亭を営む家庭で育ち、米国の大学を卒業後、2年間の会社員を経て、都内のイタリア料理店で働いたのちに渡伊。
現地での様々な経験から、イタリアンの枠を超えた月替わりのコースを展開し、コースをいただいたあとは世界旅行に行ったような感覚を味わるという新しいテイストのイノベーティブ・イタリアンです。
2. 到着時の印象
到着時には、奥野シェフと長年の信頼関係を持つ千葉ソムリエが豊かな笑顔で迎え入れてくれました。
そのほか、キッチンには料理人が2名と、サービスの方が1名で、実家に帰ってきたかのような、初めて伺ったのにあたたかい気持ちになる、そんなおもてなしでした。
ちなみに、麻布台ヒルズ内にはサインが少なく、思ったよりも到着まで時間がかかってしまったので、初めて伺う場合は少し余裕をもって向かわれることをオススメします。
3. 店内の雰囲気
店内に入ると、品が良くこじんまりとした隠れ家的なレストランの趣に期待大!
2名掛けのテーブルが6つ並んだ、12席だけのプライベートレストランで、8名以上で貸し切りも可能とのこと。
壁に大きく飾られているのは水墨作家の立川 瑛一朗さんが描かれた黒トリュフの水彩画。
見れば見るほど引き込まれるような不思議な魅力を放っている圧倒的な迫力を持つその作品の手前の席に案内いただき、絵を見上げながらお料理を楽しむことができました。
4. コース紹介
本日いただいたのは、【Dinner Course】コース。全12品から成る一番人気のディナーコースで、一品ずつのボリュームが控えめで、先付からはじまり、食後の飲み物までゆっくりと楽しめる大人のコース。
メニューにはそれぞれの食材が書かれているのみで、どんなお料理に出会えるのか期待が膨らみます。
シャンパーニュ NV シモン・ドゥヴォー ブリュット
酸が美しいシャンパーニュからディナーがスタート。複雑な香りに包まれ、お料理へのワクワクがさらに増しました。
パッションフルーツ、穴子、胡瓜
パッションフルーツのエスプーマはアロマティックでその下に隠された食材の食感も楽しく、穴子と胡瓜はクリスピーな食感でアペリティフに最高のマリアージュでした。
《やま幸》鮪赤身、グリーンピース
鮪問屋である《やま幸》から仕入れられている逸品の鮪の赤身。
この日はアイルランド産の旨味が詰まった味わい。
大きくスライスされた鮪は2切れ提供されており、お店の方のおススメの食べ方は、1切目はそのまま鮪の旨味を味わい、2切目は、サラダと一緒に包んで手で食べてください、とのこと。
鮎の魚醬やソーテルヌを合わせたオリジナルソースがかかったブーケのような装いのサラダには、大葉・パイナップル・サンチュ・トマト・グリーンピースのファラフェルなどが重なり、口中でたくさんの味わいが交差することで、大変興味深いテイストでした。
冬瓜、キャビア
ふぐの卵巣の粕漬、揚げた冬瓜にブールブランソース
京都のお酢を使ったソースにイタリア産キャビア
なんだかもう味わいの渋滞のようなお料理でした。食感がおもしろく、あたたかいキャビアは初めてでした。
加水率100%のフォカッチャ
驚くほど柔らかいフォカッチャはまさかの加水率が100%!
ずっとこれだけ食べていたほど、瑞々しくおいしいフォカッチャで、今までに食べたことのない食感に、フォカッチャの概念が変わりました。
鱧、豆乳、生青海苔
滋賀の濃度13%の豆乳を使った卵のブランの下には、生青海苔とウニ、いももちの唐揚げ、生アーモンド。茶碗蒸しのようなテイストでお出汁が効いた、やさしい味わいのお料理でした。
羊、米
メニューだけではぜったいに想像できない(笑)能登産コシヒカリを使った米粉麺と羊をやわらかく煮込んだコンソメベースのスープ。
羊の濃厚さがスープに染み出た、シンプルだけど味わい深い逸品でした。
オレンジワイン スリー クヴェヴリ テラスズ ルカツィテリ No.6 2022
この日いただいたのは、クミンなどスパイスの香り、薔薇、スモモなどのニュアンスを感じられるジョージアのオレンジワイン。
今でこそ「オレンジワイン」という呼び方がスタンダードになりつつありますが、数年前までは「アンバーワイン」という呼称がスタンダードでした。羊のスープにも、次の鰹にも最高のマリアージュです。
ブレザオラ、マナガツオ
すき焼きをイメージしたというこちらの逸品は、淡路島産マナガツオのフリットに、近江牛の7か月熟成の亀の子ブレザオラを飾ったお料理。
ソースにはヴァンジョーヌや、貝出汁をつかった複雑で甘じょっぱい味わいでした。
フォアグラ、ジロール
フランス産のジロール茸に、おなじくフランス産フォアグラとブラウンバターで濃厚なムースのようなテイスト。この日の一番のお気に入りでした。
黒トリュフ、胸腺肉
近江牛の強制肉、しいたけ、ヴァレ・ダオスタ産フォンティーナチーズのエスプーマに、オーストラリア・メルボルン産の黒トリュフをこれでもかと厚みのあるスライスで施した逸品。
間違いなくおいしい、絶品でした。
スイカ
どんな「スイカ」が提供されるのかドキドキワクワクなメニュー。
正解は、スイカのジェラートに、バジルと昆布のオイルがアクセントになったお口直し。
バジルはもちろん、昆布の存在感をしっかりと感じら、絶妙なバランスに脱帽です。
赤ワイン 2021年 クロ ド ラ ロワレット フルーリー キュヴェ タルティヴ
ここで合わせたのが、フランス・ブルゴーニュのガメイ。
普段だとピノ・ノワールを選びがちですが「このガメイはほんとうにおいしいガメイなので」と、ソムリエさんの推しをいただき、セレクト。
味わってみて、大正解。
ガメイはボジョレーヌーボーで使用される品種のため、早飲みのチャーミングな表情を持つワインが多い中、こちらの赤ワインは非常にコクと奥深さがあり、このあとの熟成牛とのマリアージュがとても楽しみなワインでした。
ガメイの概念が変わるかも、と思わされた味わいの深さがありました。
熟成牛
ヒノキのチップでいぶした近江牛は、牛の甘みをしっかりと感じられる濃厚なお味ながらも、脂身がしつこくないためにさっぱりといただけ、ホースラディッシュ(西洋わさび)のピクルスや、イタリアンパセリとパッションフルーツのチミチュリのソースで、味変を楽しみながらいただくことができました。
〆
まさかの〆は、やっと定番のイタリアン(笑)
ソムリエさんも「ようやくここで定番のボロネーゼをお持ちしましたよ」とのこと。
先ほどメインでいただいた熟成牛を使ったボロネーゼは濃厚で、パスタにソースがみっちりと絡み、本当においしかったです。
桃、米焼酎
こちらも全く想像できなかったデザートで、シェフの発想は尊敬に値します。
通常はラム酒で仕上げるイタリアのデザート「ババ」をまさかの、サヴァランと焼酎で仕上げ、アールグレイのアイスパウダーをトッピングした逸品。最後まで驚きと楽しみにあふれたコース料理でした。
5. まとめ
DepTH Brianzaでは全体的に「出汁」を大切しているお料理の印象が強かったです。イノベーティブ・イタリアンというジャンルを大切に表現されており、和食のようなテイストの中にイタリアをはじめ、他国の料理のニュアンスが隠れているような、一皿一皿に驚きや新しい発見があり、大変興味深かったです。
また、合わせてくださるワインもこだわって選ばれていることが伝わってくるラインナップで、ソムリエの方の知識も豊富で、お話を伺っていてとても楽しい時間を過ごすことができました。
席数も控えめで、ホッとするような内装のため、数年年月をともにしたパートナーとゆっくりした食事を楽しみたいときの記念日や、年に数度のの特別なディナーに利用したい隠れ家的な、ちょっと内緒にしておきたい、そんなレストランです。
6. 店舗情報
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