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資金繰り管理のポイント⑥(商社)

資金繰り管理のポイントシリーズの6回目は「商社」にフォーカスして書いてみたいと思います。

一般的に商社は販売者と購買者の間に立って商品を売買します。購買者の要望に応じて販売元と調整し適切な時期に適切な量を供給することが商社の重要な役割の一つです。

商社では迅速に商品を供給できるよう、ある程度在庫を保有するのが通常です。したがって、販売の機会が少ない商品を大量に仕入れてしまい不良在庫を抱えることや、逆に需要が多いにもかかわらず在庫が少なく販売の機会を逃してしまうなど、在庫に関するリスクが大きいことが商社の特徴と言えます。

具体的なイメージとして、例えば自動車部品の商社である場合、自動車を製造しているメーカーに商品を供給することになります。当然、自動車メーカーでも一定の在庫は保有していますが、自社で大量に抱えることはできないため(しないため)、都度発注をして部品を調達することとなります。
部品の商社では発注を受けて都度供給することになりますが、実際には単純なことではなく、自動車メーカーのフォーキャストをもとにどのような時期にどの程度供給が必要かを把握し、部品をあらかじめ調達して適切に供給できるよう部品を在庫として保有します。

このように、商社ではあらかじめ調達して在庫として保有するためのまとまった資金が必要となることから、借入を行うことも少なくありません。比較的短期的に在庫が回転するため借入も短期間で繰り返すことも多く、その点では資金繰りの管理について他の業種よりも注意を払う必要があるといえます。

以上を踏まえて、資金繰り管理のポイントを整理すると下記のような項目になります。

・安定した供給のために多数の在庫を保有する必要がある
・多品種の商品を取り扱うため、必然的に在庫数も多くなる
・先行して仕入れるため借入をしているケースが多い
・取扱商品の需給状況を把握し短期的な借入を繰り返す場合がある
・多数の営業担当者を抱えており、人件費が固定費の大半を占める
・貿易をしている場合は外貨建ての取引が多くなる

仕入れた商品の代金を支払えるだけの資金を調達すること、そして調達した資金の返済時期までに販売をして代金を回収していること、が資金繰りの管理において特に意識すべきこととなります。

そして、不良在庫を抱えることは資金繰りを圧迫する要因となります。当然ですが、在庫を抱えた瞬間に会社からお金は流出しています。その在庫の商品を販売して初めて仕入れた商品の代金も回収することになりますから、在庫に眠っている商品が多ければ多いほど、会社から流出したままの金額は大きくなり、やがて会社の資金が枯渇してしまうことにつながります。

このことから、商社では販売の見込みを適切に予測しいかに無駄な在庫を抱えないようにするか、という点が最も重要であり最も難しいところであるといえます。

また営業担当者を中心として人件費の割合が高くなるため、この人件費を日々の販売から得た利益で賄わなうことも考慮に入れた資金繰りの検討が必要となってくるでしょう。

以上が、「商社」にフォーカスした資金繰り管理のポイントでした。「在庫管理の大切さ」という点ではどの業種でも重要性は変わらないと思いますのでみなさんの参考になれば幸いです。

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