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ボランティアは無報酬ではない

別の回で、家事が就労であることを書いたが、
この記事は、その逆の話である。

頑張って希望通りの高校に入学できた私は、
中学時代と同じように、音楽系の部活に入部した。

この部活は簡単に言うと『軽音部』のようなものだ。
部員同士でバンドなり、グループなり、ソロもありだが、
練習をして、文化祭と、各学期末のテスト後にあるライブで披露するのが、
1年の流れだった。

バンドの練習は学校ではなく、自治体が運営している小さなホールを貸してもらっていた。
公立高校だったため、ホールの利用がない日は無償で貸してもらえたのだ。

何度となく練習に通っていると、ホールの責任者の方に声をかけられた。

「今度、ここでボランティア活動を始めるんだけど、高校生のみんな、もし良かったら参加してもらえないかな」

内容を聞くと、
『小学生や中学生など、いろいろな事情で不登校になった子供達を支援するため、一緒に遊ぶことを通じて、家から出る楽しさを伝えていきたい、
最終目標はここで一緒に遊ぶことで、友達ができたり、
また学校に行く勇気をもってもらいたい、いずれは復学してもらいたい』
そのためのボランティア活動のことだった。

私は、中学時代にいじめを受けた経験もあったので、
もしかしたら何か役に立てるかもしれないと思ったのと、
今まで経験したことがない活動に興味が湧き、参加を即答した。

同じように何名かが参加を承諾し、活動が始まった。

最初のうちは、何をどうしたらいいのか、全く分からなかったし、
ただでさえ心を閉ざしている子供達への接し方も難しく、
毎回、活動の後で反省会をした。

活動を始めて半年くらい経った頃だろうか、
私たちの活動を見に行きたい、
高校生のお姉さん達と一緒に遊びたい、と何度も来場してくれることが、
家から出るきっかけとなり、少しずつ復学に繋がり始めた。

親御さん達から「ここなら安心して来られるみたいで」とか、
「こないだ学校に行きました」とか、
「●●ちゃんと□□ちゃんが仲良くなったらしい」など、
状況を聞けるのは、嬉しかったし、
何回も来てくれる子が増えてきて、やりがいを感じていた。

そして、結果が出てくるにつれ、
このボランティア活動の広報活動も始まった。
地元のテレビやラジオ、行政の会報誌などのインタビューなど、
季節ごとに取材を受けた。

ボランティア活動の広報と一緒に、
部活でやっているライブの告知もしてもらえるとのことで、
テレビ出演した後のライブは、たくさんの方が観に来てくれた。

おかげさまで、私の高校生活は、
昼間は学校に通い、放課後は部活と広報活動、夜は予備校 or 家事で晩ご飯を作る、土日はボランティア活動…

疲れ果てて学校をサボったこともたくさんあったけれど笑
あの頃の私の体力はどうなっていたのだろうと思うほど、
本当に忙しい3年間を過ごした。

自宅で家事をした時はお小遣いをもらってコツコツ貯めていたが、
そういえば、その一部はボランティアの日のお昼ご飯にも使っていた。

ボランティア活動はもちろん無報酬だ。
むしろ出費の方が多い。
お金での見返りはなかったが、
「友達ができた」とか「学校に行った」などの結果が
私にとっては、報酬だったと思う。

中には、私たちのところに通ってくれても
学校に行けないままの子もいたけれど、
一度でも、私たちに会いに来てくれたことは、
何かしらの影響を与えていると信じている。

お金を稼ぐことと同時に、
お金ではない純粋無垢な何かを得ることの意味を
同時に教えてもらった3年間は、
今となっては、人生で最高の3年間だったと思っている。

いつかまた、そんな時間を過ごせたらいいなと思いながら
社会人を続けているけれど、
社会人の忙しさは高校生のそれとは比にならないし、
純粋無垢な、そのような縁に出会えることがなく、
難しさを感じている。
今また、このようなボランティア活動ができたなら、
高校生の時とは違う感覚を覚えるのだろうと予想している。

サポートされるとモチベーションが上がります。