受け取り拒否

むかしむかし、ある会社の総務課に、20歳の私がおりました。
私は、その時1番年下だったので、受付と、人事の仕事を同時にしておりましたとさ。
色んな会社のおじさん達が沢山来て、所長さんとか役職者のおじさんに取り次いで、お茶を入れたりするのもお仕事でしたとさ。
4つの運送会社が届けてくれるので、100人ぐらい居る事務所の人達に来る荷物の受領印をポンポン押して、重たい荷物は受け取り主に電話して取りに来てもらいましたとさ。
大小の荷物の宛名を確認して、(○○課御中とか○○様とか)ポンポンとハンコを押していきましたとさ。

そんなある日に。
「総務課長様」と書いてある荷物を、いつものように
受領印を押して、総務課長のところへ届けると、
「みこちゃんだーめだよー、これは受け取っちゃダメなやつね。」
と課長が言って、
「コレ、お中元だ。素麺って書いてあるでしょ。
ワイロになっちゃうの。宅急便のお兄ちゃん追いかけて、送り主に返すように言っといて」
と付け加えられた。
新人の私は、「受け取らない」という選択肢があることを知らなかったので、
「受け取らないなんてこと、出来るんですか??」
というと、
出来るよできるよ!お釈迦さまだって言ってるんだよ。あとで教えてあげるから、宅急便のお兄ちゃんに返してきて!
と課長は言った。東北出身のおっとりしたこの課長は何だか可愛らしくて優しくて私は好きだった。

急いで宅急便のお兄さんに事情を話すと、
荷物を「受け取らない」という事もたまにあるらしい。すんなりと送り主のところへ返却してくれる手続きをしてくれた。

課長に返却手続きが完了した事を報告すると、
「そうそう、お釈迦さまの話ね」と言って教えてくれた。
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お釈迦さまが弟子たちと旅をして歩いていると、
「怪しいよそ者がいる」とか
「きっとおかしなやつなんだ」とか罵詈雑言を
お釈迦さまに対して言っている男が現れた。
お釈迦さまは何も言い返せさず黙っていたが、
もし他人に贈り物をしようとして、
その贈り物を受け取らなかったとしたら、
その贈り物は一体誰のものだろうか」

と言ったそうだ。
って話、知らない??
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課長はそういうと、
「悪口じゃないけど、今日の場合は素麺だな。
品名を見て、食品だった場合は要注意って思ってね」と教えてくれた。

ところで昨日、娘の友達が、娘が放送委員の仕事で教室に居ない間に、何かがあったらしく、先生と他の生徒と一緒に準備室から出てきて泣いていたそうだ。
「どうしたの??大丈夫??」って聞いても、
「ごめんね、気にしないでね」と言って、教えてくれなかったそうだ。
他の生徒というのは、気が強くて、常に
「だりー」「うぜー」「えっぐ」と文句を言っている女子2人だそうだから、何となく予想できると言っていた。

そこでこの総務課長がしてくれた話を娘にすると、
「悪口を言われても、受け取らなければその人に返っていくってことね!」とすぐに理解した。
自分が思考して、発した言葉を余すことなく受け取っているのは誰よりも自分自身だから、愚痴泣き言文句は言わず、楽しい事…推しの事でも考えてた方がずっとずっと楽しい現実が作れるってことね☆
というと、その友達が推しにしているキャラクターの絵をプリントアウトして、下敷きを作っていた。

私が今誰かに、
「バカ」とか「チビ」とか「デブ」とか「ハゲ」とか文句を言われても別に何とも思わない。それは自分で自分を「バカ」とむ「チビ」とも「デブ」とも「ハゲ」とも思っていないからだ。
何かを言われて傷つけられたように思うのは、
自分の中に劣等感や傷つけられる「タネ」があるからだ。

娘の友達は自己肯定感が低いそうで、「塾に通っているのにいい点がとれないから自分は頭が悪い」とか、
以前娘がテストでいい点とれたご褒美にその子達がカラオケに行くというので部屋代とおやつを出してあげると、「私達の分まですみません」と言って謝ったので、「謝らないでいいんだよー!娘のご褒美なんだし、娘も楽しいからさ!」というようなことがあった。

自分の中に劣等感や罪悪感の「タネ」を見つけたら、手放した方がいいよね。
そうしないと、いつまでもいつまでも自分が被害者になってしまう。
娘の友達も。
最近アニメの内容にまで口出ししていた人も。
旦那を亡くした私も。
多分あなたも。

悪口は
受け取らなければ
誰のもの?

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