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“明日”を迎えるたびに、時間とお金の価値は減っていく

「今ここで踏ん張っておけば、あとでラクになるぞー」

って、いつから言われてるんだかわからないけど、我々の心身に染み付いている考え方な気がする。

巷で人気の「FIRE」なんて最たる例で、あれはシンプルに言えば、「若いうちに資産形成に全力を注いで、アーリーリタイアして悠々自適に暮らす」ライフスタイルだけど、その「全力を注いでいる時間」のことにはあまり触れられていない。

本当は行きたいはずの遊びの誘いを断り、仕事を中心にすることで、実は「今やりたいこと」を先送りにしているという事実が無視されているのである。

わたしの友だちに毎晩飲み歩いている子がいるのだが、「そのうちみんなのライフステージが変わったら、今みたいに遊んでもらえなくなるから、遊びたいときに遊ぶんだ!」と言っていた。

彼女は「今」を生きている。そして彼女は貯金がない。

わたしも最近まで貯金がほとんどなくて、社会人初期のころは「早く給料日よ、来い!」と願うほど、極限までお金を使うタイプだった。

母に「貯金しなさいよ!」とはよく言われていたが、わたしは「今欲しいものは今買わなくちゃ意味がない」と思っていたので、欲しいものはぜーんぶ手に入れた。我慢しなかった。

今もその想いは変わらず、シンプルに収入が上がったのと、欲しいものが少なくなったことで支出が減り、いつの間にか多少の貯金っぽいものができただけである。

この、「今買わなくちゃ意味がない」とか、「今体験しなくちゃダメだ」という考えは、昔からずっと一貫して持ちつづけているものだ。

わたしは気持ちこそ「永遠の17歳」で超絶若いが、時が経つにつれて、いつか体力がなくなっていくであろうことは何となく知っている。

年始に父方のおばあちゃんと旅行に行ったが、あまり遠いところに行きたがらないので家から車で20分のところに旅行をした。足の悪いおばあちゃんは、あまりたくさんは歩けないので、最近は家に引きこもって過ごしている。

それでも、もともとおばあちゃんはたくさん旅に出ていた人だった。日本国内はもちろん、海外ツアーによく出かけ、いろんな国を訪れていた。だから逆に、「もう行き尽くした感」があるのかもしれない。

でも、これがもしも全然旅に出かけていなかったらどうなんだろう。「もっと、若いうちに行っておけばよかったな」と思うんだろうか。

わたしが1番恐れているのは、この「もっと、こうしておけばよかったな」が降り積もっていくことだ。

そして、すべてにおいて、やるなら早いに越したことはない。

わたしは2019年に会社を辞めて、長年の夢だった声優を目指すために、結構な金額のお金を注ぎ込んでダブルスクールをし、厳しい指導を受けてぺーぺーながらも声優となり、いくつかお仕事をさせてもらったが、今思えばあれは「あのときにやっておいてよかった」案件である。

当時ですら「ちょっと始めるのが遅かったかなぁ」と思っていたのに、今取り組むとしたらもう、めちゃくちゃ腰が重くていけない。

同じスクールに通っていた子たちとは今も仲が良いのだが、その子たちは夢は叶わなかったものの、「あのとき、思い切って申し込んでよかった」と口々に言う。

もし、わたしがスクールに通う決断を下さなかったら、今もちょっとずつ後悔を募らせながら日々を過ごしていたと思う。

スクールの年間授業料は33万円ほどだった。決して安くはない。でも、それだけの価値があったと思っている。

最近、2冊の本を読んで、そんな自分の考え方が、間違っていなかったのだと確信した。

この本では、ほとんどの人が死ぬまでに金をすべて使いきれていないという事実を指摘し、自分にとっての幸せや価値となる経験に惜しまず金を使え! というメッセージを発信している。

わたしたちはお金に振り回されている。でも、金(仕事)のために人生を犠牲にするってバカらしい。「仕事が終わらないから、楽しみにしていた旅行に行けない」って、うっかり聞き流しそうになるけど、冷静にヤバい。どう考えても旅行のほうが大事じゃねぇか。本書はそれに気づかせてくれる。

そのなかで、わたしがハッとしたのは、「金から楽しみを引き出す能力が、年齢とともに下がっていく」という一文だ。

やはり、お金は早く使うに越したことがない。自分が必要だと思うことを見極めて、惜しまずに使っていこうと思った。

この本では、「時間は限られているのだから、やりたいことが全部できるわけないやろ。本当にやりたいことを見極めて、そうでもないことは思い切って先延ばしにしてしまえ!」というなかなか斬新なことを言っている。

「やりたいことを全部やるのは諦めろ」と言い放っているのだ。

最近のわたしたちと言えば、タイムパフォーマンスばかりを気にして、「時短」でできることを考え、「読書している時間がもったいない」と要約YouTubeを観て知った気になろうとする。

本書によると、「読書には時間がかかる」という事実を受け入れたくないから人は本が読めないらしい。

要は、「やりたいことを全部やるには、それなりの時間がかかるのだから、全部やろうとするな、自分にとって大事なことだけをやれ」と言っている。読書には時間がかかることを受け入れて、それでも読みたいのなら読めばいいのである。

また、お金のことにも言及している。『DIE WITH ZERO』とまったく同じ思想だ。やはりお金と時間は切っても切り離せないのだと思う。

そのうち「将来」はなくなってしまうのに、「将来」のために備え続けることに何の意味があるんだろう?

限りある時間の使い方

今、わたしはバリ島とタイに2週間滞在している。こちらの時間はゆったり穏やかに流れていて、仕事をしながらではあるけれど、「今ここに来られて幸せだなぁ」と噛み締めた。

行きたい場所には今行く。食べたいものは今食べる。やりたいことは今やる。普通のことに感じられるけど、それがどんなに尊くて難しくてすばらしいことか。

たまに、「本当にフリーランスでよかったのかなぁ」と思うことがある。安定して働いている友人の様子や、昇給の報告をSNSで見るたびに、もう少し会社で揉まれたほうが良かったんじゃないかって。

でも、「やりたいことを先送りせずにやれている」ことと比べたら、安定なんてどうでもいいや、と思えるほどに、わたしは今をのびのびと生きている。

誰もに等しく時間が流れているのなら、わたしはその時間を最大化したい。どうせお金を使いきれないのなら、できるだけ使ってしまいたい。そういうふうに生きていきたい。

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