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性格の悪いお話


3年前、新社会人になった春、数ヶ月で私が変わった。
みたことのなかった世界を、みた。





ふとした瞬間、気道が狭くなる。
ふわふわと目眩もする。
私の周りだけ、酸素が薄い。
すぐに、呼吸が止まった。
吸えない、吐けない、声も出ない。
やっと呼吸ができた時には過呼吸だ。


誰もいない、私しかいない部屋。
形のない恐怖という物体が押し寄せてくる。
角に逃げても逃げきれなくて、私は怯えて、震えて、泣き喚く。
この泣き喚いてる私は誰なんだと思いながら。


家族と食卓を囲んでも、私は独りだけ、透明の小さなボックスに入れられている。
そのまま、深く深く、暗い水の底に沈んでいくような。
夜中になるにつれ、そのボックスは消えた。
みんなの「おやすみ」は、永遠の「さよなら」に聞こえる。
朝が来れば、今の私はもういないから。






いろんな症状が出た。
正直、原因だった(たった2ヶ月しか働いていない)会社を辞めて、終わったと思ってた。ふつうに戻ったと思ってた。
でもすぐにそれは帰ってきて、今日まで、回復と、悪化を、繰り返している。
新しい知らない世界を、次々にみせられる。
健康がどれだけ幸せなことだったかを思い知った。
前までは、そんな健康なふつうの人が羨ましかったけど、もう思わない。
この世界を知った人と知らない人では、全く違う、別次元の生き物だと思うから。

だからね、同じ次元の人と出会った時、嬉しいと思う。相手の不幸を、喜んでしまう。
あなたもこっち側の人間なんだねって。
けれど、相手の症状が私よりもうんと軽かったとき、嫌気がさす。嫉妬する。
軽いならよかったと、どちらかと言えば喜ぶ場面なんだろうな。
なんだ、その程度か。
いいな、それくらいしか辛くなくて、と思う。

羨ましいなと思う。

私の性格、いつからこんなに悪くなったんだよ。

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