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長い(取説的な)序文

ハロー・ワールド。 ハロー・フューチャー。 

 未来人か宇宙人の方々、この文字を読めていますか?
 僕の言葉の意味、分かりますか?
 きっとエグい翻訳アプリなんかを皆さんはお持ちになられていて、僕が何を書いて何を言わんとしているか、おそらく理解されていると思うので、続ける事にします。

 今は西暦2020年4月4日。
 グリニッジ標準時11時36分(日本標準時20時36分)となります。
 ここは日本列島四国にある、徳島県名西郡神山町神領字本野間54の旧製茶工場を改装した事務所(33°58'00.9"N 134°20'57.3"E)です。
 取り急ぎではありますが、今の状況を以下に書き記させて頂きます。

 今、世間は、いや世界は、100年に一度と云う大騒ぎになっています。
 新型コロナウイルス(COVID-19)の急激な蔓延によって、ロンドン、パリ、ベルリン、マドリッド、ミラノ、北京、ニューヨーク等世界中の都市がSFのようにロックダウンされて街から人の姿が消え、矢継ぎ早に感染が拡大し、毎日数百人、数千人と云う人々がバタバタ死んでしまっています。正確には、今日の時点で世界で感染者112万人、死者5・9万人に及んでいます。人工呼吸器が足らない為、65歳以上の人々が若い人間に人生を譲るために自死を選択する等の悲劇的事態に陥っています。

 ちなみに日本国全体だと、感染者4072人/死者89人(敢えてクルーズ船を含む数字にしています)で、他国に比べ著しく数字は低いのですが、これはこの国が医療崩壊を恐れるあまりPCR検査を徹底させないため、正確な数字が出ていないだけだと思われています(感染/非感染が分からないのと明確なルールがないのとで、感染者が病院に普通に行き、病院全体が感染してしまう事例がいくつも報道されております)。東京もおそらく一週間前のニューヨークに迫るレベルで市中感染してしまっていると見受けられますが、いかんせん一斉検査がないので全容がつかめません。なぜなのでしょう。玄関で靴を脱ぐのがいいとか、海苔を食べているのよかったとか、花粉症でマスクユーザーが多いのが怪我の功名的に功を奏したとか、核家族化とセックスレスなのが効いたとか色々言われておりますが、この先どうなるのか皆目分かりません。いずれにせよこれは歴史が証明してくれる事でしょう。(先日、志村けんという偉大なコメディアンを私達は喪いました。ご興味がおありで、かつまだYoutubeが存在しているならば、「変なおじさん」でググってください。)


 現在、なにせ人間が諸活動を禁じられている訳ですから、経済は金融911時を超える程の大ダメージを受け、失業者も続出しています。人々は家に籠もって固唾を嚥み、ミヤネ屋でも見るしかないのです。
 いやはやこんなことって、去年末までの我々の標準的な世界観ではありえない事でした。モンゴルかどこかの砂漠では5つに割れた太陽が観察され、マヤ暦が文明の終焉を告げ、韓国では新興宗教団体から集団感染化し、ローマの聖職者たちが次々に昇天していく。まったく「アポカリプスなう」と言いたい心境であります。世界中で人種差別やウイルス罹患者差別が続発しているようです。ヒロイックな医師や看護師達の勇姿や、医療従事者らを拍手で迎えようとする人々の感動的な輪が出来たりもしていますが、なにせホモ・サピエンスという種の最も醜い部分が露出してしまっているように私めには思えるのです。そして、今の世界の中心的システムである自由主義型民主主義のあり方を、根本から変えなくてはならないとも現時点で思っています。何か、とても歪であるというか、人類はとてつもなく駄目になってしまったような印象があるのです。(いや、既に駄目だったのかもしれません)


 なんというか、僕らはもっと「未来人」らしく、もう少し文化的・情緒的に進化しているものとばかり思っていました。なんてったって今は、高名な漫画家の手塚治虫が、きらびやかなメトロポリスの中で空飛ぶ自動車みたいなものが周囲を席巻してる筈だと夢想していた21世紀であります。たしかにテレビ電話はもうあるし、グーグルはあらゆるもの網羅して容易にしたし、スマホはほぼみんなが持ってるし、写真の画素数は1億万画素を越え、映像は4Kか8K12Kとかいうレベルになった。美空ひばりの声をAIで再現し、Kindleで本が自在に読め、音楽を何万曲でも眼前に呼び出すこともできる。千円たらずで何千本の映画を手元で鑑賞することもできます。3Dプリンターなんかもありますし、ユニクロに赴けば無人レジで商品を置くだけで買い物ができるし、アマゾンはこんな僻地の山奥にでさえ、注文翌日に商品と届けてくれます。凄い便利にはなりました。そろそろ無人カーも登場するであろうし、3Dプリントされた安価な家等も普及するようになるでしょう。 

 ですけども、ウイルスというものが蔓延しているにもかかわらず、人々がこれほどオリンピックの開催を死守しようと奔走するとは思えませんでした(結局一年延期が発表されたのですが)、そしてよもやトイレットペーパーの買い貯めに走りだすとは、想像出来ませんでした。これは自分の思考を遥かに越えていました。トイレットペーパー、もうまどろっこしいのでトイペと書かせてもらいますが、トイペの買い貯めっていうのはこれまで、懐古VTRの中で流される、遥か昔のオイルショック時の事ぐらいの認識でした。ましてトイペの製造も流通もストップしたわけでもなく、通常通り国民が糞尿&フキフキできる能力が担保されたままなのに、です。他にも商店にはどこもマスクがありません。マスクがないと一堂に白眼視されるにもかかわらずです。一昨日、国が一世帯に二枚づつ、コットンマスクを送ってくれると発表しました。「ふざけている」とその辺のお婆ちゃんですら憤っています。徳島と愛媛で、感染者が嫌がらせにあい、引っ越しを余儀なくされたなんていう居たたまれない噂も聴きました。なんでしょう、もうこれは教科書で習った関東大震災時の「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んでいる」という流言に従い、彼らを虐殺した愚かな人々のようではありませんか。この事務所がある町にもここ数日、花見客の姿が絶えません。皆たかを括っているのです。徳島では2〜3の発症例しかないからと、おそらく泰然自若と構えて日常を謳歌しているのです。が、ここから悲劇的な出来事が繰り広げられることでしょう。すみません、こんな事は未来に生きる皆さん達は既に知悉されている情報であるという事を忘れていました。ですがこの際書いてしまうのをお許し願いたいのですが、今の僕らはこれからやってくるであろう事態に怯えながら、皆一喜一憂しております。僕には二人の子供がいるのですが、彼らを小学校と保育園とに行かせられません。春休みが終われば、自宅待機が解禁されてしまうようですが、今の所行かせる気にはなれません。何を信じていいのやら、あらゆる物事が錯綜しており五里霧中なのです。すみません、いささか愚痴のようになってしまいました。

自己紹介

次に本文書を書き残すにあたって、まず自己紹介と目的を簡潔に記す事にします。
 
 名前:長岡参(マイル)です。姓は本名、名は芸名です。
 性別︰男。41歳。A型。ヘテロセクシャル。山羊座。未年生まれ。現在本厄中。慢性的な首痛、腰痛がコリとともにあります。致命的な病気には罹患していませんが、痛風持ちです。それと肛門周囲膿瘍の手術経験があります。麻酔等に対するアレルギーは特にありませんが、猫アレルギー(回復済み)、微量のイノシシ肉アレルギーがあります。下戸です。
 性格︰以前は随分と怒りっぽい性質がありましたが、子供ができて幾分改善が見られました。正式に診断された訳ではありませんが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の気があると見受けられます。
 家族構成︰妻(45歳/愛媛県松山市出身)長男(8歳)、長女(5歳)
 趣味︰特にありませんが、読書でしょうか。それと漢字(古代文字)が好きです。サッカーを人並みに愛好していました。鹿島サポです。
 特技︰この齢になるともうよく分かりませんが、身近な人々のモノマネをよくしました。それと、小学生時に赤穂浪士47人中、30名以上は諳んじられました。それと指パッチンを両手で行うことが出来ます。
 職業:所謂「映像作家」というものをやっております。平たくいえば「自営業」です。もうすぐ株式会社を知人と一緒に登記し、開始させる事になっています(それもこの社会情勢ではどうなることやらという感じですが)。Wikipediaには僕の項目はありませんので(2020年3月現在)、一般的に申せば所謂「無名の作家」というヤツであります。
 去年頃からそれまで順調だった仕事にはじめて陰りが見えて参りました。
 一昨年の冬に念願叶って初めての長編自主映画を製作できる事になり実際製作したのですが、編集にものすごく悩みまして、仕上げるのに一年間もかかってしまいました。そしてその間他の食い扶持となる仕事を受注できなかったことで、色々な進行が狂い、収入がかなり減りました。また「自主」でありますので、資金回収する事なども見込めません。独立して本格的に映像業に取り組み出してから9年になるのですが、それまで殆どなかったスランプというものに、お初な感じでなりまして、これまでテキパキと右から左に片付けられた仕事に一々悩んじゃうようになりまして、税金や年金等の色々の支払が遅れたり、それで友人だと思っていた方から拒絶されたり等色々と大変でした。なんというか、これまで最低限の機材で自力のみで対象にぐいぐいと迫っていく事が、唯一無二の自分の持ち味だった筈なのですが、5年ほど前に一念発起してエグい業務用ビデオカメラを買いまして、そこからなんといいますか、重厚な、詩情豊かな、ドーンとしたような映像にシフトしていくようになったのですね。スローモーションなんか使っちゃったりしまして。思い返せばそれが自分というもののアイデンティティに悩むきっかけだったと思います。確実に、撮影自体も、画作りもうまくはなりました。そりゃもう、以前とは雲泥の差です。編集も、流行りの「神ってる」という感覚で仕上げられる時もありますし、クライアントや鑑賞者達から称賛されることも、少なからずごじます。ですが、悩みが尽きぬのです。むしろ増大しました。というか、その「悩む」という行為自体、妻には「成長したんだよ」と言われもします。この辺りがまだよく自分には飲込めていません。

本文書の目的

上述しましたように、現在新型コロナウイルスが蔓延しておりまして、ほぼほぼの強制的自宅待機というものを余儀なくされており、まずもって暇なのです。今日の僕の行動を記しますと、自宅付近の畑で近所のオバちゃんと一緒に子供たちとワラビを採ったり、高枝切り鋏(初めて使用)でタラの芽を採ったりしまして、うららかな春の素晴らしき山ぐらしを満喫!とうそぶきたいところではありますが、なんというか暇なのです。夕方になり、自宅から車で10分の距離にある仕事場に来て仕事をしようと身構えるのですが、結局コロナ関係情報をTwitterで眺めたり、スマホゲームのツムツムやトゥーンブラストなんかに嵩じてしまったり、Netflixで新着エピソードを観てしまったり、前述の志村けんの在りし日のコントなどをサーフィンしてしまったりと、まあこういう体たらく下における「暇潰し」として、未来の、いや(首相の口癖を真似るならば)言わばですね、言わば宇宙の皆様に向けて、この非常にとるにならない、小さな小さなどこまでも極小なワタクシというものを発信しようと考えました。

不幸にして余り良いミテクレと、素敵な弁舌能力を有してはおらず(声は良いとよく言われるのですが)Youtuberなる新分野に挑むには、いささかハンディがあるようです。ですので、一応印刷すればモノとしては残る文字ベースで何かを記そうと思ったと云う訳です。そして更にですね、私めもつい先日まで喫煙者(一昨日アイコスを買うのを辞めました)でありましたし、言わば感染して死に至る可能性が少なからずあり、妻子に向けた遺書のようなものを書く必要性に迫られてもいるのかもしれません。肺や脳がやられて無用の長物になる可能性だってあります。例えば幾多のサービスへのIDやパス、マイナンバー、免許証、実印や通帳、権利書、住宅ローン関係書類等々の情報はそれはそれでまとめておけばいいのですが、なんというかいわばですね、いやいわばというか岩場の陰というか、それ意外の部分に於いて、自分にあるのは、書き散らかした数十冊のノートや、SNSでの投稿、あとは仕事で作った映像と数本の売れない映画ぐらいしか残っていない訳なんであります。これはちょっとですね、宇宙開闢からの時間に比すればミジンコ程のサイズもない生涯ではありますけども、少しだけ悲しいかなと。もう少しは足掻いてもいいんじゃないかと。まあそんな想いをもって筆を執る代わりにキーボードに向かっている訳です。暇に乗じて先日来、初めて処女小説に挑戦し、完成させたりもしました。なんか書くという行為が楽しくなってきたんですね。諦めが悪いと申しますか、「自分の才能」という獏とした曖昧模糊としたものをやはりこんな境遇になっても信じてみたいという宿痾のなせるわざなのでしょうか。まあ上記を要約すれば、「暇潰し&遺書(悪あがき)」ということでしょう。


 という訳でして、導入部の意気込みにあったような未来(宇宙)の方々への伝言的なものは早くも殆どどうでもよくなって参りました。もうこれは、詰まりは自分のための、あっいわば、自分の、自分による、自分ための文書なのです。おそらく自分が生まれてからこの方の話を切々と書いていくと思います。私が如何に駄目なヤツであるのかと云うのをマゾヒスティックに晒したい気もあります。そしてですね、それとともに、こんな駄目なヤツでも、これまで幾多の方々のお世話になり、そして皆様にご迷惑をおかけしまくり、幾人かの素敵な女性たちに股も開いて頂きもし、生まれ故郷から今居る徳島県の山間部に移住する際に少しだけ魔法のように素敵な時間を過ごし、奇跡とも云える事象に遭遇もしてきました。そんな事々を中心に、完全ドキュメンタリーでは角が立ちますんで、少しだけ脚色と編集とを施しまして、開陳&書き記したいなと、そう思う次第であります。よって不可避的に、私めの死亡とともに本文書はストップする予定です。申し訳ないのですが、どこで終わってしまうかが現段階では分からないところでして、一々簡潔しないままになってしまったらば申し訳ないです。万一この文書がとてもおもしろくなってしまって、皆様が嵌ってしまったりして、「なんだよここで終わりかよ」なんて事になってしまったとしたら大変心外遺憾であり心苦しいのでありますが、繰り返しにはなりますがこれは殆ど「自分のため」のものとなりますので、その辺りはご理解ご容赦頂ければと存じます。皆様がこれを開封なさるのは、だいぶだいぶ先のことでしょう。詰まらないものではありますが、2020年当時の凡庸なる現生人類一個体の♂の些末な記録(いや、正しくは赤裸々な記録風の創作物)であります。そう、笑って優しい目で高覧賜りますよう、謹んでお願い申し上げまして、拙いものにはなりましたが、この前置きを締めくくらせて頂きます。長文失礼致しました。 


  花冷えする夜の神山の仕事場にて   通風亭落花生こと 長岡参 拝

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