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「食」にも押し寄せる「コト消費」とは何か?

こんにちは。株式会社MiL 代表の杉岡侑也です。

MiLは、2018年に創業し「the kindest (カインデスト)」という子育て家族に向けたライフスタイルブランドを展開しています。
まだまだ小さなブランドですが、いつの日か社会に無くてはならない会社になり、多くの社員、ステークホルダーの皆様に応援いただくようになったときのためにも、MiLの仲間達とともに、私たちのビジネスの裏側にある”想い”を少しずつ書き留めています。

杉岡 侑也(すぎおか ゆうや)
株式会社MiLの代表取締役社長。1991年、大阪府生まれ。
二度の起業、EXITを経験した後、"自分らしい人生を食から実現する"を使命とし、フードテック×ウェルネスのスタートアップであるMiLを創立。世界を変えるイノベーターとして、Forbes 30 UNDER 30 Asia 2020、JAPAN両紙に選ばれ、日々奮闘中。


コト消費とブランド価値


前回は小売マーケティングのトレンドのひとつとして、一般的になりつつある「パーソナライズ」を食品業界にあてはめてお話ししました。

そこで、顧客のパーソナルなデータを保有、活用して最適なUXを設計することから始めることが重要であると提起し、それが結果「あなたにとって最適な」ブランドとなり、パーソナライズの実現に近づくのではないかという話でした。

今回は巷でよく聞く、消費が「コト化」するとは何か?
その現象について、食視点でお話ししたいと思います。


「コト消費」は一般的に、モノや製品を所有することよりも、経験や体験を重視して消費することを言います。
「コト消費」はもともと従来の「モノ消費」の対比として使われ始めました。日本経済の新たな成長ドライバーだ、とさえ言われたこともあります。 

この「コト消費」は、前回お話した「ブランド価値」と切り離せない関係にあると私は考えます。

高級ブランドを「モノ消費」の象徴のように言う人もいますが、私はその意見には違和感があります。若者が「モノ消費」をせず高級ブランドから離れている、というのは明らかに間違いです。
実際、LVMHグループ※は過去最高売上高を更新し続けています。

※フランス・パリを本拠地とする世界最大のファッション業界大手企業体。グループ傘下には、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオールなどのラグジュアリーブランドが置かれる。

感度の高い若者たちは、ブランドの価値が「モノ」からのみ生み出されるものでは無いと感覚的に理解し、ブランドが持つ「モノ」と「コト」の両方に価値を見出して消費をしているのではないかと思います。

例えばルイヴィトンは、もともとオートクチュールから始まり、職人の手作りによる高品質を体現したメーカーでした。
しかし今、ルイヴィトンの鞄を、その高品質を理由に選んでいる人がどれだけいるでしょうか?
「ルイヴィトン」だから、同じ品質の鞄の10倍の金額を払ってでも買っている、という人の方が多いのではないでしょうか。

SNSが変えた消費の意味

ひと昔前であれば、それを持っていること(を見てもらうこと)で、他人からの評価や社会的ステイタスが得られるだろうという自己満足が、消費の動機だったかもしれません。

しかし、現在の消費者はそんなに単純ではありません。SNSの登場が、私たちが消費に求めるものを変えたと言っても過言ではないと思います。

今は「ルイヴィトン」を持った「私」を不特定の多くの人に見てもらう事が可能になりました。誰でも価値のあるものを瞬間的にカメラで切り取り、そこに自分のコメントやエフェクトを施し、表現者として発信する事ができます。

そこで期待しているものは人からのリアクションです。
経験や情緒的なつながりから得られる満足度が、SNSのおかげで増幅しました。より「コト」の価値が明確になった時代に私たちは生きています。

「コト消費」は、個人のアイデンティティやライフスタイルの表現とも密接に関係しています。
そしてブランドは、自己表現や共感を引き起こす特定の価値観やイメージを持っています。
消費者は、そのブランドのアイデンティティや価値観を自己のそれらに重ね、さらに似た価値観を持つ人と共感し合い、つながりを求めます。

ある種「ルイヴィトン」のような明確なポジショニングが出来ているブランドは今まで以上に人に支持されていると言えるでしょう。
なぜならば、消費者は価値観の共有という、そこで得られる顧客経験の予測ができるからです。


ここで前回の話を思い出したいと思います。

顧客体験をあらかじめデザインする技術をUXデザインと呼びました。食品産業にはそこが欠けているとも指摘しました。

今回の話で伝えたいことは、ブランドを通した情緒的価値、これを食品産業でももっと大切にしてはどうかということです。
特に、鞄や時計と異なり、食品は消費すれば消えて無くなります。「おいしい」という感動を残すこと、ただそのために作り手は頑張っています。

その「おいしさ」の感動も切り取り、消費者が自由にビジュアルや文章で表現ができるようになった今、食も「コト」化に追いついて行く必要があると思います。

どう見つけたか。
どう選んだか。
どう悩んだか。
どう食べたか。
どう感動したか。
どう紹介したか。

これら全てが「コト」として明確に消費者を満たす時代になりました。
食べものは所有できないものです。そのため体験から得られる共感、情緒的なつながりが大切だということを忘れてはいけません。


私はthe kindestを通し、安心安全という無形の価値をお届けしてきた自負があります。
最近はthe kindestの世界観が好き、というような嬉しいお言葉をいただく機会も増えました。
最高の「体験」を提供するブランドを作ることに、日々チャレンジしています。

引き続き、応援お願いいたします。

杉岡



photo :著作者 Freepik

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