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春の日に

社会人6年目の春を迎えようとしている。

入社してから丸5年経つと思うと恐ろしいが、私はこの春初めて部署異動をする。
異動といっても大きくはいまと同じ部門内にいるし、仕事の内容も想像つくところはある。
これからお世話になる先輩方もよく知っている方たちばかりなので、あまり不安はない。
でも、そう思えるのも、いまの部署で鍛えていただいたおかげだと思う。

鍛えられた、と言えるほど何か大きなことを成し遂げたわけではないと思う。
世の中にはもっと難しくて厳しい仕事が沢山あるし、きっと優秀だった大学の同級生たちはそれぞれビジネスの最前線で、もっと凄いことを成し遂げているのだろう。
それでも、私はこの5年で自分にかなり自信がついた。
それは、なにか高度なスキルよりももっと、尊くて得難い収穫ではないかと思う。

学校の勉強は比較的得意だったので、子どもの頃から優等生扱いをされることが多かったような気がする。
それでも、私はいつもどこか自分に自信がなかった。
いわゆる問題児ではないけれど、かといって特筆すべき魅力もない。高校・大学と進むにつれて、そんな自分自身の“何者でもなさ”や“冴えない姿”に辟易とすることが増えた。自分が人見知りだと気付いたのもこの頃だ。
自分なりにがむしゃらにいろんなことに取り組んでみても、誰かの焼き直しだったり、なんとなくやり過ごしてしまっていたりして、何にどんなふうに力を入れたら良いのか、あるいは何なら自然と頑張れるのか、なんだかよくわからなかった。

そんな状態で迎えた新卒の就職活動、上手くいくはずがなかった。
就活で重要なのは“自分を売り込むこと”だと思うが、私は当時そのことを全く理解できていなかったと思う。何せ自分という商品の価値を全く理解できていなかったので、何度面接を受けても、リクルーターと話をしても、殆ど振り向いてもらえなかった。
自分なりに業界研究は頑張っていたと思うけれど、自分の価値はどんなに自己分析しても上手く腹落ちする答えを見つけられずにいた。
とにかくそれらしいことを書き連ねて、想定問答を暗記して、それではだめだと思いつつも、結局そんな戦法で戦うしかなかった。

いまの会社は、そんな私にとても真っ直ぐ向き合ってくれた。
珍しく4回も面接があり正直辛かったが笑、それだけ何度も話を聞いた上で、私に来てほしいと内定を出してくれた。

正直地味で、風土も建物も古い会社だし、特に2〜3年目の頃は本当に何度も辞めようと思った。(実際、同じ部署の同期はみんな辞めてしまった…)
それでもなんとか踏ん張って続けているうちに、だんだんと、上司から求められることを上手く汲み取れるようになっていった。もっとこうしたほうが良いのではないか、と思うことが上司の意思ともちょうど噛み合い、仕事を自分で形にすることが楽しくなっていった。
そして、本当に人に恵まれたと思う。特に最後のこの一年は、上司はもちろん、頼りになる先輩方、頼もしくなっていく後輩たち、全員を信頼できるとても良いチームだった。
人が足りずやたらと仕事量は多かったのでしんどい思いも沢山したけれど、私にはとても居心地が良く、今まででいちばん活き活きとしながら仕事ができたのではないかと思う。

改めて、客観的に見るとたいした仕事はしていないと思う。でも、自分と仕事がかちっとはまる感覚はとても気持ち良くて、自分に自信をくれるこの仕事を、そして自分のことを、前よりも好きになれた気がした。
それは、自分を認められなかった私にとってはとても大きなことで、“たいしたこと”だ。

新しい部署で担当する仕事はまだ分からない。
きっとこれまでとは全く違うことに頭を悩ませて、苦しい思いもすると思う。
けれど、これまでとは全く違う観点や考え方に出逢えるのでは思うとわくわくする。

次の春も、自分を好きなまま迎えられるように。
焦らず少しずつ、がんばりたい。

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