#3 結婚しようよ(富士山御殿場口登山道新五合目: 人間交差点2021)
富士山登山道御殿場口新五合目鳥居前は、富士山頂を目指して登る人・下山してくる人・散策する人たちがでまったく無秩序だ。浜辺に打ち返す波のように一定のリズムではない。まして、登山者の最も少ない御殿場登山道だ。天気が良い日でも、人の姿がまったく見えない時がある。
そんな時、Tシャツ・ジーンズ・スニーカーのイケメンと半袖シャツ・チノパン・スニーカのぽっちゃり顔の可愛いお嬢さんのカップルが手をつないでやってきた。はた目にもお似合いのカップルに見える。鳥居の前でもう少し登ろうか、帰ろうかと迷っている様子。この二人に、中畑さんが声をかけた。「デートですか?」はにかみながら女性が「はい」と答えた。すかさず「この先少し登れば富士山の稜線と登山道、振り返れば箱根大涌谷の噴煙、江の島まで一望ですよ」と散策を薦めた。「ありがとうございます」と答え、何やら話し合った後、「少し上まで行ってきます」と言って、二人は鳥居をくぐっていった。
1時間余り過ぎた頃、鳥居前に帰ってきた二人に、「鳥居をバックにツウショットを撮りましょうか」と中畑さん。どうもこのカップルがお気に召したようだ。「はい お願いします」とお嬢さんがスマホを差し出した。登山者・下山者がいない場合、散策する人への声かけも御殿場登山道を好きになっていただく重要な仕事だ。撮影後、お二人の年齢は?と中畑さん。イケメンは25歳、お嬢さんは23歳とわかった。すかさず「結婚はいつ?」と。イケメン男性は、まんざらでもない顔をしながら、はっきりしない。お嬢さんはうれしそうな顔をして彼の顔を見てる。中畑さんの攻撃は続く。「こんな素敵なお嬢さん、早くプロポーズしないと取られるよ」と。私は中畑さんの横で、膝まづき指輪を差出しプロポーズする格好をする。イケメンはニコニコしながらも照れているのかはっきりしない。お嬢さんは益々うれしそうな顔をする。その顔を見て、中畑さんの「結婚しようよ」攻撃は止めを刺そうとした時、3名グループの登山者が現れて、攻撃はお開きとなった。二人は「ありがとうございました」と丁寧にお礼を述べ、手をつないで帰っていった。
3名の登山者の、自己健康チェックと体温測定、リストバンドを渡しながら足元の靴、装備を確認する。この間に「保全協力金」の寄付をいただき、領収書とカンバッチを渡して「気を付けて行ってらっしゃい」と送りだす。3名が鳥居をくぐった後、「あの二人はどうなるだろう?」「帰りの車でプロポーズしているよ」などと想像していると、また新たな登山者。「こんにちは、これからですか? 健康チェックと富士山保全にご協力をお願いします」と本業に戻る。
おふたりさん お幸せに!
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