幕末の知られざるヒーロー隻腕の伊庭八「幕末遊撃隊」
「幕末遊撃隊」は私が今まで読んできた
歴史小説で「燃えよ剣」と同じくらい再読して
いる作品です
舞台は幕末、江戸でも指折りの剣術道場の跡取
伊庭八郎が主役の物語です
なぜnoteに書くのか、ウケそうもないのに
伊庭八が格好良いから知ってほしいから!
それだけです
池波先生の作品は「鬼平犯科帳」も大好きです
中村吉右衛門版は神ですし、先日映画公開の
松本幸四郎版も映画館で観賞しました
アニメ「鬼平」も何度も見返しています
鬼平の話は別の機会に
では小説の中の伊庭八の魅力を3つに分けて紹介致します
①男っ振りが良い
冒頭から吉原通いの描写から始まりますが
遊びに行く事に「私心がない」事が描かれて
います
おれは、お前が好きだから通って来るのだ。
お前のいいときに、お前の心がすむように、
おれのところへ来てくれればいい
世のキャバクラやらコンカフェやらで、やれ
指名や推しが席を離れると文句言ったり
ヘルプにドリンクも出さない野暮天に
爪の垢を煎じて飲ませたいです
私はこの姿を見習って何でもないように
「行ってらっしゃい」と笑顔で見送ります
別の場面でも生涯連れ添う事になる「鳥八十」
の板前、鎌吉との出会いに描かれています
酔客が店の女中に見るに耐えない、いたずら
をしかけたところ、隣の座敷の八郎が事も
なげに痛めつけます
すぐに助けられた女中と女将が挨拶に
出向くと
ぎょうぎょくしくするな。
江戸のものは大げさなことが大嫌いだよ
と、手を振って、むしろ気はずかしげに
うつ向いて箸を動かしたそうな、その事を
聞いて鎌吉は男惚れして生涯付き添う事に
なります
そうそう、私もぎょうぎょくしい見送り
なんかは恥ずかしがるべきだ、と未だに
真似ています
江戸っ子でもないのに
控えめというか奥ゆかしさが作品内で
男も女も惚れる良い男として描かれています
あとは素直に言葉にできるところも好きです
鎌吉に対しても
おれはねえ、お前がいるから来るのさ
と、さらっと言います
たまに伊庭さんの格好良さを思い出すためにも
昨日、読み返して今日書いています
②剣の腕は超一流
これは剣客を主役にしていますから、当然
ですね
作品中では十六歳までは本の虫でしたが
自らが病に犯されていることに気付き、
学問の道では短い人生では大成することは
できないと剣の道へ進む設定になっています
おれが剣術にうちこむようになったのはなあ、鎌吉
剣術なら、ごく短い間に、何とか役に、たつことも
あろうかと思ったからだ
そう周囲には病を隠しつつ、晩年、鎌吉に
語っています
そこから猛稽古に励み剣の腕を磨き
今なお、私のようなファンを魅了しています
③一本筋の通った男
後年、伊庭八は徳川慶喜の大政奉還後、幕臣
として薩摩長州を筆頭とした政府軍と戦います
武器の装備など誰がみても勝ち目の無い戦の中
でも自らの信念を決して曲げません
まあ、いいさ。徳川にも、勝さんのようなのと、
おれたちのようなのとがいて、それでいいのだ
江戸城を受け渡した勝海舟を罵倒する仲間に
向かって言いました
ある場面では伊庭八たちを止めようと山岡鉄舟
が陣を訪れた時、論戦の末、最後に言いました
ただ微衷をつくすのみです
時代の流れ?知った事か、ただ己の忠義に
殉じる、そんな男がいたっていいじゃないか
と云わんばかりです
晩年は片腕を失い、そこから「隻腕の伊庭八」
という異名になり、錦絵などにも描かれて
人気だったそうです
世話になった尺振八との会話でも、もう戦う
必要は無いのではないかという言葉に返します
私はねえ、薩長の奴らばかりが日本人だということに
なったら、困ると思いますよ。徳川三百年の治政の是非は
ともあれ、ともかく慶喜公は、戦争をふせごうとされ、
みずから、すべてを投げ出されたので。このことを
後の世にまで、わかってもらいたいと、私は思いますねえ
このまま、じいっと頭を下げて、官軍のいうなりに
なってしまえば、奴らのしたことの全部の全部が、
正しいことになってしまいますからねえ
自らの命より、今の時代を活きる者として
後世に新政府が全て正しかった訳ではない
と抗った証を遺す事に重きを置いた伊庭八
筋を曲げない、とはこういう事なんだろうと
三十年前の私も心に刻んだと思います
義理と人情、私もそれを胸に残りの人生折り返し生きて行こうと、いつも思わせてくれるところが魅力です
とはいえ、創作の部分も大きいと云われて
いますので全てが現実ではないと分かって
います
分かっていますが、カッケーんだ!
伊庭さんが!!
もし歴史小説、幕末がお好きな方で未読な方
がいらっしゃいましたら、心からオススメ
したい作品です
…さて趣味語り、最後までお読み頂いた方が
いらっしゃるか心配ではございますが
今日はこの辺りで幕引きです
お読み頂けましたら、心より御礼申し上げます
ありがとうございました
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