【読書メモ】神経質問答―自覚と悟りへの道〈2〉森田正馬


数年前、自分がまだ僧侶だった頃に読んでいた本。
最近無性に読みたくなって買い直した。
今の自分にとって決して安い金額ではなかったが買って良かった。
ちょうど読む時機が熟していたようで、以前よりも楽しく、時に感動しながら、二時間余りで読み終えた。

不安や恐怖に由来する心身の不調(『神経質』、現代で言う不安障害やパニック障害など)に対し、それを精神の異常と見なすのではなく、
「不安は人間の自然な姿であり、人間は不安を抱えながらでも生きていける」
という事実を悟らせる事で治すという、異色の治療法を提唱した精神科医、森田正馬(1874−1938)。
これは森田と神経質に悩む(悩んできた)人々による座談会の様子を記録した書である。


【読んで学んだこと】
◎気分は気分、事実は事実。
◎気分が動揺しても、事実は動揺しない。
◎「気分本位」ではなく「事実本位」で評価すると、明るくなれる。

聖書には「恐れるな」「喜びなさい」という言葉が度々出てくる。
それに対して「自分はそんなに喜べない、ちょっとした事で不安になる、自分は不信仰だ」と悩むクリスチャンは多いのではないか。

しかし、私たちが感じるか否か、喜べるか否かという「気分」に関係なく、私たちは神の愛によって生かされている、これは厳然たる「事実」だ。
だから信仰というのも、「嬉しい/恐ろしい」という自分の感情に目を向けそれを制御することではなく、「何の心配もない、手放しで喜べる人生を神様は用意しておられる」という事実を仰ぐことである筈だ。

「気分」と「事実」を冷静に見分け、揺れ動く気分を抱えながらそれに拘らず、事実の世界を生きることを勧める森田の思想。
それは理想と現実のギャップに煩悶するクリスチャンに、大きな示唆を与えるのではないだろうか。

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