見出し画像

味覚形成の黄金期(離乳期〜幼児期)の努力は、100%報われるか?

こんにちは。
株式会社MiLでthe kindest(カインデスト)というベビーフードの開発をしているママ社員、大塚です。

離乳食や、食生活の「正解」を探し続ける中で思ったことを、ベビーフードの商品開発の一員として、かつ、一人のママ目線で、いろいろお話できたらなぁと思います。

どうぞよろしくお願いします。


お肉食べないマン、爆誕

6歳の長男が、絶対お肉食べないマンと化してから、もう3〜4年ほど経ちました。

とにかく、食べないのです。

毎食タンパク質を意識すると、どうしても肉か魚か、それに準ずるものを主菜に据えることになるわけですが、食卓を一瞥して肉の存在を確認すると、一口も食べずに、スーッとお皿を遠ざけやがるのです。
憎たらしい!肉だけに!

特に、脂身は断固拒否。
細かく刻んでごまかしても、その小さな肉のかけらを箸で持ち上げ、わざわざ脂を指で外す徹底ぶり。
(肉脂除去士みたいな仕事があったら、天職なのでは?)

こちとら食費も調理時間も愛情もかけて食事の準備をしているわけですから、それなりにダメージを食らうわけです。

食べなさい!!と叫びたくなる気持ちをグッとこらえ(きれないときの方が多いですが)、肉種を変え部位を変え調理法を変え、あの手この手でトライし続けていますが、今のところ絶対に食べてくれる鉄板メニューは片手で数える程度。
食事を用意する身としては、本当に毎食骨が折れます。


打倒食べないマン大作戦

母と息子の攻防戦は、さまざまな形で繰り広げられてきました。

ハンバーグに忍ばせるピーマンのごとく、肉の存在感を消したメニュー考案にも苦心したし、まだ幼児だった頃は「僕は豚のプー太郎!長男くんに食べてもらえなくて、悲しいよう!えーんえーん!」「お口に飛び込むぞ!あれ?お口が開いてない!開いた!そ〜ぉれ今だぁっ!」みたいな小芝居を、一口ずつ数十分必死にやり続けることも日常茶飯事でした。

具材当てクイズにしてエンタメを盛り込んでみたり、全部食べたらね!とデザートで釣ることも当然やりました。

肉の大切さをくどくど説いたこともあったし、戦隊モノにハマっているときには「肉好き=強くなる=肉を食べられる君はヒーロー=食べないやつは悪」方程式を刷り込んだこともあったし、食感や硬さを変えてみたり、ケチャップやマヨネーズなどごまかしたり、食べられたときにとにかく褒めることも心がけました。
倫理観に訴えることも実践済みです。

教育上の良し悪しには目を瞑り、できること、思いつくことはあらかたやったと思います。

でも、食べない。


心の余裕があるときは、まだ頑張れます。
でも、そうじゃないときは、睨んだり怒鳴り散らしたり、イライラを抑えきれなかったこともありました。

残したものも、アレンジしたり翌日自分のランチやお弁当で消化できればいいですが、食べきれず処分しなければならなくなったときの辛さったらありません。
ご飯を作るのが辛くて思わず泣いてしまったことも、数えきれないほどあります。


無理にでも食べさせることだけが愛情でも、正しい教育でも、食育でもないことは理解しているつもりだけど、いろんなことを考えながら準備した食事をゴミ箱に捨てるのは、本当に悲しい。


別に、お肉にこだわらずに、喜んで食べるものを出せばいいじゃないか、とも思います。
捨てる側の親だけじゃなく、残す子どもの方にだって、精神的負担はあるかもしれません。

タンパク質は肉だけではないですし、効率はさておき、他で栄養を補うことももちろんできるでしょう。
肉の拒絶も、不足栄養素からくる体の反応という可能性もあり、別の対策が必要な場合も考えられます。
タンパク質を分解する胃酸も、食べなければ減ってしまうし、肉嫌いならではの悪循環もあるように思います。

いろいろ原因はあるかもしれませんが、子どもにとってのタンパク質の大切さを理解しているからこそ、やはり親としては食べてほしいのが本音です。

積極的にとは言わずとも、3回に1回でもいいからさ・・・。
食べておくれ息子よ。


味覚の黄金期の頑張りは、報われるか?

ところで、長男は、ほとんど手作りの離乳食でした。
結果的に、いつの間にか鉄不足になり、貧血症状が出てしまったことを、前回のnoteでお話ししています。

一方、比較的早期から栄養武装を施した次男は、4歳になった今でも好き嫌いせず、肌もふっくらツヤツヤ。
保育園で感染症が流行っても図太く生き残る程度には、体も強いように思います。
離乳期にしっかり味覚や栄養に対する努力をした結果が、そういうところに出ているのかもしれません。

でも、次男は思いがけないところでつまずきました。

順調に育ち、お肉も大好きだったはずなのに、何でも兄の真似をしたがる年頃ということもあり、兄と同じように肉の脂を外してみたり、「お肉とか無理ぃー」と主菜のお皿に全く手をつけなくなったのです。

兄弟の存在が、食育の危険地帯になり得るとは・・・!
そんな危険地帯があるなんて、離乳食の教科書には載っていなかった!!
そういう大事なことは、先に言ってくれ!!!


人生には、イレギュラーというか、変数というか、避けようのないトラップのようなものが、想定外の場所で無邪気に転がっているわけです。

長男も次男も、(かつての自分がそうだったように)ファストフードやスナック菓子を主食にするような時期がくるかもしれません。
すでに、小学生になった長男の学童では毎日駄菓子が提供され、幼児期は特別な日だけだった市販のお菓子が、彼にとって日常になってしまいました。

もちろん、思いがけないトラップは、人生にポジティブに働くことも大いにあり得えます。
笑顔で、おいしいね!と楽しむのはとても大切なことだし、人生そのものがそうであるように、食の優先度も、時と場合によって変化するものだと、個人的には思います。

それでも、味覚形成の大切な離乳期、幼少期にさまざまな努力をしてきた者にとっては、正直心穏やかではない問題ですよね。

これから離乳食を始める方や、まさに最中だという方にとっても、今この瞬間と地続きの未来に、子どもの豊かな食生活や、素材を味わえる感度、ガッチリした栄養土台などが約束されていて欲しいという気持ちがあって当然だと思います。

大切な離乳期、幼少期に、素材にこだわったり、手作りを頑張ったり、栄養に気を遣ったりした努力は、ちゃんと実を結ぶのだろうか?

実を結ぶとしたら、それはいつなのか。
具体的に、我が子にどのような形で現れてくれるのか。

それが分かっていたら、一喜一憂したり、肉をめぐる攻防戦を繰り広げたりせず、穏やかな日々が送れるのに・・・そんな風にも思ってしまうのが、親のリアルなところです。

もちろん、2023年の現時点では、さまざまな食の投資に対してどのような回収が期待できるか、100%の未来予測を立ててくれるものはありません。
食に限らず、あらゆる分野で、やはり100%の精度というのは、なかなか難しい。

そもそも、「食」には何がどこまで含まれるのか。身体に取り込まれ、心身の栄養になるのは、咀嚼して消化した食べ物だけではありません。
私たちは、どういうモチベーションで、毎日の食卓と向き合えばいいのか?
あるいは、どうせ好き嫌いが出たりトラップが待ち受けたりするなら、最初から頑張るべきではないのか?

そうは思いません。

しなやかな軸を持つ大切さ

離乳食の代表的な悩みの一つとしてあげられるのが、「食べてくれない」問題です。

離乳期・幼児期・小児期で、事情や原因、対策は変わってくると思いますが、きっとどの年齢でも悩みの種だと思います。

我が家の場合は、離乳期や幼少期は特に問題なく、むしろよく食べた方でしたが、形を変えて、小児期で悩むことになったわけです。

米を全く食べません!とか、逆に米しか食べません・・・とか、家庭によってさまざまなケースがあるでしょう。
それこそアレルギーの問題で、献立作りの負担が想像を絶する家庭もあるかと思います。なかなか一筋縄ではいかない問題ですよね。

各家庭で、あらゆる変数を含んだ問題に立ち向かいながら、「我が家限定の解決方法」が、日々無限に編み出されているのだと想像します。

その方法だって、ものすごい勢いで変化・成長していく子どもが相手だから、昨日通じたやり方が今日にはもうまるで効果がない!ということが多く、悩ましい・・・。

仕事だってトライエラーの繰り返しですが、育児はPDCAサイクルが尋常じゃなく早いペース(もはや秒レベル)で繰り返されていく気がします。
プロジェクトの鬼感が過ぎる!!!

でも、その変化に富んだ努力そのものが、心底価値のあるものだと、振り返ってみると改めてそう感じます。

いや、努力すら投げ出したっていい。
結果的に、家族がまた前を向いて、フラットな気持ちで進めること。やっぱりそれ自体が最高な状態なのだと思います。


自分も子どもも、機械じゃないのですから、理想の教育や食育の形を100点満点で進めてきても、100点の答案を持ってこないのは当たり前。

もちろん、70点で進めてきたから、30点分減点で返ってくるというような単純な話でもありません。

そもそも、100点の明確な基準もないわけです。
ある程度までは推奨される形があっても、最終的には、各家庭や個体によってフィットする形に差があり、場合によって正解も変わるのが人間の食です。
プリプリ怒りながら、栄養バランスばっちりな食生活を送ったって、効果はイマイチだろうということは、想像に難くないですよね。

だからこそ、しなやかな軸を持ち、今信じられる心地よい方法を、なるべく取り続けられたらと思うのです。


人生、どの瞬間だって大切ですが、命が宿ってからの1000日は、さまざまな観点でちょっと異例の特別さですから、やはりしっかり向き合いたいところ。
the kindestも、なるべく正しい情報が必要なタイミングでお届けできるように試行錯誤していますが、一方で「我が家のフィットバージョン」という落としどころができていて欲しいなぁ、と思っています。


ガチガチだと、いつかポキっと折れてしまうから、より柔軟に待ち構えていられるように、基礎をしっかり立てておく。
味覚の黄金期、心身を育む最初の一歩の向き合い方は、その後の人生の軸のしなやかさに繋がると信じて、どんと構えていたい。


離乳期、幼児期に親ができることやその努力が、いつどういう形で、現れるかは分かりません。
でも、数年後、数十年後、長い人生の中で、きっとポジティブに子どもを支えてくれる。
自分でも思わぬところで、「よっ!」と顔を出してきて、「今だったんかーい!!」と拍子抜けするようなこともあるかもしれません。

そう思うと、なんだか楽しみです。
お肉食べなくても、まぁ何とかなるか・・・!と、少し気が楽になってきます。苦手を克服する楽しみもできたじゃないか、ラッキー!


視野を広く、広く。
食事、育児、楽しんでいきましょう。


(とはいえ、やっぱり、食べてほしい気持ちも成仏しきれない。ポジティブ変化、とりあえず今すぐ出てきてほしい。攻防戦はまだまだ続く・・・。)

【大塚 かぐみ】(おおつか かぐみ)
食関係のメガベンチャーを経て、2020年に株式会社MiLに入社。
商品開発部に所属し、the kindestブランドのベビーフード、キッズフード等の開発に携わる。
プライベートでは3兄弟の母。


この記事が参加している募集

企業のnote

with note pro

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?