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僕、生き残りの宇宙人

昔、火星には、密かな文明があった。だが、子孫を地球に送りこんだあと、巨大な隕石が落ちて、滅びてしまった。

「宇宙人対策?」
小学5年生の翔は言った。
「ああ。宇宙人が近くにいたら、音がなって、コンパスの針がそっちを向くんだ。」
仲良しのクラスメート、晶が答えた。
「ちょっと見せて」
「いいよ。はい。」
晶から機械を受け取った途端・・・

ビビビビビ!

「ええっ!」
すっとんきょうな声をあげて、二人でびっくりした。
「お、お前、宇宙人だったのかよ!?」
「違う!絶対、違う!」
「このコンパスは、間違えないんだぞ!」
涙が出そうになって、翔は走って家に帰った。

「お母さん、ひどくない?!晶が、僕のこと、宇宙人っていうんだ!」
それを聞いた途端、お母さんの顔が引きつった。
母「宇宙人コンパス・・・。それって、どんな見た目だった?」
姉「こんなのよ!」
突然、お姉ちゃんが帰ってきた。そして、翔が帰り道で見た物の写真を、突き出してきた。
翔「そうそれ!」
母「・・・!」
姉「お、お母さん?」
翔「大丈夫?」
母「ええ、大丈夫よ。」
弟「ばぶう」
母「あら、そうちゃん。じゃ、わたしは,聡太の子守りしとくから。」

夕飯の時、食卓に、家族7人が勢揃いした。
うちは、父の楼太郎、母の伊代、高3の兄の悟、中2の姉の登奈美、小6の翔、年長の妹の聖奈、一歳の弟の聡太の7人家族だ。

父「今日は、5人に話したいことがある。」
母「今日、翔が、宇宙人コンパスに反応したらしいの。」
父「そこで、もう、真実を教えようと思う。」
母が、どこからともなく巻物を取り出した。その巻物の紙は、この地球で見た紙とは、違った。

母「重要文書」
母「『昔、火星には、密かな文明があった。だが、子孫を地球に送り込んだ後、巨大な隕石が落ちて、滅びてしまった。しかし、地球に送り込まれた仲間達は、密かに子孫を残した。火星人は、今でも地球に生きている。この書を読んでいるお前は、火星人の生き残りだ。』」
姉「嘘でしょ、お母さん。」
母「嘘じゃないわ。証拠に、お父さんの瞳が光っているでしょ。」
楼太郎の瞳は、正しいことを言っているときには、淡く光るのだ。
翔「マジで?」
妹「あたち、うちゅうじん・・・?」
母「ええそうよ。聖ちゃんは、宇宙人よ。」
父「そしてこっちが、我が家に代々伝わる石だよ。」
楼太郎が石にそっと手をかざす。
その途端、天井に字が映る。
父「自分が宇宙人だと子どものうちに気づいてしまうと、魔法が解けてしまう。」
弟「まほう?」
兄「そうだよ魔法だって・・・ん?」
姉「そ、聡太が」
全員「しゃべったーっ!」

父「初めて喋った言葉が『まほう』とは・・・」
母「念のため録音しといてよかったわ。」

翔「で、魔法ってなに?」
母「それが、分かんないのよねえ。」
姉「わかるような雰囲気だったのに…」

次の日。翔は、夏風邪をひいてしまった。
翔は、嫌な気分になっていたものの、学校を休めて嬉しいとも思った。
今日学校にいったら、みんなにからかわれるに違いない。

タチの悪い風邪で、来週の土曜日になって、やっと治った。
顔を洗おうと、鏡を見て、ギョッとした。


頭に、宇宙人のツノが生えていたのだ。
土日の間、治そうと努力したが、結局、月曜は、その頭で登校することになった。

登校中はニット帽で凌いでいたが、ついに外す時が来た。

全員の目が僕に集まる。

それからというもの、僕はいじめられまくった。晶とだって、話さなくなった。
先生は「なぜか分からないようです」と話してくれた。
でも本当は、分かっている。原因は、ぼくにかけられていた人間の姿になる魔法が、解けてしまったことだ。
ある日、いつものように一人で帰っていると、怪しい男が出て来て、ぼくをはがいじめにした。そして、鼻に布を押しつけた。その匂いを嗅いだ途端、ぼくは寝てしまった。
気がつくと、そこは、どこかの研究所だった。
「起きたね、宇宙人君」
よく見ると、僕は檻の中だった。
僕は理解した。かもしれない。
僕をここに閉じ込めたのは、目の前にいる博士で、僕を、解剖するか何かして、宇宙人について研究する気なんだ。
背筋がゾワっとした、その時だった。

パリーン!

窓ガラスを割って、誰かが入ってきた。
博士を倒し、鍵を奪い、僕を助けてくれたのは、他でもない、晶だった。
「あ、晶‥‥」

それから、晶と翔は一生の親友になった。


おしまい!

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