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スカートをひるがえして

 昔から勢いをつけて部屋を片付けたいというか、物を捨てたい時にいつも聞いているCDがある。それはDanceDanceRevolutionのサウンドトラックだ。前置きが長くなったが、私とDanceDanceRevolution(DDR)について、少し語ろうと思う。
 
 私が高校生の頃、比較的スパルタな部活に所属はしていたものの、やる気のない部員であった。絶対に参加しなければいけない日以外はしばしば練習をサボって、主に高校から歩いて3分のカラオケ屋に行っていた。もしくは100円セールの日にミスドでだべっていた。部室から校門前が見えるので、サボって帰るのはかなりドキドキであった。
 
 いつも通り部活をサボって帰ろうとしたその日、いつもと違ったメンツだったからか、徒歩10分の大型ゲームセンターに誘われた。ちなみに私はゲームセンターに行ってもやることがない。UFOキャッチャーもしないし、格ゲーの類もしないし、メダルゲームもしない。ただただ可愛いぬいぐるみたちがケースに詰め込まれているのをぼーっとみていた。
 
 そこで出会ったのがDDR、DanceDanceRevolutionだった。遊んでいたメンバーや服装から、ゲームが開始して直後1998年の秋だったと思う。既にクラスメイトの男子はこのゲームにはまっていて踊りこなしていた。私は運動神経は全くないが、エレクトーンを10年近く習っていたこともあり、このゲームならプレイできるのではないかと100円を投入した。
 
 結果は惨敗だった。当時一番簡単なはずのHave You Never Been Mellowですら全く歯が立たなかったのだ。それから私と、その日同じく初プレイだった同じく部活をサボっていた親友(同じくちょっとした音楽の素養のあった子である)はすっかり悔しくなってしまい、それからゲーセン通いの日々が始まった。
 
 筐体の風貌や踊ってプレイという目新しさもあって、DDRはゲーセン内で注目、というか奇異の目で見られていたように思う。そして私の高校の制服もちょっと地域の中では特徴的な制服だったので、「制服のJKがなんか踊っている」というのは目立っていたようだ。また、今のようにガチ勢もおらず、曲数も多くなかったのでそれほどプレイの上手さに差がなかった。

 入っている曲を一通りクリアできるようになったころから、私たちは20代くらいの風貌の女性に誘われるようになった。「一緒に踊りませんか?」と。一人ではない。複数の方から頻繁に話しかけられるようになった。このゲームは2人プレイの場合、1プレイヤーでもクリアすれば次の曲に進めるので、練習曲を抱えている人はクリアできる人に一緒に踊ってもらうのが一番安全にプレイできるのである。おそらく女性の新規プレイヤーさんにとって自分より年下であろう制服を着た女子高生は話しかけやすかったのだと思う。
 
 「今宵はワタクシと一緒に踊りましょ」
 脳内にZARDの名曲が流れる。
 
 気分は3曲クリアに向けてエスコートする王子である。時にはステップの確認なんかをしながら3曲を踊り通した。
 
 その後、筐体は2ndMIX,3rdMIXとバージョンアップを重ね、曲を増やしていくうちに新規層に声を掛けられることもなくなっていった。おそらくゲームプレイ層が定まってきたのだろう。結局4thMIXまでプレイはしていたが、「踏みっぱ」と呼ばれる矢印が到達している間中踏み続けなければいけない音符が追加された時についていけなくなってしまい、このゲームから離れてしまった。

それでもあの頃踊った曲は私の青春を彩るものであり、曲によっては足が勝手にステップを踏むような曲もある。(それだけ100円玉を投入し続けたのだろう。)自然と身体が動くことを利用して、テキパキとしなければいけない掃除中の定番曲になった。ノンストップミックスも発売されていたので、一息つく暇もなくひたすら踊…違った、片付けができた。

 リリースから20年以上経ったが、今でも断捨離の勝負曲として聞き続けている。ある意味一番聴いた回数の多い曲になっているかもしれない。
 
 

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