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今日もギャン泣きで登園した子の親御さんへ

 保育園2年目。誕生月が早めなので、1歳クラスではあるが既に2歳になっている。新しいクラスになって2カ月たったというのに未だに毎朝ギャン泣きだ。

 0歳児クラスに入園した当初もそこそこ泣いてはいたけど、すぐに慣れたというのに、保育園が代わったわけでもないのに、どうして1歳児クラスに行きたくないのか。

 ……薄々わかっている。
 0歳児クラスは隔離された部屋だったが、1歳児クラスの部屋は早朝時間帯、全クラスの園児の集合場所になっている。0歳児は3人登園した時点で0歳児教室へ移動したが、2歳クラス以上の園児は朝8時を超えたあたりから点呼を取ってそれから各クラスへ分かれていくので、登園してから30分くらいは全クラス混合の状態だ。おそらく、その全クラス混合の時間が怖いのだろう。
 単純にイヤイヤ期突入なのかもしれない。そもそも南向きの0歳児クラスの教室に対し、1歳児クラスの教室は西向きの窓で明るさも違う。
 
 毎朝がミッションである。朝ごはんを準備したら、寝室に忍び込み、寝ているまま服を着替えさせる。靴下まで履かせる。寝かせたまま抱っこでリビングに連れて行く。テレビをつける。「お母さんといっしょ」というか「おかあさんの相棒」Eテレの録画だ。ここでそっと起こす。本人はテレビを見ているところ、一口ずつ口にご飯を放り込む。朝の食事はいつも一緒、一口サイズのおにぎりと輪切りにしたウィンナー、そして茹でたブロッコリーときゅうりだ。食べられるところまで食べさせる。ブンバボンボンボ!ブンバ・ボーン!ノリノリの頃を見計らって急いで自分も着替える。先に着替えると野菜につけたマヨネーズの返り血を浴びるのでこのタイミングでないと着替えられない。

 私の服装を見て何かを察した息子がギャン泣きする。ここからは無慈悲タイムだ。泣き叫び暴れる息子を無理やり抱きかかえて自分のかばんと息子の靴を持つ。3歳児クラスまでは子ども用の鞄不要な園だ。ありがたい。靴など履かせるわけがない。泣き始めたら地面に置いた瞬間逃亡するから。
 
 当時スマートロックがあれば良かったと思う。片手で息子をホールドしたまま家の鍵をカバンから取り出してかけるのは至難の業だ。次に息子が着陸する場所は自転車の子ども用座席。そろそろ後ろに乗せたいと思い後ろに座席をつけたが、景色が悪いと後ろ座席は拒否、まだ前座席にしか乗らない。前座席は若干窮屈になっていて、足置きに足を乗せても少し余裕がある。のけぞる。のけぞる。のけぞる。シートベルトを着ける間もずっとギャン泣きだ。
 
 ギャン泣きのまま自転車を発信させる。サラリーマンがいぶかしげにこっちを見てくる。見るな。こっちは必死なんだ。早起きのおばあちゃまがまるで私が虐待しているかのように睨みつけてくる。髪の毛をむしられ、叩かれ、虐待されてるのはこっちなんだと叫びたい。
 
 保育園に到着する、靴を履いていないので地面に下ろすことはできない。保育園の開錠キーを取り出すのも難しい。内側から通りすがった先生が開錠してくれた。朝履いた試しのない靴を靴箱にしまう、そのまま教室へダッシュだ。まだ上の学年がいて教室はにぎやかだ。でもそれよりも息子の鳴き声はでかい。
 
 今日はベテランパートの先生がいてくれる日だ。この先生はサバサバしていて話が早い。「はいはい、預かるからお母さん行っていいよ」と言ってくれる。説明不要だ。息子のギャン泣きは最高潮に達するが、こちらの遅刻カウントダウンも始まっている。ありがたく出勤させてもらう。

 服を着る練習?そんなの夜でいい。自分で食べる練習?夕食で頑張るわ。とにかく毎日保育園に連れて行くことだけでいっぱいいっぱいだ。


……これが5年前、離婚問題が勃発する直前、最も辛かった6月の朝である。いつ泣かずに登園出来るようになったかも記憶にない。もしかすると、実家に連れ帰られた秋までずっとこの生活だったのかもしれない。

5年経って笑える話になったが、子育ての問題課題は尽きることがなさそうだ。あの時は確かに辛かったし、今渦中の方にも心からエールを送りたい。



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